2002/09/12
特別付録:長田幹彦 作  祇園しぐれ
吉井勇歌集コレクション−2はこちら


吉井先生の有名な句と磯田多佳女(谷崎潤一郎著)に寄稿せる同直筆
かにかくに 祇園は恋し 寝るときも 枕の下を 水の流るる

吉井先生の晩年の家(比叡山下)昭和35年10月迄住んでたという
昨年末から今年6月にかけて集めた吉井勇先生の本を紹介します。他にも結構古書店には種類が出てますが祇園と関連のある本はあまりありません。私は、ストレスを感じたときなどこれらの本を読むと気が休まります。出来うるならば、静かに本を読み、絵描き三昧の日々を送れれば幸せなのですがいつ来るのでしょうか・・・私は、にぎやかな所よりも京都の静かな東屋で晴耕雨読ごとき慎ましく暮らせることを夢見てます・・・作者識
 
歌人 吉井勇先生
<晩年の吉井先生、女優の山田五十鈴さんから贈られた愛犬ポランとともに

明治19年(1886)東京芝区高輪南町生まれ。早稲田大学中退。北原白秋、森鴎外、石川啄木らと親交があった。
明治43年処女歌集”酒ほがひ”で有名になる。若き日の夢・第1編にて有名なかにかくに・・・の名文が出てくる。全国各地を旅して歌集を作る。祇園歌集は大正4年に創作。
文芸芸妓(お茶屋大友女将)として名高い磯田多佳女と親交があり、かにかくに祇園は恋しはこの大友で創作したというが、吉井氏本人は京都歳時記の中で別にどこで作ったというわけではないと書いている。戦後、多佳女(戦時中病没)の茶屋跡にかにかくに碑を建てたのはその親交を懐かしんだためか・・・なお、多佳女の好きだったあじさいが碑のそばにひっそりと植えられてる。
このように吉井氏は京都の祇園を好み、昭和13年10月 孝子夫人同伴にて京都へ住む。その間、20年以上を京都を愛して都をどりに人力を尽くす。昭和35年11月29日風寒き日、婦人に看取られつつ永眠。享年74才、前年企画した本、京都歳時記は未完成になったが臼井喜之介氏によってまとめられ出版す。なお磯田多佳女の養子で多佳女を看取った磯田又一郎氏(故人)は著明な日本画家で舞妓絵は絶品である


歌集お品書き

★2001年末〜
2002年4月に収集

*定本 吉井勇歌集
*短歌歳時記
*我が歌日記
*恋愛名歌物語
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★2002年5月〜6月に収集

*東京・京都・大阪
*京洛遊草
*不夜庵物語
*市井夜講
*京都歳時記


★第1部★

定本 吉井勇歌集
昭和22年8月25日発行・養徳社・130円
紙質に、和紙を使ったカバー付きの横開きの本である。祇園と関係があるのは、この吉井勇歌集と短歌歳時記の2冊である。かにかくに、祇園は恋し、寝るときの、枕の下の、水の流るる。は第3巻祇園歌集に出てくる名文。しかし、最初は、第1巻酒ほがひの冒頭にある、かにかくに、いとにこやかに、深情けびと、浅情けびとの方が先に出てくる。かにかくに碑は、祇園の文が刻んである。私はこのなかの祇園歌集、祇園双紙が好き。昔の本は紙質が柔らかくやさしい感じがする。叙情を味わうには最適である。10巻までの歌集をひとまとめにしてある本
短歌歳時記
昭和17年9月20日初版本・2000部発行
臼井書房(京都京都大学北門前)定価2円60銭
カバー付きの文学書らしく趣のある本です。12月に分けてその月ごとに各テーマが数編あり各編ごとに歌詞が出てくる。4月の部の第4編都をどりの項は、祇園ファンにはたまらない一節で21の詩歌が載せられている。
都踊り子の項の序文を書く・・・毎年4月1日から30日まで30日間、祇園の歌舞練場で催されるのに都をどりがある。私が始めて京を訪れたのは今からもう三十数年前のちょうど都踊りがあった頃で、繋ぎ団子の赤提灯や燃えさかる篝火に心をときめかせながら花見小路のあたりを歩いた。今度居を京に移してから都踊りを見たが、すでに老残の自分には、かえって人生落漠の感が深かった。粉黛消し易く、紅残り易しという句があるが、こういう煙火の巷の行事の上にも、これからいろいろの推移があるであろう

★都をどりの歌詞集★
春の夜の悩ましささへおぼえたる 都踊りの人いきれかな
思う子は小鼓を打ついいやあの 懸けごえもよし鶯のごと
春寒き踊り見人のそのなかに 名妓のはてを見るが寂しさ

われはただ都踊りはええといふ 声のなかなる声をもとむる
かなしみのあればかなしく聴こゆるよ 
               祇園囃子の鉦のひびきも
にぎやかに都踊りの幕下りし のちの寂しさ誰にかたらむ
ただひとり都踊りの楽屋より  抜け出て来し君をこそ思へ


我が歌日記
昭和17年2月10日発行・甲鳥書林・定価2円
本カバー付きの和紙で装丁してある味わいのある歌集本です。この本は、中外日報という新聞に掲載した1年分の歌詞をまとめて本にしたもの。いろいろなテーマで書かれてるが、戦時色迫る世の中とみえ軍国的なものもある。京都や祇園に関するものはほとんど無い。


恋愛名歌物語
昭和26年12月30日発行・創元社・200円
この本は、万葉集の相聞歌から新古今和歌集・現代に至るまでの恋愛歌を解説した本です。女性向けのまだ女性がロマンを感じられた頃の文学的な俗本。たぶん今様の女性では叙情的詩文など縁がないから読んでもさっぱり理解できないと思う(^^;)いくら時代の流れとはいえ寂しい気もする・・・



★第2部★
京都・大阪・東京
サブタイトル:良き日古き日
昭和29年11月初版・中央公論社・時価130円
この本は、京都・大阪・東京に住んでたときの逸話が書いてある。読んでいてその当時の出来事や人間関係が書かれていてけっこう楽しめる。私はこの本で、文芸芸妓、磯田多佳女と井上流高弟、松本佐多女を知った。磯田多佳女に関する本は、中公文庫で早速入手(現在発売中)、松本佐多女の佐多女芸談は中古ネットで入手し私のコレクションの加えてある。私事で恐縮だが私はこの多佳女の本を読んでから伽羅の香を焚いて時々楽しんでいる・・・
★磯田多佳 歌詩集★
うすものや 河原づたひの 草しめり
梅咲くや 忘れられては 早二年越し
だまさるる 身は面白し 宵の春
散る花の それだにあるを 中々に とどめかねたる 人いかにせむ
とくと咲け と降る春雨は そのあした 花につれなき ものとなるらむ
吉井氏の多佳女への追悼歌
年ごとに 君がこのめる紫陽花の 花は咲けども 多佳女世になし
京洛遊草
京都草書シリーズ巻9
昭和22年6月初版・高桐書院(京都)・時価40円
京都関係の詩歌集である。外の歌集と多少重複しているが読む価値はある。後記の吉井氏自身による文を紹介する。
初めて京洛の地を訪ねてより、星霜すでに40年、曾遊の時に得たる詠草を微吟すれば、今猶懐舊の情に堪えざるものあり。風流に半生を銷昼して、時に竹枝体の舊詠を思うことありといえども、鴨東の狭斜に置酒したることも、すでに昔時の夢となり了りて、老残唯徒らに落莫の情を覚ゆるのみ。舊吟に些かの新詠を加え、ここに一編の雑詩集を作りて、一人自らの老癡を哀れむ
<城南形影居にて  吉井 勇>
不夜庵物語
昭和22年11月初版・星林社(京都)・時価75円
江戸時代をテーマにした通俗小説である。場所は、京都の島原、道知坊という男を主人公にとりまく世相の出来事を扱ったもので吉井勇が、歌詞のみでなく小説も書いていたことが分かる本、おこられてしまうが格別面白い?という本でもない。
市井夜話
昭和22年3月初版・新月書房(熱海)・時価40円
この本も通俗小説集6編をまとめたもの。後書きが面白いので書いておく。吉井氏自身のもの。
予が短編小説6編を集め、題して「市井夜話」という。ことごとく墨水といえる落魄せる蕩児の説話にして・・・・この草稿を上梓する所似は、兎に角いやな世の中に嘘偽りのないのない人間が生きていたと言うことを、お知らせしたいばかりの、老後のお節介に外ならざるなり。近頃の読者のお気には向くまじ。読み給うも可、読み給はざるも可。作者会えて関せず、云々

京都歳時記
昭和36年8月初版・修道社(東京)・時価1300円
この本は、歳時記を吉井勇が担当し、写真を臼井喜之介氏が請け負ったが、吉井氏が完成を待たず逝去したため。あとを受け継いで臼井氏が完成出版した。昭和36年前後の京都の風景写真やスナップが所々に1頁大で掲載されている。B5版の大きさなので吉井氏著書中一番見応えのある本であろう。モノクロ写真であるが、けっこう舞妓や芸妓の写真が載ってるのは嬉しい。各章の文頭に吉井氏自身の歌詞が出てるがこれは今までの歌集からの抜粋で特に目新しくはないが、その解説が載ってるので面白い。


長田幹彦 作
祇園しぐれ

昭和21年9月初版・江戸書院・定価13円
12.7X18.5cm、約185頁
内容 祇園しぐれ、炎ゆる花笠の2編
祇園しぐれは、花街の色恋ごとの小説です。簡単に言えば当時流行った自殺もの?でかなわぬ恋を、自ら命を絶って我が思いを貫き通すという話。
炎ゆる花笠は、やや短編でやはり花街が小説の舞台、今となっては、想像しがたいが当時は、どこにも花街があって本を読んでもイメージしやすい状況だった。まあこっちは、通俗物という感じで軽く読む程度の内容かも・・・両方とも、芸妓や置屋(お茶屋)?は出てくるが舞妓は出てこない。でも、本の表紙絵は紛れもなく舞妓の絵、祇園小唄にあやかった作品か・・・・


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