現代社会と人間   「 貧 困 と 開 発 」   小貫  仁


第 1 3 回  ま  と  め
〜 現代社会の現実とエンパワーメント



1. 「地球データマップ ひろがる格差」(NHK) を観る

 先進国で広がる貧富の格差
 事例1 : アメリカ→人口の1%が国内の富の半分以上を所有する
             一方で、6人に1人が貧困層であり、ホームレスも数十万人
             都市はドーナツ現象 (中心部に貧困層、郊外に金持ちが住む)
 事例2 : 日  本→1980年代以降、ジニ係数が上がり、不平等化
             アメリカ型がすすみ、6.5人に1人が貧困層
             OECD加盟30カ国中で、貧困率第5位

 日本で格差が拡大する理由・・
  90年代以降の経済のグローバル競争の中で、企業がコスト削減に努めた結果
  人件コストを減らす+安い資源・労働力を求めて工場を海外移転して国内格差
  累進課税の軽減化も格差拡大に影響

 日本社会の現実・・
  倒産やリストラによる失業者の増加、正社員の減少と派遣社員・アルバイトの増加
  教育格差から所得格差へ
  社会不安の増加(犯罪、アルコール中毒、自殺など)
  典型例として、約25,000人の野宿者(ホームレス)
  → 中高年で職を失い、働きたくても定職に就けない人たち

 北欧諸国の取り組み
  競争のゆがみによって、個人の努力にも関わらず生じる 「弱者」 への対応
  福祉や税制などによる格差縮小の政策
  → 失業対策、累進課税 など


2. ふりかえり

 第1講で提出した「テーマ」からふりかえる
 (1)今日の世界の貧困・格差の現実を知る
   →第1講 オリエンテーション 〜ジニ係数でみる格差の現実
 (2)貧困・格差に対応する理論を吟味する
   →第2講 アジアの現状と開発経済学 〜経済成長とトリックルダウン理論
     第6講 方法論 〜参加型開発とファシリテーター
    第11講 経済思想の諸理論T 〜構造学派と従属論
    第12講 経済思想の諸理論U 〜世界システム論とレギュラシオン理論
 (3)「近代化」を問い直し、その転換点として時代を捉え直す
   →第3講 開発経済学のパラダイム転換 〜アマルティア・センと 「人間開発」
 (4)「貧困」「格差」について、原点から問い直す
   →第4講 貧困への処方箋を巡って 〜開発のあり方を捉え直す
     第5講 「剥奪」とエンパワーメント 〜フリードマンの 「力の剥奪」 モデル
 (5)より深く世界のしくみを知って、自分の生き方を問う
   →第7講 構造論T 〜歴史的背景と国際貿易
     第8講 具体論T 〜食から考える世界
     第9講 構造論U 〜グローバル経済と国際金融
    第10講 具体論U 〜お金から考える世界
    第13講 まとめ   〜現代社会の現実とエンパワーメント


3.エンパワーメントとは

 学びで得るものは何らかのエンパワーメント
 エンパワーメントとは・・
 (1)主体的な学びによって得る 「気づき」
 (2)問題意識をもって課題に取り組む力の獲得
 (3)課題解決に参加する実行力
     ↓
 最後の3つの問い
  あなたは現在、 「志」 をもっているか?
  あなたはそれを、どのような「気づき」から得たのか?
  あなたは今後、それに向けて、どのようにエンパワーするのか?


4. (補足) 『ポスト大企業の世界』の視点

 現代の資本主義
  1980年代は、資本主義が生き残り、共産主義が崩壊
  1990年代以降は、巨大グローバル企業が市場を統制
               ↓
             行きすぎた資本主義が健全な市場経済を歪めている
             その結果、社会分裂や環境破壊へ

 危機打開の方向性
  大企業やグローバル金融市場が収奪した権力を取り戻す市民社会の力
   ↓
  制度の改革や優先課題の見直し
  ローカルな資源の重視と地球との調和

 新しい生命科学の世界観とは・・
  生命なき不毛の惑星が、どうやって生命溢れる珠玉の星に変わったか
  それは、唯物の世界の適者生存か?
  それとも、生命分子の意図的な協力の結果か?
   ↓
  ホロン=原子は、それ自体が全体であり、かつまた、より大きな全体の一部
   ↓
  健全で幸福な地域社会や地球社会を求めて



<文献紹介>
・ 『ポスト大企業の世界』 (デビット・コーテン、シュプリンガー・フェアラーク東京)





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