現代社会と人間   「 貧 困 と 開 発 」   小貫  仁


第 8 回  具 体 論 T
〜 食 か ら 考 え る 世 界



1. 富の偏在と飢餓

 世界の飢餓人口 8億人

 「大人になることが夢」 という子どもも存在する

 MDGs のターゲット1 : 2015年までに、1日1ドル未満で生活する人口を半減する
        ターゲット2 : 2015年までに、飢餓人口を半減する

 → (1) 富の偏在により、食料を需要するお金がない

 さらに、途上国では、国内格差によって、農業生産はモノカルチャー換金作物を生産

 → (2) 自給作物よりも換金作物を栽培する途上国

 けれども、耕地面積の限界(減少)が厳しくなっている現在の世界でも、
 穀物生産は世界の人口を十分賄える (「人間換算人口」=190億人)

 生産高(約19億トン)の4割は家畜資料に使われる
 家畜を1キロ太らすために、牛8キロ、豚4キロ、鶏2キロが必要

 ステーキは、肉を食べない人の5人分の食料を奪う計算

 → (3) 穀物が全て人間用ではない

 「太りすぎとガンなどの文明病に悩み、食べ残しを廃棄する北、
  農業国でありながら、食ベ物を輸入しており、食料不足に苦しむ南」の構図

 健康に留意した食生活の改善が、世界に貢献する可能性・・・
 それを妨げるものは何か?


2. グローバリゼーションと身の回りの食料

 日本の農業解体
 ○工業化優先 : 日本経済の光(経済成長=工業化)と影(農業と環境の軽視)
 ○食料自給への低い意識 : 低い食料自給率
 ○アメリカとの折り合い : 工業製品輸出と農作物輸入

 →コメは自給、それ以外は輸入依存の体質

 農産物輸入の自由化
 アグリビジネス(海外に生産拠点をもつ日本の食品メーカー、商社含む)
 現地の農民は、より安い作物生産のための低コスト労働者

 スーパーマーケットに並ぶ食品
 a. 国外から輸入食品(どのように生産されているだろうか?)
 b. 国内農家の農産物(大規模化や真っ直ぐなきゅうり等の付加価値要請)
    ↓
   国内農家への廃業圧力

 日本農業はこのままで良いか? 食は安全か?
    ↓
 一方で、農業の工業化やグローバリゼーションの推進
 もう一方で、環境保全や食の安全志向、「地産地消」〜スローフード運動


3.ラダックを通して考える

 食や農を通しての考察は、「近代化」について問い直すことでもある

 ラダックとは、インド北方の辺境地域
 この地に近代化の波・・・顕在化する光と影

 「開発」は必要か? どうあるべきか?
 
 キーワード
 自然とのつながり、 人間の関係性、健康・安全、食と農、物質的快楽

 地域が「近代化」することで失われるものは? 人間にとって大切なものは?


4. ビデオ : 『地域から始まる未来〜グローバル経済を超えて』 を観る

 グローバル経済の影の部分を見据える
  先進国の環境問題、コミュニティの崩壊 など

 ラダックの試み=「カウンター・ディベロップメント」
  代替エネルギー(バイオマスなど)
  小規模農家を守り育てる
  コミュニティの関係性の拡大(女性連合など)
  地域文化を誇る教育の普及
  地域の自治権拡大

 持続可能で豊かな地域社会の制度を再構築する試み紹介
  世界で活動するISEC
  →「物質より健康・幸せ」に関わる諸活動
  イギリス・バース市の取り組み
  →学習会、地産地消の農業 など



<文献紹介>
・ 『ラダック 懐かしい未来』(ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ、山と渓谷社)
・ 『農と食の政治経済学』(大野和興、緑風出版)





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