現代社会と人間   「 貧 困 と 開 発 」   小貫  仁


第5回 「 剥 奪 」 と エ ン パ ワ ー メ ン ト
〜 フリードマンの 「力の剥奪」 モデル



1. J.フリードマンの 「力の剥奪」 モデル

 ジョン・フリードマンは、長くラテンアメリカやアジア各国で開発教育に従事
 国連の専門家でもあった時代には、制度改革の重要性を提唱

 「貧困」 とは、相対的な力の剥奪
 社会的な力の基盤をなす資源にアクセスできないことが根本原因

 「力」とは、ものごとを思い通りにできる能力
 社会的な力の基盤に対してアクセス可能になることがエンパワーメント
   ↓
 オールタナティブな開発
 主流である経済開発と影響しあうもうひとつの開発
 総合的な力の獲得のプロセス
 主要な要素は、自律的意思決定、自立、参画型民主主義、試行錯誤の学習

 社会的な力は、8つの基盤をもつ
 基本的基盤 : 防御可能な生活空間、生存に費やす時間以外の余剰時間
          社会組織、社会ネットワーク
 発展的基盤 : 労働と生計を立てるための手段、資金
          知識と技能、適正な情報


 < 力の剥奪モデル図  − 略 − >


 図において、最も重要なのは 横軸 (生活空間と余暇時間)
 言い換えれば、いのちと暮らし


2. 社会的関係性とエンパワーメント

 縦軸は、社会的関係性 (社会組織と社会ネットワーク)
 社会組織とは、世帯と社会をつなぐもの
 教会、組合、クラブ、討論会など
 社会ネットワークとは、行動に必要な対等なつながり
 各種の水平的ネットワーク

 エンパワーメントの手段は、参加型民主政治の実現
 求めるのは、参画、適正な経済、社会的統合、持続可能性など
 基本的条件は、民主主義を支える組織・制度


3. 日本社会の 「力の剥奪」 を考える

 <横軸>
 生活空間が充足し、余暇時間は充分か?
 日本の住環境・・・
 日常生活のゆとり・・・
 労働における「過労死」・・・
 <縦軸>
 家庭生活や地域との関わりは豊かか?
 日本社会のヨコのつながり・・・
 労働組合などの組織率・・・
 <その他>
 格差拡大、不安定な雇用、ホームレス
 孤老の死、子どもの選別、ジェンダー
 外国人労働者、マイノリティ問題、環境破壊 etc.
   ↓
 参加型民主政治は?
 選挙における投票率・・・
 制度の形骸化・・・
   ↓
 豊かな社会の貧しさ?
 日本におけるエンパワーとは?


4. 南北のエンパワーメントと協力関係の見通し

       [ 南 ]                   [ 北 ]

   人間らしさの剥奪           人間らしさの剥奪
        ↓                    ↓
   経済的欠乏と力の剥奪        豊かさの中の貧しさと力の剥奪
        ↓                    ↓
   力の獲得とエンパワーメント     力の獲得とエンパワーメント
        ↓                    ↓
   参加型開発の主体          参加型開発の主体
        ↓                    ↓
   <北との国際協力>         <南との国際協力>



<文献紹介>
・ 『市民・政府・NGO』(ジョン・フリードマン、新評論)





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