現代社会と人間   「 貧 困 と 開 発 」   小貫  仁


第2回 ア ジ ア の 現 状 と 開 発 経 済 学
〜 経済成長とトリックルダウンの理論



1. さまざまな指標で見るアジア

 アジアは経済的にも極めて多様である
 アジア圏に大きな格差が存在している

 <例示>

 G N P      : 日 本 約4兆ドル      モ ン ゴ ル : 約1000ドル

 一人当たり所得 : 日 本 約3万5000ドル  ネ パ ー ル : 約230ドル

 乳児死亡率    : 日 本 3/1000人     カ ン ボ ジ ア  : 96/1000人

 寿 命       : 日 本 女性 84歳      ラ オ ス    : 女性 56歳
                   男性 78歳                 男性 52歳

 成人識字率    : 日 本 女性 100%    バングラデシュ : 女性 28% 
                   男性 100%                男性 50%

 初等学校就学率 : 日 本 100%        ブ ー タ ン  : 23%


2. 開発経済学の考え方

 開発経済学のテーマ
 いかにして、経済的貧困を克服するか
 いかにして、経済発展しうるか

 ○「マルサスの罠=貧困のメカニズム」
  人口増殖と食料供給のせめぎあいで、
  1社会の人口の生活水準は生存維持的水準で低迷せざるを得ない
  →経済格差は、人口を養いきれない食料の不足から生じる

 ○「貧困」 の克服
  貧困から脱するのは、農業生産の増大等、人間の努力による技術進歩による
  →経済成長によるパイの拡大こそが処方箋である

 ○「トリックルダウン Trickle Down 理論」
  格差はやむを得ないが、貧困克服の普及は可能である
  →格差の是正は、大きくなったパイの分け前が大きくなることで可能となる


3. 人口転換と緑の革命

 人口転換の3段階
 A 原始的社会状況  : 高出生+高死亡
 B 保健・衛生の向上 : 高出生+低死亡 (人口爆発)
 C 現代の社会状況  : 低出生+低死亡 (少子高齢)

 出生の要因
 a) 消 費 効 用 : 子どもを産み育てる充足感
 b) 所 得 効 用 : 子どもが労働の担い手
 c) 安全保障効用  : 子どもによる老後保障
 d) 直接的不効用 : 子育てにかかるコスト
 e) 間接的不効用  : 就業的機会を失う

 人口抑制策
 「産児制限」は成功しにくい
 中国の 「一人っ子政策」 は成功したかに見えるが、長期的には疑問
    ↓
 開発経済学の帰結
  「経済発展こそが最高の人口抑制策である」 

 緑の革命
 人口増殖と食料供給のせめぎあいを打ち破った 緑の革命 Green Revolution
 1970年代以降に普及した高収量品種の開発

 アジアの風土に適合する在来の米品種である「インディカ米」の増産に成功
 ただし、灌漑設備が必須で、大量の化学肥料を要する
    ↓
 自作農から小作農へ転落〜格差の拡大という負の側面


4. 経済成長の原動力としての工業発展

 一次産品輸出型工業化
    ↓
 輸入代替型工業化
    ↓
 輸出志向型工業化
 海外直接投資と技術の標準化
  アジアNIESの成功



<文献紹介>
・ 『開発経済学入門』(渡辺利夫、東洋経済新報社)





 [ 戻 る ]