現代社会と人間   「 貧 困 と 開 発 」    小貫  仁


第1回 オ リ エ ン テ ー シ ョ ン
〜 ジニ係数でみる格差の現実



1. 「 貧困と開発 」 のテーマ

(1) 今日の世界の貧困・格差の現実を知ること
(2) 貧困・格差に対応する理論を吟味すること
(3) 「近代化」を問い直し、その転換期として時代を捉え直すこと
(4) 「貧困」「開発」について、原点から問い直すこと
(5) 世界のしくみを知って、自分の生き方を問うこと


2. ジニ係数とは

 イタリアの統計学者コラッド・ジニが考案した指数
 所得格差の程度を数値化したもの
 0から1の間であらわされる

 完全な平等社会 : ジニ係数=0


 < 完全な平等社会の図 −略− >


 面積A=1×1×1/2=0.5
 面積B=0
 ジニ係数=B/A=0

 完全な格差社会 : ジニ係数=1


 < 完全な格差社会の図 −略− >


 面積C=0.5
 ジニ係数=C/A=1


3. ジニ係数にみる世界の格差

 『100人の村』 をモデルとすると・・・
 「すべてのエネルギーのうち、20人が80%を使い、80人が20%をわけあっています」
 →上位20人が全体の80%を占有する 『100人の村』


 < 『100人の村』 の図 −略− >


 面積D=0.5−(0.2×0.2+0.8×0.2×1/2+0.2×0.8×1/2)=0.3
 ジニ係数=D/A=0.6

 世界の現実は、0.7以上
 →上位15%が全体の85%を占有する地球社会


4. ジニ係数にみる日本の格差

 先進国では、「20-80の法則」は是正され、ジニ係数 0.3前後が自然値

 厚生労働省の「再所得分配調査」(2002)によるジニ係数は 0.4983
 →25人の「勝ち組」が全体の75%を占有する日本社会(ジニ係数 0.5)

 各世帯の所得から、税金や社会保険料などを差し引き、その上で年金などの社会保障サービスを加えた再配分所得のジニ係数は 0.3812
 →スウェーデンやドイツより大きく、アメリカやイギリスよりは小さい
  
 企業のリストラや賃金カットの現実 (2005)
 →貯蓄ゼロ世帯 23.8% (90年代10%以下)
  生活保護世帯 104万世帯 (01年81万世帯)

補足 伝統的なミドルクラスが減少して 「M字型」 社会構造

 アメリカは 「M字型」 社会構造で、日本は中間層がほとんどとされてきた
 しかし、今日では、日本でも ロウアー、アッパーに分かれる傾向が現れている


 < M字型社会構造図 − 略 − >


 上場企業全体の平均年収600万円を境として、
 ロウアーミドル層42% (ロウアー層36%)→下層約80%
 アッパーミドル層16% (アッパー層 5%)→上層約20%



<文献紹介>
・ 『人間のための経済学』 (西川潤、岩波書店)
・ 『世界がもし100人の村だったら』 (池田香代子、マガジンハウス)
・ 『ロウアーミドルの衝撃』 (大前研一、講談社)





 [ 戻 る ]