「田螺稲荷」 「回向院」
(2003年4月27日)



田螺稲荷 「招き猫」(鬼女の花摘み)より
初午の日が来たら、本所の田螺稲荷へおまいりに行きたいといい出したのは、千春であった。
(中略)
とはいえ、田螺稲荷で火防せの護符を頂いて来たいという気持は押えられない。
こういう場合、千春が安心して相談出来る相手は神林麻太郎であった。
横川を越えたあたりから笛や太鼓が聞えて来た。道端に物売りの店が並び、子供が集っている。
「田螺稲荷の旗が見えますよ」
源太郎が指し、三人は足を速めて柳原町と茅場町の間の道をまがった。その路地の突き当りが稲荷社で、赤い鳥居のむこうはかなりの人出であった。
本殿、といっても小さな社殿だが、お詣りをして、その脇の社務所で火防せの護符を買う。麻太郎は二枚買って一枚を千春に与え、源太郎は三枚買った。
田螺稲荷
田螺稲荷→ JR錦糸町駅のすぐ近く、ビルの谷間にひっそりとありました。
 
田螺稲荷 ←小さな社殿 前には沢山の旗が並んでいました。勿論火防せのお願いをしてきました。 


回向院 「浅草天文台の怪」(恋文心中)より
 
八丁堀を出て、今日も天気は良く、抜けるような青空の下を、永代橋、新大橋と大川をさかのぼって両国橋の近くで猪牙を下りる。
案内役は長助だったが、両国の広小路へ来ると、あっけにとられて立ちすくんだ。
もともと、江戸に数多くある広小路の中でも、とりわけ人出の多いことで知られている両国橋の東西の広小路だが、押すな押すなの雑踏で、これでは橋が落ちると、橋番が声をからして人の整理をしている。
(中略)
「東吾さん、買い食いは帰りにして下さい」
「長助、掏摸に気をつけろ」
と源三郎が死物狂いに先導をして漸く回向院の境内に入ったが、そこも行列であった。 
回向院
回向院→ りっぱな門をくぐると奥に近代的な建物が
 

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