The Thousand and One Nights of Technology History


クロンプトンのミュール紡績機
Crompton's Spinnig Mule


Samuel Crompton(1753-1827)は、ボルトン近くのファーウッドの生まれの紡糸工。クロンプトンについて、モスリンの職布工という記述もある。これは、初期は、ジェニー紡績機を使用していたからで、その後、モスリンの職布工に転じた。このとき入手できる糸の限界から新しい紡績機械の発明を思い立つ。18ヶ月間の苦労の末、1779年に完成した。バイオリンを自作するなど、音楽好きであったといわれる。
かれの生家で、ミュールを開発した建物は今に残っており、瀟洒なミュージアムとなっている。

ミュールとは、ラバのことで、雌ウマと雄ロバを交配したものをさす。ジェニー紡績機の欠点は糸を引き伸ばすことにあった。それに対しアークライトの水力紡績機の欠点は、巻き取り機構にあった。撚り終えた糸をボビンに巻き取る際に糸の切断が起こるのである。これらの欠点は細い糸をつむぐ際に、また高速で紡ごうとする際に、顕わになるのである。
そこでクロンプトンは、ローラーによる引伸ばし機構と、ジェニーの撚りかけ・巻き取り機構を、接合しようとしたのである。図のように、回転するスピンドルをキャリッジにのせて、前後に移動するのである。回転運動も前進後退の運動も、人力でおこなう。
細い糸が紡げるようになったが、熟練が必要な点では、ジェニーと同じであった。
クロンプトンが製作し、使用したミュール紡績機。スピンドルの数が少ないが、中心的な部分をのみ、残したため。フレームは木製だが、キャリッジや、ローラの回転部分などは金属製で、数多くの歯車を使用し、手元のホイールの回転運動を伝達している。私もこの機械を1989年に実見したが、どのように動くのかを考えるのは、なかなかパズル解きのようで面白かった記憶がある。


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