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今日は晴天なのに湿気も少なく、久方ぶりに気分の良い一日となる。 夕方、ふらっと散歩に出かけた。
印旛沼にそそぎ込む、小さな川のほとり。 緩やかな流れを背景に、生い茂る草のベルト地帯。 名も知らぬ白い花、黄色い花が 貧相な葉っぱから、点々と遠慮がちに、 しかし、誇らしげにしっかりと咲き乱れている。
しげしげと目を近づけて観察していくと、 虫食いの葉っぱが、やたらと多い事に気づく。 芋虫か、尺取虫か、 良く食うなあ、と感心していると、 モニョモニョと揺らめく葉っぱに目が移る。 そこでは、葉っぱと同じ色をしたバッタ君が、 まっ逆さまの格好で葉っぱにしがみつき、ゆったりと食事中なのだ。 頭に血が昇らないのだろうかと心配しながら、 しばし眺めていると、パタッと食事の動きを止めた。
僕の気配を感じたらしい。 じりっ、じりっ、と後ずさりを始め、 やがて姿が見えなくなった。
そーっと横へ回り、様子をうかがうと、 ぴたっと葉っぱにへばりつき、じーっとしている。 あまりにもその様子が愛らしく、けなげだったので、 静かに心でバイバイとつぶやき、お家へ帰ることにした。 ふと、猫のしぐさを感じてしまい、思わずにっこり。
薄暗くなりかけた帰り道、気分が和らいだ僕は頭上に目を移す。 刻々と変化する雲の動きや、色や、気配が、いつもと何か違うのだ。 煉瓦色と黄金色とがグラデーションの様に大空いっぱいに溶け合って、 まるで、ソラリゼーションの様な、ネガに迫る様な色彩感覚になって行く。
しばし唖然と見つめ続ける。
やがて心は、ワナワナと小刻みに揺さぶられ、 毛細血管の先まで、新鮮な空気をたっぷりと吸い込んだ感じになる。 こんな気持ち、しばらく忘れていたぞ。
映像や文字では表現出来ない、 実体験の<実感>を思い知らされたひとときを過ごす。 それはそれは見事な、自然のスペクタクル・ショーであった。 アッと息をのむ、素晴らしい自然との出会いだった。
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