江戸後期の東方村の古絵図が残されている。大相模家二十三代中村万五郎（｢神道無念流｣中村有道軒一世）と同世代の八条領西袋村名主・小沢平右衛門豊功〔天明６（1786）〜安政２(1855)〕録で、昭和６２年刊｢八潮市史｣（資料編・近世�U）所載されている。

初代大相模次郎が当地に移住した時から現当主まで同じ敷地に代々居住し、外周部に構堀（かまえぼり）と土塁を回し、敷地内に｢神明社｣が記載されている。隣接地に墓地｢桜堂｣、元荒川の堤防の側に氏神｢久伊豆神社｣があり、菩提寺｢観音寺｣も記載されている。

次代の｢神道無念流｣を継いだ（中村有道軒二世）中村正廸の孫中村千枝（現当主の養母）の生前メモより、中村正廸邸の見取り図を製図した。この図より構堀内敷地の利用状態が判る。

現在は構堀内の北側の半分は住宅地（貸地）となり、当主の住宅も一部古材を活用して改築され、長屋門や道場も明治期に解体されて今はない。構堀遺構は３周囲方向すべてふたつきのコンクリート構造に置換され、土塁と判定できる高さがなく、古くからの樹木が茂っている。敷地の外部南西門に忍藩の飛び地であった名残の石柱｢従是東忍領｣がある。

昭和ｘｘ年頃に遺構の発掘調査が行われたが、中世を代表する青石板碑が５基確認された程度で、めぼしい出土品はなかった。５基の板碑は｢桜堂｣に移設・保存されている。

　　　　平成１６年７月２９日　晴耕雨読軒（管理人）