本類聚の七福神図は、収集の結果としてではあるが、すべてが狩野派諸家の手になる作品である。いちおうは、(外)と断ってはいるが、円山應擧や菊池容斎にしてみたところで、画法を狩野派に学んだことを斯道の起点としていたことは紛れもない事実であった。往時の庶民の生活の場では、とりわけ新年の床間を飾るにふさわしい縁起物の掛物――七福神図の功用は、ある意味で、独創を認めようとはしなかったプロ絵師集団=狩野派の作家にとって、実作経験を積むメリットも合わせた格好の稼ぎの対象であったのではなかろうか。
ちなみに、ここに言う七福神とは、「恵比寿(神)・大黒天・布袋(尊)・毘沙門(=多聞)天・弁財(=才)天・福禄寿・寿老人(=神)」を指すものとし、福禄寿と寿老人とを同体異名であるとして吉祥天を加える立場をとってはいない。なお、毘沙門天図の数が少なく、希少価値を認めざるを得ない理由は定かではないが、本類聚にも著名画家作品がしないため、菊池容斎七福神之図に描かれた形姿と信貴山尊像図とでその展示に代えるものとした。
本類聚は、以下に示す30家32点から成る。作者とそれぞれの作品の概要については、各<解説>を参照されたい。
円山應擧 恵比寿図
張月樵 蛭子神鯛図
谷 幹々 恵比寿・大黒図
探信狩野守道 大黒図(横物)
狩野永暉 甲子大黒図
長安雅山 甲子大黒
狩野永暉 乗猪大黒図
璋畝(姓不詳) 甲子大黒図
如川狩野周信 布袋図(横物)
栄川狩野古信 子守布袋図(横物)
晴川狩野養信 川越布袋図
栄川狩野典信 子守布袋図
素川狩野章信 布袋図(横物)
受川狩野玄信 布袋図
川鍋暁斎 愛宕祭毘沙門使者之図
(作者不詳) 信貴山毘沙門天像図
狩野洞雲 毘沙門天図
休意狩野誠信 弁財天図
狩野常信 弁財天図
古川狩野常信 福禄寿図〈三幅対ノウチ〉
松村景文 寿老人図
二代随川狩野甫信 寿老人図〈双幅ノウチ〉
伊川狩野栄信 寿老人図
加藤文麗 寿老人図
狩野探道 寿老人図
円山応震 鹿持寿老之図
狩野常信 寿老人図
松村呉春 寿老人図
菊池容斎 七福神之図
西山芳園 七福神之図
中山秋湖 七福神之図
岸連山 七福神之図