| 小川義文×近田春夫 |
|
|
|
■できれば、オープン・3シーター が欲しいんですよ。
小川「例えば、自動車評論にしても、旧来の評価基準って崩れつつあると思うんですね。だから、もうクルマのメカニズムではなくて、例えばカルナャーであったり、先程の“たたずまい”であったり、そういう複合的な捉え方で自動車を表現できる人の話が、いま一番面白いと思うんですよ」近田「一つ例を上げると、自動車評論で『このクルマはタイヤでごまかしている』なんて表現があるじゃないですか。でも、その発想って、自動車の中でタイヤっていうものを位置的に低い存在としてるわけですよね。そりゃゴムでできてる“輪っか”だから、エンジンに比べれば位は低いかもしれない。でも逆に見れば、そこでそれだけ性能に差が出るのなら、本来エンジン以上に論じられた方が正しいんじゃないかと思ったりするんですょ」 小川「レーシング・ドライバーなんかは絶対そう思ってますよね。だって、クルマって重量が2トン近くあるわけで、結局それを支持してるのはタイヤなんですから。本当は一番重要なんです。自動車メカニズムが、ここ20年の間にこれだけ進歩したのも、例えばポルシェやフェラーリがあれだけ速く走れるようになった最大の理由も、タイヤの進歩ですよ」 近田「ですよね。にもかかわらず、そこが評論上なぜ表に出てこないかっていうと、そこの部分を中心に据えて文章を書くと面白いものにならないんですね。でも、やっばり自動車っていうものの中で、何を大切にするか、何に愛情を持つかっていう部分が徐々に移行していかないと、時代に取り残されてしまう気はするんです」 小川「近田さんは、ビートの後に乗るクルマは考えたりしてるんですか」 近田「こういうクルマがあったら買いたいっていうのはあります。まず屋根が開かなきや嫌なんだけど、できれば、オープン・3シーターっていうのが欲しいんですよ」 小川「昔のアメ車みたいに、女の子を真ん中に座らせて、サンドイッチで乗るみたいなヤツですか」 近田「ええ、それで5ナンバーのが欲しい。僕、3ナンバーって嫌いなんですよ。最近2000cc以下で3ナンバーとか多いでしょう。あれって美学的に嫌なんです。法律を変えてくれるか、もうちょっと狭くしてくれるかどっちかにしないと。昔のトヨペット・クラウンなんか、前にも3人乗れて、それで6人乗りってことで、ちゃんと法律通ってたわけだから、5ナンバーの枠で横に3人乗れる、そういう2ドア・オープンのクルマだって作れるはずでしょう。あと1人乗れるか乗れないかっていうのは、いざという時の機動力が凄く違いますからね」 小川「昔のフェアレディの1500のSPだったかな、その車種だけ、2シーターの後ろに横向きに1人だけ乗れるようになってたんですよ」 近田「あ、僕乗ったことあります、そこ(笑)。あれ、変な感じだった。画期的といえば画期的でしたけど。友達のアニキが持ってて、100キロ出すと200キロぐらいの感じがして。音は凄いし、あの100キロはちょっと感動的でした。『おい、いま100キロ出てるぞ』って言われて、後ろでビビッたの憶えてますもん(笑)」 小川「我々の頃は、“走りに行く”って言うと、大体第三京浜でしたよね」 近田「そうです、そうです。多摩川の入っていく所が凄くてね。で、後ろに乗ってて、とんでもないところに来ちゃったなと思って(笑)。そのまま一気に横浜まで連れていかれちゃうわけですよ。で、『どうしよう、おかあさんにも言ってないし』みたいな(笑)。子供の頃だから」 |
|
|
■クリエイティブにノスタルジーなし、 が信念なんで。
──最近、クルマに限らず“クラシック”志向がブームですけど、近田さんはそういう傾向性はないんですか。近田「僕は基本的に、クリエイティブにノスタルジーなし、っていうのが信念なんで。一切過去は振り向かないようにしてますね。そっちへ行っちゃうと、何でも“スイート”になるんですょ。だから、今の自動車の何が嫌かというと、そこなんです。BMWとかでも結構ノスタルジーな感じがして。Mクーペのデザインなんて、それが凄く強いじゃないですか」 小川「世界的にそういう傾向ありますね。アルファとかにしても」 近田「それで、最近は、許せないメーカーが凄く増えちやって」 ──訳が分からなくて、変であっても、とにかく未来を向いていないと駄目だと。 近田「それ以外ないですよ。だって他の業種……例えば工場で使うプレス機械で、『昔の方が味があったよね』って、古いモデル作るやつはいないでしょ。工業製品がそういう意味で反動的な方向に行くというのはありえないんですよ。コピー機が昔のデザインになるかっていスノと絶対にないわけだから。確かに、自動車はそういうところでズルをしようと思えばいくらでもズルできると思いますよ。でも、ちょっとでもそれをやろうとした会社は心の中で見捨てることにしてますね」 ──しかし、ロックにしても、“先祖返り”的な音楽やってるミュージシャンは近頃目立つじゃないですか。 近田「だから、そういうのは一切認めないですよ。そりや、先に進むのって、時代が新しくなればなるはど大変ですよね。でも、その中でそれをやらない人はもう脱落した方がいいと思う。例えばオリンピックで、『100mを11秒で走ってた時代は良かったよね』なんて言ったって全然通用しないですよね。こういうことってそれと同じなんです。9秒7の壁は無理だよねと言っても、そこに挑戦していくってことが、クリエイティブってことだから。自動車のデザインに関しては、要するに出尽くしちゃってるから、こうなってるんだっていう考えが強いですよね。でも、どんなレベルに到達したって、絶対に違うものはあるはずなんです。結局は作り手の姿勢の問題であってね。ストーンズにしても、あの中での進化はずっと遂げてるわけだし、昔自分達がやってたものは意地でもやらないですよ。だからこそ彼らはいまだに通用してるんです。そこで、いま昔のストーンズのマネしてる人がいたら、それはお話にならないっていう。最近のショーなんかに展示されてるコンセプト・カーとか見てると、自分が昔やったことを誰も気付いてないからって、ひっぱり出してきて、新しいクルマですって提示してる感じするんですよ。特に、アメリカ車なんて、みんなグラマラスなモデルばっかり作ってて。あんなのズルじゃないですか。バットマン・カーじゃねえんだぞ、って感じするでしょう(笑)」 ●近田春夫(ちかだはるお)1951年生まれ。75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。自らの作品の他、ニューウェイヴから歌謡曲まで幅広くプロデュース活動を行う。86年、プレジデントBPMを名乗り日本語ラップの先駆けとなる。88年にはヒップホップ・バンドのビブラストーンを結成。97年からはソロとしてゴア・トランス・テクノのシングルを発表。常に時代の先端の音楽を生み出している。著書に『考えるヒット』『定本・気分は歌謡曲』がある。11月26日にはキングから『アーティストコレクション・シリーズ、近田春夫&ハルヲフォン』がリリース予定。現在の愛車はホンダ・ビート。 |
|
Presented by Headrok Inc. copyright(C) Yoshifumi Ogawa
|