アンの青春の明日が輝く言葉−第113回                 松本侑子ホームページ

「美しい生き方が、その人の名前を美しいものに変えるのね。最初はきれいな名前に思えなくても、やがてまわりの人たちは、その名前を聞くだけで、優しくて心地よい気分になって、名前がもともとすてきじゃなかったことなんて、考えもしなくなるんだわ」

                        
『アンの青春』第21章

 さわやかな初夏の季節になりましたね!
 さて、今日は名前についてです。
 ご自分の名前が、もっと優雅で洒落ていたらいいのに……と思っておられる人もいらっしゃるかもしれません。
 アンも、自分の名前はありきたりで夢がないと感じていました。『赤毛のアン』のなかで、ジェラルディン、コーデリアと、まるでお姫様のような名前を自分につけていたほどです。
『赤毛のアン』第5章でも、アンは、「薔薇はたとえどんな名前で呼ばれても甘く香る、って本(「ロミオとジュリエット」)で呼んだけれど、絶対にそんなことはないわ。もし薔薇がアザミとかスカンクキャベツという名前だったら、あんなにいい匂いはしないはずよ」と語っています。つまりアンは、名前の響きほうが、実体よりも大切、という言葉の世界に生きる女の子だったのです。
 そんなアンも大人になり、人の名前は、その人の行いによって、美しくも醜くもなることに、気づいたのです。
 名前を耳にした人が、ほがらかな温かい心地になる……そんな優しいふるまいを、心がけたいと思います。

松本侑子 


 この言葉は、『アンの青春の明日が輝く言葉』(松本侑子著、ディスカバー21発行・1200円)の72頁に掲載しています。どうぞ書店でご覧下さい。


『アンの青春』(モンゴメリ著、松本侑子訳、集英社)より引用
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