アンの青春の明日が輝く言葉−第13回                 松本侑子ホームページ

「鞭で子どもを叩くなんて、私は絶対にできないわ。いいことじゃないもの。ステイシー先生は一度も鞭を使わなかったけど、教室はきちんとしていたわ。でも、フィリップス先生はいつも鞭でぶったけど、秩序もへったくれもなかったじゃない」

                        
『アンの青春』第4章

 教師になるアンとジェーン、ギルバートの三人は、体罰について話しあいます。
 アンは反対。ジェーンは賛成。そしてギルバートは、体罰は感心しないが、どんなに口で言ってもきかない子どもに対する最後の手段として認める、と意見が分かれます。

 作家になる前に教職についていたモンゴメリは、日記によると、時には鞭も使ったようです。
 そして体罰反対のアンは、いざ先生になると、生意気で手に負えない男の子にカッとして、つい棒で叩き、激しい後悔に苦しみます。

 一方、隣人のハリソンさんは言います。「可愛い子には、鞭をくれよ」(鞭を惜しむと、子どもがだめになる)

 学校の体罰はともかく、家庭でのしつけの体罰もふくめると、むずかしい問題ですね。

 私もギルバートと同じ意見で、体罰は感心しません。でも教師も親も人間ですから、ついカッとなることはあります。またどんなに言葉で叱っても、まったく通じない子どももいるでしょう。
 反対にしても賛成にしても、一番大切なのは、常に子どもへの深い愛情があること、子どもをいい人に育てたいと願う真摯な気持ちが子どもに伝わっていること、愛されているという実感を子どもが持っていること、ではないかと思います。

 アンは言います。
「子どもをまとめるには、もっといい方法があるはずよ。私だったら、生徒の愛情を勝ちとるわ。そうすれば、子どもたちは自分から進んで言うことを聞くわ」

松本侑子 


『アンの青春』(モンゴメリ著、松本侑子訳、集英社)より引用
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