アンの青春の明日が輝く言葉 第55回
「今年の十一月は、なんてすてきでしょう!」アンは言った。「だって例年、十一月は、うんざりするような月だもの。一年という歳月が、自分は年老いた、もう何もできないと気づいて、泣いて焦っているような月よ。でも今年の十一月は、上品に年を重ねたのね。たとえ白髪やしわがあっても、魅力的でいられると心得ている品格のある老婦人みたいだわ」──『アンの青春』第10章
アンは、11月という月を老婦人になぞらえています。
11月は、一年の残りもわずか、自分は年をとり、もう何もできないと、陰気に嘆いている中高年のようだけど、今年の11月は違う、とアンは語ります。
誰しも年をとります。若さを失うと、人間としての魅力も残り時間もなくしたように感じて、意気消沈しがちです。
しかし人生の歳月を、誠実に、品位をもって生きれば、たとえ白髪やしわができても、奥ゆきのあるすてきな人であり続けるでしょう。
『アンの青春』を書いた時(主に1907年)、モンゴメリは33歳の独身女性、祖母と二人きりで暮らしていました。今から百年近く前の30代の女性は、今と違って「中年」として理解されていましたから、このアンの台詞は、モンゴメリの心からの言葉のように思えます。
あなたの今日の一日、今月のひと月、今年の一年を、すてきな年輪に育ててください。(松本侑子)
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