特別企画・連載エッセイ「『アンの青春』の魅力」
第1回●成長したアンの姿(松本侑子)

 『アンの青春』は、カナダの作家ルーシー・モード・モンゴメリ(1874〜1942)の小説『赤毛のアン』の続編にあたる長編作品です。
 舞台となっているのは十九世紀の終わり、カナダ東海岸に浮かぶ風光明媚なプリンスエドワード島。アン・シャーリーの十六歳から十八歳までの二年間が描かれています。
 あの幼かったアンがなんと立派な娘に成長したのだろうと感慨にふけることがしばしばでした。一人前の大人に育っていくアンの姿に、彼女を大切に育てたマリラさながらに誇らしさと嬉しさ、時には幾ばくかの寂しさも覚えながら若い女性の成長物語を訳したのです。
 アンは、老いたマリラを助け、農場グリーン・ゲイブルズを維持するために、奨学金を勝ち得た大学進学をあきらめ、小村アヴォンリーの若き教師になりました。まだ十代ながらも、子どもたちに精いっぱい良い影響を与えようと苦心して教え、体罰の是非を真摯に考え、教え子たちから厚く慕われる熱心な先生になります。と同時に、アヴォンリー村の景観を改善する運動を発足させ、活動資金を集めるために家庭を訪問して人々を説得して寄付金をつのり、美観作りにとりくみます。
(つづく)
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