「女装夢変化」　松本侑子著

　生まれてこの方、こんなに男のひとを心底愛し抜いたのは、あのひとが初めてでした。あのひとというのは、八王子で呉服屋を営んでいるＫさんです。
　それはもう気っぷのいい、今どきろずらしいくらい男らしいひと。
　さっぱりして気持ちが大らかで、しかも度量があって頼りになる。芸事も達者で、長唄のたしなみもあれば、茶道のお免状も持っている。こんなに褒めるのは、惚れた欲目もあるでしょうが、別れた今でもあのひとのことは忘れられません。いえ、生涯忘れられないだろうと、一人になった今でも寂しい気持ちで思います。オンナとして愛される喜びを、初めて教えてくれたＫさんです。
　Ｋさんの魅力には出逢いの時から参ってしまいましたが、逢えば逢うほどじんわりと身にしみて、前のめりにのめりこむように一気に好きになりました。
　……（以下略。続きは単行本でご覧下さい）

小説集『性遍歴』（松本侑子著・幻冬舎刊・定価1500円・2001年４月26日発行）より引用。
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