○エッセイ
『テーマで読み解く日本の文学〜現代女性作家の試み』が発行された。
古代から戦後までの作品を評論する八十二稿を収めている。企画者は大庭みな子と先年他界された三枝和子。
編集委員として岩橋邦枝、津島佑子、中沢けい、道浦母都子、増田みず子らが集まり、執筆は伊藤比呂美、稲葉真弓、小川洋子、荻野アンナ、角田光代、笙野頼子、多和田葉子、俵万智、時実新子、林真理子、藤野千夜、村田喜代子など四十一人(敬称略)。
この本には大きな特徴がある。
これまでの文学史は時代別の編年体で、執筆は男の学者か批評家。しかし本書はテーマ別の編成、評者は女、かつ創作する実作者だ。
テーマにも優れた個性がある。
目次から抜粋すると、神との交わり、異界、エロスと生死、ジェンダー、日常生活、土地と旅、私語りと日記、詩と詞など。
つまり、男に対する「女」、中央に対する「地方」(アイヌや沖縄など)、西洋的な異性愛強制に対する「揺らぎのある性」、覚醒を求める近代に対する「幻想」と「異界」、権力者に対する「庶民」、書き言葉に対する「口承」、父系制に対する「母系制」といった、従来見過ごされてきた視点が鋭くある。
ちなみに私はジェンダーの章に、『古事記』に出てくる醜男(大国主神)と醜女の描写比較、さらに『堤中納言物語』の「虫めづる姫君」から、毛虫を好み化粧をしないナチュラリストの姫、つまり女らしさの規範から外れる娘がどう評されているか、の二稿を書いた。
どうぞご覧下さい。(作家・翻訳家)(初出・「しんぶん赤旗日曜版」2004年7月18日号。無断転載は禁じます。)

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