『性遍歴』(幻冬舎文庫 520円 2004年4月)
2001年5月発行の単行本が、文庫化されました。
さまざまな性愛のかたちを描いた恋愛小説集です。

表題作「性遍歴」は、女性のすこやかな性欲の芽生えについて書いたものです。女性のイタセクスアリスについて率直に書かれた作品を読んだことがないと思ったのが創作の動機です。

「女装夢変化」は、出版社に勤務して妻子もいるの普通の男性が、少しずつ女装にひかれていくプロセス、そして女装して男性と恋におち別れるまでを描いたものです。
私たちが無意識のうちに演じている「男らしさ」「女らしさ」とは何なのか……。異性装の主人公を創りだすことで問い直してみました。

「初恋」は近未来を舞台にしたSF小説です。服装の男女差がなくなった未来の小学生たちが登場人物です。まだ第二次性徴があらわれる前の子どもに、どのようにジェンダーのすりこみがなされていくのか、実験小説として書きました。

「ナツメの実」は、女子学生二人の友情とも恋ともつかないみずみずしく不思議な交流、死によって訪れた別れを、ほのかに甘く苦く描いた作品です。本書のなかでは最も好きな作品です。

「新しい扉」は、初めて書いた女性の同性愛小説です。レズビアンについては以前から取材してきました。その結果、世間のレズビアンのイメージは、男社会が性的な好奇心から作りだしたエロチックな幻想でしかなく、実態とは異なる間違ったものだと痛感しました。この小説では、女の性と恋愛について温かくコミカルな小説として描きました。(次へ)

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