樹々は徐々に色づき、秋めく村。
田んぼでは、無事収穫を終えた、新男米。
猛暑だった今年はどんな出来となっているのか。
確認出来るのは乾燥終わる11月下旬予定。
一方、家の上では、冬を前に、終わらせたい急ピッチの作業。
城島「修復していかんとね」
母屋の屋根は茅葺いて丸9年。痛んだ場所から、雨洩りもしばしば。
そんな老朽化した茅葺き屋根は、他にもあった。
発覚したのは記録的な大雪続きの今年3月だった。

松岡「屋根が落っこちた!」
井戸の蓋は水汲みが終われば閉めるが、つい忘れてしまうことも。
そんな折、老朽化した井戸の茅屋根が雪の重みで一部、井戸内に抜け落ち、水を汚してしまった。

飲み水としても使っている井戸にとっては、あってはならないこと。
雨不足の年にも枯れなかったこの清涼な地下水を守るべく、
城島「釣瓶式も良いねんけど… 替えよう新しいのに」
屋根はもちろん、蓋を開けて使うシステム自体を見直す事に。


そこで、城島と明雄さんが訪れたのは広大な集合農地。
目にしたのは、いわゆる“手押しポンプ"。
深さ8m以内なら、水脈から直接水を引き上げられる、打ち込みタイプ。
明治以降、伝染病拡大防止のため、開放型の釣瓶式から改善されていった、衛生的な密閉型の井戸システム。
いまだに東京だけでも、50基以上が現役で活躍している。
その魅力は、衛生面だけでなく、レバーの上げ下げだけで連続的に水を出せる、利便性。
この土地ではその利便性、各畑で活かされていた。

気になるのは、その構造と仕組み。
シリンダーである本体内部で稼働するのはピストン。
ちょうど注射器の様に、気圧を利用して水を揚げているはずだが、ピストンの上にまで水があるため、詳しい構造はよく見てとれない。
古川さん「家に外した古いやつ(ポンプ)があるから見てみるかい?」
きゅうり農家の古川さんの倉庫に眠っていたのは、5年前まで8年間使用したという手押しポンプ。
外形は鋳物(鉄)、ロッドの先には木製のピストン。
ピストンの中央部には穴が貫通し、その上には穴を塞ぐ、皮でできた弁が付いている。さらにシリンダー底部にも鉄の弁。

ポンプは、1つのピストンと上下2つの弁の働きで水を揚げるもの。
ピストンの上には、呼び水が不可欠。
つまり、水の蓋で内部の空気を完全に閉じ込め、その状態でピストンを上げると、シリンダー底(下)の弁が引っ張られる様に開き、その分、シリンダーに水が入り込む。そして今度は下げると、ピストン(上)の弁が下からの圧力で開き、水はさらに上へと流れ込む仕組み。
内部が水で充満されても起こる原理は同じ。
上に溜まった順に、水は外へと吐き出される。
(私の足です。)

現在は使用していないそのポンプ、古川さんから譲って頂けることに。
しかし、ポンプシステムの心臓部、ピストンに問題があった。
ピストンは内側から押す様に、シリンダー内に窮屈にハマらなければ、その下、内部を密閉空間には出来ず、水を上には引き上げられないが、長年使われなかったためか、ピストンは収縮してしまっていて、シリンダーとの間にはかなりの隙間ができていた。
だが、ピストン部分さえどうにかすれば、現役復帰の余地はありそう。
有り難く頂戴して、村に持ち帰る。

ピストン以外を点検するため、まずは分解してみる。
下部のパーツは下の弁。上げた水を保つよう、鉄の皿板とゴムの枠が密着しなければならない箇所だが、水を入れて確かめてみれば、漏れることなく、弁としてしっかり機能した。
だが、下の弁も本体内部も直接水に漬かる場所。
城島「結構サビてる」
素材自体に定着しきったサビならいいが、剥がれるような固形のサビは水を汚す。
長年の老をねぎらう様に日々ワイヤーブラシでこすって。
金属パーツはひとまずOK。

いよいよポンプシステムの心臓部、ピストンに取りかかる。
全部で3つのパーツで構成されるが、それぞれに問題が。
まず、本体内部と密着するべき巻皮は、縮み上がって元に戻らず、使えない。さらにピストン上で水を保つべき弁。
なめし皮には開きグセがつき、穴を閉ざさない。
そして縮み上がりヒビ割れきった、ベースとなる木玉。
とにかく、コレが無くては始まらない。
材質はクリノキ。ならば、調達は村の里山で。


昨年冬前に間伐したクリ材は、そこかしこに積んである。
丈夫な芯の部分を使うため、大きめの直径15cmのものを切り取る。
まずは荒く、ナタで落とし、さらにカンナで細めていく。
その木玉に取り付けるべき、巻皮と弁(どちらも伸縮性高いなめし皮)は、替わりの物を見つけなければ。

そこで、目を付けたのが明雄さんが締めていた皮ベルト。
明雄さん「これでなくても家に古いのあっから」
お言葉に甘え、城島は御年80歳の農業指導のお宅へ。
ご自宅に上がるのはこの日が初めて。
TOKIOのポスターや、腹筋ローラー… など、明雄さんの生活を垣間見つつも、有り難くなめし皮のベルトを頂く。
さらに外の倉庫も物色。井戸の深さ、そしてポンプの径に合う吸水用の塩化ビニルパイプも頂く。
元石材屋の明雄さん、いろいろ持っていた。
村の工房に戻り、さっそく作業。

巻皮用に5cmのところにノコ目を入れ、そこを丁寧に削って行く。
ポンプアップ出来るかはここ次第、焦らずじっくりと。
季節は酷暑の8月。汗が吹き出す中、少しずつ確認しながら進めた削りは、彫刻刀から紙ヤスリへ。
出来た木玉に、ロッドを固定し密着感を確認。
達也「スカスカだけどベルトを巻けば」
厚さ5mmのベルトに対し、隙間1〜2mm。
皮を巻き終え、窮屈に下まで降りれば成功だが…
あえなく引っかかり、ピストンは下まで降りず。


再び皮をはがし、中の木玉から削り直し。
ミリ単位で平均的に丸く削る作業に達也はここまで5日を要していた。
急げない重要部分も、ここからは長瀬、太一も加わっての共同作業。
達也が削った所を長瀬が鉄ヤスリ。最後に太一の紙ヤスリ。
もはやはみ出てる所はほぼ無い、と思いきや、それでも駄目。
その後、三日間。中の木玉、そして巻皮自体も削った。

ベルトはもはや削れない厚み、およそ3mm。ピストンをシリンダーへはめてみると、下まで降りはしたものの、今度はいやに抵抗がない。
隙間は1〜2mm。しかし、
明雄さん「普通は水に(ピストンを)10日くらい浸す」
達也「(水に浸せば)膨れるもんね」

いちから作り直しの可能性も無くはないが、ともかく弁も取り付け(重みには鉄のバックル)、ピストンを桶の水に浸ける。しっかり水をポンプアップしてくれるのか。
全てはこのピストンの膨張次第。

その間に、進める屋根の改築。今度の屋根は杉皮張り。
お世話になった釣瓶も残した。
しっかり守れる状況が出来たところで、ピストン以外のまずは本体を設置。
井戸の内蓋に穴を開け、明雄さんからもらったパイプを計4mにジョイントし、その穴を通し、シリンダー本体につないで固定。


達也「あとは中だね、ピストン」
どれだけ膨らんでくれたのか。ポンプの成否はそれ次第。
期待と不安、水から出してシリンダー本体と装着。と、
城島「いい密着感!」
程良い具合。そこに誘いの呼び水を入れて作業完了。
新たな水のシステムはちゃんと稼働するか? いざ!
4m下のパイプの先から水を引き上げ、筒先から吐き出している!
無事、成功! 最後にポンプの口に竹筒を取りつけ、蓋を閉めて完成。
季節は秋。白菜などはこれからが最盛期。
今後は水やりの効率も上がりそうです。

2010年10月31日放送のDASH村にでました。