天羅万象・零とは
「天羅万象・零」は、既に絶版となっている「天羅万象」の新版として発売されたTRPGである。
舞台は前作と同様、「広大な戦国時代の日本」で、コミック的な表現やノリを再現することをコンセプトとしている。「気合」というヒーローポイントをロールプレイによって獲得し、戦闘では傷つくほど強くなる仕組になっている。
大きな変化は「零システム」と呼ばれる「ロールプレイ相互評価システム」の導入である。各場面でプレイヤーの一人が「裁定者」と呼ばれる評価役となり、因縁にそったいいロールプレイをしたプレイヤーに「合気チット」と呼ばれるものを渡す。場面場面の間にプレイヤーは、この「合気チット」をヒーローポイントである「気合」に変換する(「合気チット」には他の使い道もあるが)。
デザイナーはこの「零システム」によりロールプレイが促進され、プレイがより加速する、と述べている。
確かに、それは事実だろう。
だが、昔から、RPGには「プレイ中ほとんど発言せず、自分のキャラの役割の時だけ淡々とダイスを振る」タイプのプレイヤーがいた。それでつまらないかというと、そうでもなく、きいてみると「面白かった」と答えるし、次回のプレイにもやってくる。よく「地蔵」などと揶揄されるプレイヤーだ。
前作「天羅万象」では、淡々とした行動でも「因縁」に沿っていれば「気合」は獲得できた。しかし、「零システム」導入以後は他のプレイヤーに「ウケ」なければならないのだ。
ウケなければ「気合」が獲得できないし、クライマックスは「気合」を使うことを前提として作られている(そうでなければ「天羅」である意味がない)。
これにより、「地蔵」プレイヤーの意外な変化が引き出されるかもしれない。しかし、そんな事態を期待できるほど、わしは無邪気ではない。
ダイスを振る手だけがあればできた「天羅」からある種の人々が疎外されてゆく、ように見えるのは、わしの考えすぎだろうか。
進化するということは、何かを淘汰することでもある。
宮台真司は、「最近はオタクであるためにもコギャル程度のコミュニケーションスキルが必要。それがない者はオタク社会からも疎外される」と述べている。
「天羅」の進化はRPGのロールプレイ/ストーリー志向の流れに則っての必然の変化ではある。が、それだけではなく、この時代の流れに合わせて「進化」したようにも感じられてならない。
もっとも、「天羅・零」にハマれる人は、より濃密な、また宮台の言葉を借りれば、より「強度」の高い時間を得ることが出来るわけなのだが。