RPG観測記 2001春〜夏

ニャーが最近発売されたRPG関連物を紹介し、やりもしないで文句をたれるという、大変不愉快なコーナーです。


『テラ・ザ・ガンスリンガー』

 井上純弌 エンターブレイン刊 4000円 基本ルール

賛否はあるだろうが、消え残りのRPG界の中で、異様に輝いているのは井上純弌だろう。
 「天羅万象」は「死に場所の選べるRPG」だった。ダメージの段階はプレイヤーが決める。死にたくなければ気絶状態になればいい。ここが死に場所と思ったら、たった1ダメージでも死ねる。そんなルールだった。「テラ」は「ダイスの出目を選べるRPG」だ。実際にはダイスは使用しない。ダイスの代わりに全てトランプで判定する。手札にある切り札―出目で言うところのクリティカルか―は、プレイヤーが出したい時、キメたい時に出せばいい。つまり、「ボスと対峙する時」まで切らなくていいのだ。また、「天羅」同様「ヒーローは死なない」ために使うことだってできる。偶然の神の悪戯とおかしみ、偶発のドラマは排除されている(もちろん完全にではないが)。
 どうだろう? かつての「古きよきRPG」は多かれ少なかれ、シミュレーション的ゲーム志向を要求した。それはプレイして面白いと感じる人種を選んだのは事実だ。そこでは偶発がドラマを生む強力なエンジンだった。それを排したストーリーテリングRPGはプレイヤーに強烈なノリ、マスターに物語構築能力を求めるのでは?と尻込みしてしまう(わしのような古いゲーマーは)。気合を込めてダイスを振るという快楽をプレイヤーから取り上げ、自らの用意した物語の舞台とシナリオだけで、十分にプレイヤーを楽しませることができるだろうか―と。
 話は変わるが、井上純弌の魅力のひとつは、その狂った舞台設定にあるのではないだろうか。パクリっぽい設定の重層ながら、数百人をなぎ倒す侍同士が大陸規模の土地で争う「天羅」はどこかタガの外れた勢いがある。「テラ」の舞台はニセ西部開拓時代。ひとつの街ほどの人間を乗せた巨大列車で、遥かな西部開拓地を目指す。やっぱりちょっと狂っていてパワフルである。
 まあ、より「演劇的」でもあるストーリーテリングRPGは、「かなり気の合う仲間」でやれば結構楽しいんではないかと思っている。「テラ」もとりあえず一度くらいはやってみたいと、思ってはいる(言えば、その他は一度もやる気も起きないということ)


『央華封神RPG』

清松みゆき/友野詳/グループSNE メディアワークス刊 4500円 基本ルール

 かつて文庫で出ていたものの新版。ぱっと見、「売る気ないのか」って感じ。帯もなければ、表4に内容の説明があるわけでもない。以前「央華封神というTRPG」があったことを知らない人には、何の本だか全然わからん(最近は内容を立ち読みして確認できない店も少なくない)。エンターブレインやゲームフィールドの刊行物の売るための努力を、改めて感心する次第(なるほど雑誌のサポートなどのない時代のRPGは、本体に気合を入れざるを得ないのだなあ)。そして「央華封神」をみて以前のRPGはぞんざいでよかったのだなあ、と。あ、一応、「央華封神」は電撃でサポートされてるらしいけど(情報:火鱗)、ねえ。
 内容はどうも、なじみのない感じなので、どうも頭に入ってこないにゅ。わし中国系のもの(三国志とか封神演義とか)苦手なんだよね。エロスに欠けるせいかしら。


『セブンフォートレスEX』

菊池たけし/F.E.A.R ゲーム・フィールド刊 3300円 「セブンフォートレス」追加ルール/データ集

 全編追加の職業、必殺技、魔法、アイテムなどのリスト。まあ、こういうものが出るだけ素晴らしいけど。なるほどヴァリエーションとデータが無限に拡散してゆくタイプなのだなあ。このへんは旧世代っぽい。あと、長期キャンペーンを考えてるとこも。
 余談だが、新世代のRPGの作成者は「新世代」の最初のRPGは「トーキョーNOVA」だと考えてる風なのね。あれがどうもストーリーテリング型RPGの嚆矢らしい。「天羅」以降ではなく「NOVA」以降で捉えるべきかも。


『井上純弌の世界』

ゲーム・フィールド刊 1500円 「ゲーマーズフィールド」別冊

 井上デザインのゲームのシナリオ、リプレイ、追加ルールなど。まあ、今までにあまりなかったアプローチ(過去に「水野良の世界」とかはあっても不思議ではないがわしは知らない。水野は小説での特集はもちろんあるけど)だけど。
 インタビューもたいしたこと言ってないし(「別冊FSGI」での発言のが重要なことは既に書いた?)。まあ、FAQとエラッタがまとめて載ってるので、プレイヤーは便利かと。


『鈴吹太郎の挑戦』

ゲーム・フィールド刊 1500円 「ゲーマーズフィールド」別冊

誰? あー、F.E.A.Rの社長。ふーん。彼のかんだRPGのシナリオ、リプレイ、追加ルールなど。
インタビューでは苦労話と普通のことを語り、自分のゲームデザイン論を細かい字で載せている。まあ、結果から見て納得のいくことが普通に書いてある。ぱっとしないけど、まあ、普通のことを言う人がいて成り立ってるんだよな。


助手:どーよ?
博士:どーかな?
助手:どーなのよ?
博士:どーでもいいけど、RPGを売ってる店、減ったね。もう、新宿イエローサブマリンのみって日も来るね。
助手:ふーん(どうでもよさそう)。
博士:あと、「メガトラベラー」が買えなくなりました。「深淵」はまだ買えます。


瀧澤博士のちょっといいはなし

 博士:わし知らなかったんだけど、いま「D&D」3版を出してるとこって、「マジック:ザギャザリング」を出してるウィザーズコーストに買収されてるのね。まあ、向こうでは普通のことなんだけどなんか微妙な気持ち。
 ところで「Dungeons&Dragons」が映画で公開されますが…ちょっと映像を見た感じでは…なんかダメな予感が…。でも映画あわせで3版誰か翻訳しないかなあ(間に合わないって)。


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