Call of Cthulhu 0704

クトゥルフ神話TRPG比叡山炎上シナリオ

リーフデ号の秘密

★クトゥルフ神話TRPGサプリメント「比叡山炎上」のために作成したシナリオに加筆したものです。実在の人物・団体等とは関係ないですよ。

■背景

 イギリス人のオカルティスト、ウィリアム・アダムズは、1597年(1598年とする資料もある)発行された「サセックス草稿」を入手する。息子イェッセや弟を呼び寄せ、リーフデ号に乗り込む。(フィクション)

 オランダ船「リーフデ号」は東方探検に向かう五隻の船団のうちの一隻。1598年にオランダを出航。大平洋に至るまでに、ポルトガルなどとの戦闘や天候の影響などで沈没、離散し、リーフデ号1隻となっていた。(史実)

 リーフデ号は大平洋上で、水と食料を補給するため、ある無人の小島に立ち寄る。航海長アダムズが指揮を執り、十数人が島に上陸。
 その島にはクトゥルフに捧げられた神殿があった。船員は奇怪な生物(深きものども、クトルルフの落とし子)と接触。大半が死亡。かろうじて戻ってきたアダムズ他1名をのせ、船は出航する。(もちろんフィクション)

 しかし、戻ってきたアダムズは元のアダムズではなかった。彼は奇怪な言動と魔術で船を支配しようとする(クトゥルーと何らかの取引をしたと思われ)。
 船長クワッケルナックとアダムズは対立し、船を二分する暴力沙汰となる。船長はアダムズらを捕らえ、船室に閉じ込める。アダムズは島の位置を記した海図を船内に隠す。
 騒ぎは収まったものの、船員は怪我と飢えに苦しみ、まともに航海できる状態ではなくなった。(もちろんフィクション)

 1600年初春、リーフデ号は日本に漂着する。元は100名の乗組員がいたが、生存者は24名だった。
 漂着したのはは豊後の国、臼杵湾。日本人に助けられるが、衰弱していた6名が数日中に死亡する。(史実)

 船は徳川家康に接収され、浦賀に回航される。
 アダムズ、ヤン・ヨーステンらは、療養中の船長に代わり、大阪城で家康と謁見。通訳を務めたイエズス会宣教師らは、彼らを処刑するよう家康に勧める。(史実。当時プロテスタント国だったイギリス、オランダは、カトリックのスペイン、ポルトガルと敵対していたらしい)

 セルケイラ司教らイエズス会士の一部には、イエズス会を通じて、アダムズが『サセックス草稿』の顧客リストに名のある、要注意人物である、との情報がもたらされていた。それゆえ、強硬に処刑を求めたのであった(フィクション)。

 家康は結局、リーフデ号船員を処刑しないどころか、配下として召し抱える。家康はリーフデ号に積まれていた大量の大砲、銃を接収。接収した兵器とリーフデ号の兵員を関ヶ原の合戦に投入。(したと言われている)

 アダムズらを利用したい家康は、船員らの帰国を許さなかった。アダムズは相模国に領地を、江戸には屋敷を与えられていた。(史実。だが、もっと後の時代の可能性が高い)

 そして三年が経ち、時は1603年初春。開幕直前――

■NPC

蒼井雄一郎(架空の人物)
 徳川に仕えた鉄砲衆の一人。PCらの住む村をあずかる地侍、蒼井空三郎の兄

イェッセ(架空の人物)
 リーフデ号の船員。砲術員。関ヶ原で徳川方について戦う。アダムズの妾の息子。
 髭を除けば、顔だちはアダムズによく似ている。イェッセはPCに問われるまで、アダムズの子であることを明かさない(リーフデ号の船員の間では「公然の秘密」)。彼は穏やかな性格だが、父親には畏怖とともに憤懣を感じている。
 ※シナリオスタート時点でウィリアム・アダムズは37歳、イェッセは少なくとも十代後半でなくてはならないので、妾の息子という設定はいささか無理があった。異母弟とかのほうがよかった。

ウィリアム・アダムズ/三浦按針(実在の人物)
 リーフデ号航海長。イギリス人。邪悪なオカルティスト。クトゥルフの神殿でクトゥルフに魅了される。「サセックス草稿」を所持している。日本では三浦按針を名乗り、帯刀を許されている。
 精悍な中年男性。長髪で髭を蓄えている。

ヤコブ・クワッケルナック(実在の人物)
 リーフデ号船長。オランダ人。本来船長ではなかったが、航海中に船長が死亡したため船長の任に就く。

ヤン・ヨーステン・ファン・ローデンスタイン(実在の人物)
 リーフデ号船員。オランダ人。江戸にいる。

トマス(架空の人物)
 イエズス会士。アダムズに帰国を勧める。

ルイス・デ・セルケイラ司教(実在の人物)
 カトリック日本教区長。イエズス会士。アダムズの邪悪な企みを知り、トマスを遣わす。初老の男性。

ペトロ石の助(架空の人物)
 日本人。イエズス会士。トマスの弟子。

生助(架空の人物)
 按針の屋敷の下人。実は按針を監視する徳川の忍び。巨根。

伍助、豆八(架空の人物)
 按針の屋敷の下人。実は按針を監視する徳川の忍び。

■本編

1.雄一郎の帰郷
 家康に仕える鉄砲衆だった雄一郎がPCの住む村に帰郷する。雄一郎はリーフデ号の船員イェッセを伴っている。
 砲術員だったイェッセは、雄一郎に技術を指南し、部下として働いていたのだった。戦が終わり行くところがなくなったイェッセの面倒を雄一郎が見ることにした。
 PCに〈オランダ語〉〈種子島〉〈英語〉〈大砲〉習得のチャンス

2.アダムズの呼び出し
 雄一郎とイェッセはアダムズの元に、アダムズからの使者がやってくる。手練の者や知恵者を伴って自分のところに来てほしいとのこと。雄一郎はアダムズにも恩があるので、PCを伴い相模国へ向かう。
 アダムズは、何とか自分の船で帰国したいとしきりに訴える(「自分の船」にこだわる)。
 徳川の直属の部下ではない雄一郎(とPCたち)が頼りなのだと言う。
 まずは、船が現在どこにあるのかを探ってほしいと頼む。アダムズは、リーフデ号が浦賀に回航されたことまでは知っている。
 PCが適切な〈目星〉などに成功すると、使用人たちがアダムズを監視していることが分かる。屋敷には10人ほどの使用人がいる。

 浦賀に向かうと、そこにリーフデ号はなく、江戸湾に送られたことが分かる。

3.イエズス会宣教師
 イエズス会宣教師トマスがアダムズを訪ねてくる。
 トマスはイエズス会のコネで帰国ができることを伝え、帰国を勧める。しかし、アダムズはそれを頑に拒む。トマスはポルトガル人で、彼とアダムズの共通で知っている言語は〈日本語〉とするw
 トマスは粘り強く、何度もアダムズを訪れる。その度にアダムズは拒絶する。トマスは、何としてもアダムズをイエズス会のルートを通じて国外に出るように説得するよう、厳命されている(PCが尋ねれば、その件は話すが、それがなぜなのかは、彼は知らない)。
 しばらくすると、イエズス会士は空鬼に襲われる。
 イエズス会士は、アダムズが邪教の輩であることを示唆するが、詳しいことは江戸のセルケイラ司教しか知らない。

4.江戸
 船の場所を教えた後で、PCの大半が屋敷を出ている時、適当なタイミングで、アダムズは空鬼を召喚、屋敷の使用人を皆殺しにする。アダムズはそのまま江戸に向かう。
 アダムズは江戸屋敷を持っているが、そこには立ち寄らない。また、徳川の息がかかっていそうなところにも、なるべく寄り付かない。

 セルケイラ司教は本当は長崎あたりにいるんだろうけれど、話の都合上、江戸にいることにする。
 セルケイラ司教は、PCらに、以下のようなことを話す。

・アダムズがオカルティストであるという連絡が、本国から来た。
・アダムズはイギリスで発刊された「サセックス草稿」を購入した人物の一人であることも伝えられ た。
・「サセックス草稿」は悪魔復活儀式について書かれた邪教の書である「ネクロノミコン」の翻訳である。
・上記のことを知っていたので、徳川にアダムズの処刑を進言したのだが、果たせなかった。
・キリスト教の力の弱い日本国内ではアダムズに対処し辛いため、何とか国外に出そうとしたが果たせなかった。

 その上で司教は、邪悪の輩であるアダムズを捕らえるため、協力してくれるようにPCたちに要請する。
※「サセックス草稿」について日本人のPCは、〈黒智〉ロールを行うことはできない。
※徳川はあくまでイエズス会を「黙認」しているだけなので、司教らが徳川の協力を得ることはできない。

5.船長クワッケルナック(またはヤン・ヨーステン・ローデンスタイン)
 クワッケルナックは、江戸の城下で静養中である。
 ローデンスタインは、江戸の屋敷に住まわされている。
 どちらか先にPCが訪れたほうが、以下の情報をもたらす。

「私たちは、大平洋上でアレに出会ったんだ。恐ろしい。神よ。言葉にすること自体が冒涜的だ」
「あのイギリス人に災いあれ!」
 などと言って船長(またはローデンスタイン)はPCらに航海日誌を手渡す。

  以下日記

 1598年4月20日
 5隻の船団として出航。
 :
 1600年2月10日
 アダムズ以下、十名が島に上陸。しかし、夜になっても戻らず。
 甲板員のティムは奇怪な叫び声を聞いたという。

 1600年2月11日
 アダムズとタイスが戻る。タイスは重傷を負っており、わけのわからないことを呟く。

 1600年2月14日
 アダムズと言い争う。アダムズの不敬なる発言。タイスの言うことは真実だったのか。以下にタイスの言ったことを記す。

   アダムズらは古びた神殿のような遺跡を発見した。我々恐れを知らない海の男は神殿の地下へと入っていった。そこにはおぞましい存在がいた。おぞましい存在は、乗組員を取って食った。そして、まだ足りないとでも言うように喚きたてた。
 タイスはたまたま崩れてきた石の裏で生きながらえた。気がついたときには、アダムズに担がれて船へと向かっていた。しかし、タイスは聞いたのだ、アダムズとその何者かが会話しているのを。

 1600年2月16日
 ついにアダムズらと争う。多数の死傷者が出る。アダムズを貨物室に閉じ込める。私も傷を負い、航行は困難。

日記終わり

 もう一方の人は、PCが行ってみると、何者かに攫われている、とかでよくね?

6.船
 船にはゾンビ化した船員6人と深きものども、アダムズが待っている。
 アダムズはとにかく、明かされていない秘密は(隙があれば)ベラベラ喋るってことで。
 アダムズは、漂着した折、神殿のある位置を記した海図と「サセックス草稿」を所持していた。彼は取り調べられた折にどちらも失うことを恐れ、海図は船内に隠し、「サセックス草稿」は身に帯びて下船した。「サセックス草稿」は発見されなかったものの、彼を帰国させまいとする徳川の監視は厳しく屋敷を離れることもままならず、リーフデ号の行方も分からなかった。
 そのため、《空鬼の召喚/従属》《深き者どもの召喚/従属》などの呪文を習得しながら、機会を窺っていた。脱出がなされれば、創造したゾンビと召喚した深き者どもで船を動かし、贄となる人間を攫って歩き、神殿のある島へ向かうつもりであった。
 アダムズらが倒されると、海中からクトゥルフの落とし子か何かが出現し、船を海中に引きずり込む(PCらが脱出した後で)。

 イェッセは「徳川のお気に入りであるアダムズを殺してしまってはマズい」とPCが考えた時用のセイフティスイッチなので、「変装させて身替わりにする」試みは基本的に成功する。

 史実的には、アダムズは旗本待遇で徳川政権に仕え、大型船の建造、日蘭貿易のアドバイザーとして活躍。一度も本国に戻ることなく、日本で死去している。

 資料を読み合わせると、最終的にはリーフデ号は江戸湾に回航され、沈没しているらしい(何時、どのような原因で沈没したかについて書かれた資料は今回発見できなかった)。

 
   

■NPCデータ

蒼井雄一郎
STR:08 CON:10 SIZ:16 INT:10 POW:11 DEX:12 APP:10 EDU:11
技能:〈種子島〉75% 〈刀〉40%
装備:種子島、太刀

イェッセ
STR:14 CON:10 SIZ:14 INT:13 POW:13 DEX:09 APP:11 EDU:11
技能:〈大砲〉75% 〈種子島〉55% 〈オランダ語〉25% 〈英語〉30% 〈日本語〉20% 〈操船〉40% 
装備:種子島、短刀

ウィリアム・アダムズ
STR:15 CON:15 SIZ:18 INT:12 POW:18 DEX:11 APP:09 EDU:14
HP:17 MP:40
技能:〈刀〉25% 〈種子島〉35% 〈クトゥルフ神話〉12% 〈オランダ語〉35% 〈英語〉30% 〈ラテン語〉25% 〈日本語〉25% 〈航海術〉80% 〈操船〉75% 
呪文:《クトゥルフとの接触》《クトゥルフのわしづかみ》《精神力吸引》《空鬼の召喚/従属》《深き者どもの召喚/従属》《ゾンビの創造》《手足の萎縮》
装備:太刀、「サセックス草稿」

参考文献
『日本史研究』『日本史年表』(山川出版)
「Wikipedia」
http://www.oogosho400.jp/JP/
http://www.oranda.or.jp/index/japanese/netherlands/nljp2.html
http://pauline.or.jp/modules/time/index.php?page=article&storyid=81
http://www.seibonokishi-sha.or.jp/kishis/kis0208/ki08.htm
その他Wedサイト


プレイレポート

 前回のセッション(Webには未ウプ)を「関ヶ原から半年」で始めてしまったので、その続きだと、さらにその後になってしまうわけで。
 年表で1600年前後を調べていたら、リーフデ号事件という項目があった。オランダ船が漂着した事件だが、その事件の主役とも言うべきウィリアム・アダムズはイギリス人だという。調べるとイギリスでは、リーフデ号事件の数年前にちょうど『サセックス草稿』が刊行されているではないか…。  PCは鉄砲衆、兵法者、僧侶、神人、茶人。雄一郎を使って割と強引に導入。
 アダムズの屋敷と浦賀の距離を調べていなかったので、調べてもらったら、すげー近かった。
 シナリオでは(後づけで)明記してあるが、プレイ時にはアダムズの行動をはっきりは定めていなかったので、トマスを殺したりしながら、様子を見る。
 アダムズが屋敷の人は皆殺し、雄一郎は半殺しにして逃亡した後、PCは江戸には速船を仕立てて向かった。陸路を使ったアダムズより早いはず、ということなので、海辺で深い人たちを召喚したアダムズが乗り込んで来る展開に。  だらだらやっていたとはいえ、気がついたら会場(東京某市の公共施設)が使える時間の限界まで数十分。漏れの感覚ではあと一時間以上はあるはずだったのに(多分タイムリープ)。
 船のマップ(ドラクエ3の攻略本に載ってたやつ使用w)も用意してあったのだが、使用せず。
 ゾンビは省略し、深き人も減らして、なんとか戦闘終了までは時間内に収める。
 PCは若干名一時的狂気に陥るも、全員生存。
 前回は死にかけた落とし子が、ニャルラトテップ接触に成功してしまい、ニャルラトテップが死体回収して終了。だったので、今回も同じようなオチになってしまった。
 〈戦国時代知識〉の低い漏れが作ると、やはし戦国ぽくないなあ。