〜ダブルスのコミュニケーション〜


皆さんこんにちは。今月はダブルスのコミュニケーションについて
私、NTT東京女子チームの高梨が担当させて頂きます。

各ショットの打ち方や心構え等は、前回までのレッスンで紹介しておりますので、皆さんの
個々の技術は向上していることと思います!?
さて、今回は、ダブルスの試合で"楽しく二人で勝つ方法"を私なりに皆さんに伝授したいと
思います。



●何故、ダブルスにおいてコミュニケーションが大切なのか?
一言で言うのは大変難しいですが、皆さんがこのレッスンを読み終わった時、きっと理由が 分かることと思います。ダブルスは二人で力を合わせると、その力が2倍、3倍と大きくなる 事があります。しかしその反対に、ペアの呼吸が合わないと1/2、1/3と減ってしまう事も あります。皆さんのダブルスの力を2倍、3倍にする為には、"技術"にプラスして、パートナー への"思いやりを持ったプレー"が大切です。

●ダブルスのポジショニング
ダブルスは自分の守るコートが少なくて楽で良い、 と思っているそこの貴方!!
それはとんでもない間違いです。コートが広くなる分、相手が必ず1人は前にいる分、 シングルスより多く動くと言っても過言ではありません。また、コートに二人入っている ので、相手のミスを誘うにしてもエースを決めるにしても、相手のわずかな"スキ"を見て 攻める必要があります。そのためには、ペアで適切なポジションを取る事が大切です。
そこでまず、基本的なダブルスのポジションから説明します。ポジションの取り方は各々が 気を付ければできる事です。
hop

<雁行陣編>
(前衛のポジション)
基本的には、自分のパートナーが後ろでボールを打つ時は少し下がって、敵の前衛が ポーチで攻めてきても対応できる準備をします。そして敵の前衛の動きを良く観察します。 敵の前衛が攻めてこないと分かった時(視線がボールから離れたりしたら)今度は自分が 攻める準備をする為にネットへ詰めます(図1)。その時心掛けることは、パートナーが 打ったコースに合わせてポジショニングすることです。ボールがバウンドする正面に立ち、 ストロークのコースをふさぎます(図2)。

ポジション1 。。 ポジション2
図.1
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図.2

(後衛の役割)
ダブルスは前衛がポイントゲッター、後衛がゲームメーカーという役割分担があります。 後衛は、前衛がポイントしやすいようにうまく配球し、ゲームを組み立てて行きます。 後衛は言わば"縁の下の力持ち"です。
また、常に敵の二人と、パートナーの立っている位置を見て、敵にポーチされた時の カバーや、パートナーがポーチに出た時のストレートボール等に気を付けます。
前衛、後衛、それぞれの役割に徹し、お互いをカバーすることで攻撃と守備がうまく噛み合い、 強いダブルスのペアとなります。

<平行陣編>
平行陣では雁行陣よりもボールが速く行き来しますが、考え方は同じです。 クロスラリーを基本と考え、ボールを持っていない人はボールを打つ人よりも前で構え、 チャンスを待ちます。
しかし、チャンスでもないのにストレートを狙ったとしたら、どうなるか分かりますか?
@パートナーが戸惑う
(敵がカウンターを打ってきた時、最低一人はその守りの準備に遅れる)
A隙ができる
(今まで自分が後ろでボレーしていたものを、今度はストレートへ打って前に 出てしまうと、パートナーと平行に並んでしまう恐れがある)
パートナー同士、同じ位置に居たのでは隙が沢山できてしまうので注意しましょう。
また、ボールの行き来が速いと言う事は、雁行陣のように動き回っていてはボールに追いつきません。 ベストポジションに体が間に合わなくても、相手が打つ時は必ず一度止まりましょう。

皆さん、イメージはできましたでしょうか?このポジショニングができるようになれば、 step up間違いなしです!


●技術面でのコミュニケーション
例えば、後ろのプレーヤーが何も考えず一人でエースを取りに行くのと、 ペアの人に決めてもらうために配球するのとでは、どちらがポイントを取る確率(あるいは失点するリスク) が高いと思いますか?折角2人でコートに立っていても、個人プレーの連発ではダブルスをしている意味が ありませんよね。
ダブルスにおいては、そのペア独自の戦術が大きな武器になります。
試合の前に、お互いのプレースタイルを認識して自分達の得点パターンを作っておくことが重要になります。
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@見抜く!!
まず、自分のパートナーは"何が得意で何が苦手か"を知りましょう。 これは試合を行う上でとても重要な事です。これにより、自分の苦手な所をパートナーに補ってもらい、 得意な所でパートナーをカバーする事ができます。

Aやってみる!!
お互いのプレーを認識したら、一番確率の高いポイントの取り方を二人でイメージしましょう。 イメージが膨らんだ所で、次は実戦練習です。二人で試行錯誤しながら、自分達のパターンを確立して 行きましょう。こうするうちに、パートナーとのコンビネーションが徐々に合ってきます。
《注意》双方が違う事を考えている時もありますので、二人で相談し合ってイメージを膨らませる事が 大切です。

B探す!!
ここからは、試合中のポイントです。
試合中は、敵のショットにも目を光らせなければいけません。いくら自分達がGOODショットを打った ところで、敵の得意なコースでは攻撃も半減してしまいます。相手の苦手な所に自分達の得意なショットを ぶつけるようにしましょう。

C騙す!!
ダブルスに限らず、テニスでは良く"逆をつく"事があります。相手が予測していない方へボールを打つと とても効果的です。その為には、ベストポジションでボールを打つ事が必要です。体が開いていたり、 足が追いついていないと、打つコースを隠す事は難しいのです。
また、ポーチに出ると見せかけてストレートをケアしたり、"フェイント"をかける事で相手を錯乱させる 事もできます。フェイントは足を動かさなくても、肩を動かすだけで相手には動いたと分かります。

ポーチ

お互いのプレースタイルを認識して、戦術を考える事の大切さが分かりましたか?
これでまた 1 step upです!


●精神面でのコミュニケーション
ダブルスの良い所は自分一人で戦わなくて良いことです。 コートに味方がいる事をいつも忘れてはいけません。そして常にパートナーに対して、自分が味方 である事をアピールしてあげましょう。
GOODショットの時はパートナーを誉めて、逆にNO GOODの時は「次は私に任せて」など、 軽く声をかけてあげましょう。
ポイントを取られた時や試合の流れが敵側にある時ほど、コミュニケーションが大切です。 お互いが焦っていても良い結果は生まれません。できるだけ間を取り、気持ちをリラックスさせて から次のポイントに入るよう心掛けましょう。
コミュニケーションを取ることで気持ちを盛り上げたり、重い雰囲気を取り除いたりすることも パートナーの重要な役目です。そして、いかなる状況下でも勝っている気持ちでプレーしましょう。 たとえ相手にリードされていても気持ちの上では勝っているというアピールが、相手にプレッシャーを 与える事になります。自分がエラーをしたとしても、落ち込んだ表情やイライラしている感情を出さずに、 冷静に対処して下さい。そうすれば相手は貴方の弱点に気付きにくくなります。
Jump

yeah


●試合当日のアドバイス
試合当日にすべき最初のことは、二人の精神的準備です。
適切な道具を揃え、少なくとも試合の40分前には会場に到着するよう心がけて下さい。こうすることで 充分なストレッチと話し合いの時間が持てます。パートナーとストレッチをしている間、前回の試合 のことを話し合って下さい(たとえそれが勝った試合でも、負けた試合でも)。ペアとしてうまく いったことは何で、また反省すべきことは何であったのか?こうした会話により精神的な準備が 整います。またこれにより、二人の間のコミュニケーションの扉が開かれます。実はこの コミュニケーションが試合中に重要な役割を果たすことになります。
試合開始直後の2・3ゲームは、リターンやサービスを強打しないようにする事が大切です。
相手の出方を探りながら、確実なプレーを心掛けましょう。そうする事により"気が付いたら1−4" と言うことはなくなってきます。
普段の練習では、時にはお互いに厳しく言い合うこともあると思いますが、試合中はパートナーを 注意する時も、できるだけソフトに話してあげましょう。厳しい指摘でパートナーを消極的にして しまうよりも、もう一度トライする気にさせるアドバイスとでは雲泥の差があります。自分達の ムードを良くして、相手チームを呑み込んでしまうのも1つの作戦です。
軌道に乗ってきたら、あとは"楽しく、いやらしく"を忘れずに、思い切りプレーをしましょう。 そうすることによって、自分達の全力を相手にぶつけることができます。試合の勝ち負けは確かに 大切ですが、それ以前に自分達が試合でどれだけの力を発揮できたかによって、次のSTEP UP に繋がるのです。結果は後から付いてくるものです。


●最後に
私のレッスンはいかがでしたでしょうか。コミュニケーションの大切さが少しは分かって頂けましたか? 今まで連載してきた"今月のレッスン"からヒントを得て、打てなかったショットが打てるようになったり、 ショットに磨きがかかってきた方、沢山いらっしゃると思います。できなかった事が上手くいくと本当に 嬉しいですよね。それと同じで、ダブルスも二人でポイントが取れた時、しかも自分達の作戦が通用した 時は、今まで以上にテニスが楽しくなると思います。
また、このようなページを作る機会がありましたら、より高度な戦略もご紹介したいと思いますので、 それまでに皆さん、今より更にテニスを好きになっていて下さいね。
私も人生の半分以上はテニスと共に過してきていますが、テニスが大好きです。これからもこの気持ち を忘れずに、テニスを続けて行きたいと思っています!!
長々と書いてしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。


NTT TOKYO TENNIS TEAM