数あるズームレンズの中でも、これほどまでに多くの人々に受け入れられたズームレンズがあっただろうか?。当時を振り返ってみると、報道関係のカメラマンのほとんどがこのAF Zoom-Nikkor ED 80-200mm F2.8様とAF
Zoom-Nikkor 35-75mm F2.8様を、2台のボディそれぞれに装着して使用していたのではないかと思われるほどの人気の高さであったと記憶している。
少なくとも、私の周辺のニコン使いは必ずこのレンズを所有していたし、異口同音に褒めちぎっていた。
私自身もこの御神機様が登場する以前は、執拗に単体レンズのシャープネスにこだわって、多少の不便さは我慢して撮影に挑んでいた。しかし、この御神機様を試用して、開放値F2.8の明るさ、抜群のシャープネスを思い知り、間髪いれずに購入したのである。ズームレンズとは思えない優れた描写を見せ付けられて、カルチャーショッククラスの衝撃を受けたのだ。
もちろん、ボケに関しては決して褒められたものではないかもしれないが、実用上問題があると言うほどではないし、ズームレンズとしては合格点を与えられてもよいのではないかと思っている。
ただし、まったく不満がなかったわけではない。
[金属製のフードHN-28を装着した御神機様]
フードを装着すると、よりボディーが大きくなったような気がして少々不愉快であった。もちろん、現在の主流である花形フードではない。 |
まずは、大きくて重たいことに閉口し、慣れるまでに時間がかかったことを、今でも昨日のことのように憶えている。この御神機様の為に新しいカメラバックを購入したほどである。当時は、これ以降製造されるレンズが巨大化、高重量化の道を歩んでいくなどとは思ってもいなかったので、「次回はもうちょっと小さく作ってくれるといいなぁ」なんて考えていたのである。今となっては実に馬鹿げた妄想に過ぎなかったわけだが・・・。
|
オートフォーカスに関しても、かなりの不満を持っていた。合焦までのスピードは遅く、モーター音もうるさかった。そして、オートフォーカスが苦手とする被写体を撮影している時は悲惨で、合焦しなかった時にマニュアルフォーカスへと切り替える操作の大変さといったらなかったのである。
切り替え作業は、左写真上部の銀色のボタンを押して全体を回転させることによって完了するのだが、撮影途中でこの作業を行うのは現実的ではなく、結果的にはオートフォーカスで撮影したことはほとんどなかった。
しかし、マニュアルフォーカスで撮影していても不満が残る点があった。それは、フォーカスリングに少々遊びがあるので、微妙なピント合わせをしている時にナーバスな気分にさせられることが多かったからだ。
もちろん、これらのほとんどはオートフォーカスへの過渡期だからこそ起こり得た問題でしかないのかもしれない。AF-Sが主流となってきた昨今では思い出話のひとつに過ぎないのだろう。
余談ではあるが、F5などに代表されるボディ側での絞り制御は、不具合が予想されるので絞りリングで操作するのが無難だろう。
さて、つらつらと書いて来たが、この御神機様と昨今のズームレンズには決定的な違いがある。それは、ズーミングが「直進式」という点だろう。「直進式」は、その操作性の良さから人気が高く、現在でもこの御神機様を使い続けている人は少なくない。ただし、既に修理部品がない場合が多く、泣く泣く新しいタイプの80mm〜200mmのレンズに乗り換えるケースも少なくないようである。
何を隠そう、私も「直進式」のファンであり、落下事故という大惨事さえなかったら、今でも使い続けていたのかもしれない。もちろん、今では療養生活を終え、完全に健康を取り戻しておられるわけだが、長年の酷使に耐えていただいたお礼として、大切にお祭りし、楽隠居していただいている。
ケチな私が使わないレンズを所有しているのはとても稀なことではあるが、個人的には「ズーム元年」を切り開いてくれたという意識もあり、特に思い入れの強い御神機様なのだ。一般的に見てもニコンの歴史に残る名機のひとつであると言い切っても過言ではないと思っているので、これからも大切に拝み続けることになるだろう。
えっ?
拝むだけじゃなくて使えってか?
いやぁ〜、やっぱり落としたレンズは使う気にはなれなくて・・・(^^;,。
性能 |
焦点距離 |
80mm〜200mm |
最大口径比 |
1:2.8 |
レンズ構成 |
11群16枚 |
画角 |
30°10'〜12°20' |
焦点距離目盛 |
80,105,135,200 |
撮影距離目盛 |
∞〜1.8m,6ft(併記)
マクロ撮影の1.8m〜1.5mはM表示 |
ズーミング |
直進式(マニュアルフォーカス時一操作方式) |
ピント合わせ |
回転式(マニュアルフォーカス時一操作方式) |
マクロ方式 |
全ズーム領域にてマクロ撮影可能(最大撮影倍率1:5.9) |
絞り目盛 |
2.8〜22、ファインダー内直読用絞り目盛併記 |
最小絞りロック |
ロックボタンによりf/22にロック可能 |
赤外指標 |
80mm |
絞り方式 |
自動絞り |
測光方式 |
CPU・AI方式のカメラボディでは開放測光、従来方式のカメラボディでは絞り込み測光 |
マウント |
ニコンFマウント |
アタッチメントサイズ |
77mm(P=0.75mm) |
大きさ |
約85.5mm(最大径)×176.5mm(長さ:バヨネット基準面からレンズ先端まで)、全長約184.5mm |
重量 |
約1200g |
(2002/3/31 大狸ヒロ) |