○フィルムの限界を超えた解像力
歴代この手のレンズは、その時代の最高を誇ってきた。
このレンズも例外ではない。
こと、解像力に関してはいまだに第一級である。
筆者は、第一世代(AiNikkor400mmF3.5S)と併用しているのだが、解像力は、確実に進歩している。また、後継のAF-INikkor600mmF4D(借り物)と比較しても引けをとらない(というより凌駕しているように感じたのは身びいきかな?)
注)上記の比較はあくまで筆者の経験および主観であり、レンズ特性、個体差、諸事情などは加味していない。
「解像力の測定は、解像力チャートを撮影し、現像後そのフィルムを顕微鏡で観察し・・・・」(深堀和良 レンズテスト 朝日ソノラマ 2001)
残念ながら上記のような測定は筆者にはできないが、撮影したポジを15倍ルーペで評価している。
普段は、撮影したポジを10倍ルーペでピントのチェックをしている。
時たま、猛烈にピントのよいカットがあった時、15倍ルーペに取り替える。
15倍ルーペをご存知であろうか?
ISO100のポジフィルムでは、粒子が見え始めてしまう。
そんな中、ベルビアクラスで撮った本当にピントがよいカットは、細部まで(私の場合は、羽毛の1本1本の中の縮れまで)写し取っているのである。
こんな芸当ができるのは、先の二本を含め、数ある筆者の望遠レンズの中でも(USMも含む)、このレンズだけである。
注)筆者は、SWM、HSM、USM-ISの望遠レンズはまだ使ったこと無い。
表題に掲げた「フィルムの限界を超えた解像力」という表現も、あながち”誇大”でもないのである。
解像力だけで、レンズ性能は語れないがシャープなレンズ好きなニコン様信者には、十分ではなかろうか。
トリミング無し
Nikon F3 AiNikkor600mmF4S 1/30 開放 RDP-3
中央部を拡大したもの。
WEBではここまでが限界だが、原版のポジでは、羽毛の1本1本が分離している。
○被写界深度と巨大ボケ
さて上記の結果は、開放〜f5.6の撮影である。
それ以上絞ると、このレンズを持つ意味がなくなるので、使ったことが無い(今、これを書いていて気が付いた!)
先に述べたようにイメージサークルが大きいため、開放でも絞っても、画質は然程変わらない。
絞りの役割は主に被写界深度の調節ということになる(もちろん露出調節もあるが・・・)
紙のように薄い被写界深度とよく言われるが、開放で最短撮影距離でも、2〜3ミリはあるようである。
(被写界深度表や許容錯乱円の直径を1/30mmとする計算式にあてはめると、2〜3センチの解となるが、この手のレンズではあまり充てにならないようである。)
理論上はf5.6に絞ると、多少増えるはずだが、どんなものか?
実際、撮っている時は安全パイとして絞るが、そのような良い状況はなかなか得られない。
シャープなレンズの常として、二線ボケの傾向がある。
といっても顕著な訳ではなく、バックにコントラストの強い線(空と逆光の枝とか、順光で光ってしまった枝とか)が入ると“うるさいかな”思うくらいである。
通常は少しでも被写体の後があけば、大きなボケですべて隠してくれる。(これが魅力なんだよね!)
二線ボケの例
Nikon F3 AiNikkor600mmF4S 1/60 開放 RDP-3
○手ブレと被写体ブレ
よく、1/焦点距離が基準シャッター速度といわれるが、これは手持ちの場合。
この大玉、手持ちがしたいって人がいれば(筆者はいやだ!)話は別だが、頑丈な三脚を使うことを前提とするので上記の法則は当てはまらない。
また、そんな良い(光の豊富な)場面はまれであるから、シャッター速度とはいつも格闘である。
さて、3脚に乗せてさえすれば、ブレは安心、“どんなスローシャッターでもOKさ!”というのはちょっと早合点。
足場をしっかりさせて、ケーブルレリーズを使用・・・手ぶれ側はいろいろ工夫できる。
相手が静物で在らば良いのであるが、こと動くものである場合、被写体の動きにも注意が必要になる。
画角が狭まる分、ちょっとした動きでも被写体ブレにつながるのは、手ぶれと共通である。
画質が良い分その辺が目立ちやすいので、注意が必要である。
尚、手ブレに関しては、ニコン様らしいしっかりした造り(銅鏡、三脚座)であるため万全である。(筆者はこれでずいぶん助けられているはず!) ◇ まとめ ◇ スーパーレンズである。
お値段もスーパー。
このレンズを新型に代替する意味はあるのだろうか(今のところ筆者にAFは無縁)と考えたところ、答えは・・・
「テレコンバーター使用を前提とした過剰品質・・・云々」(佐藤治夫氏 ニッコール千夜一夜物語)
とのこと。
ニコン様信者はこういう言葉に弱いんだよね。
でも、テレコンで、レンズ構成枚数が増えるということは・・・
どこかのメーカーのようにいたずらに構成枚数を増やすようなことは考えて欲しくない。
で、故星野道夫氏など著名な写真家たちが愛用していたこのレンズ、
つい最近、中古店でS3-2000より求めやすい価格で並んでいた。
筆者のずいぶん前に、中古店で新品同様で手に入れたのだが、
もし、筆者が「買って後悔はなかった?」と聞かれたら、その答えは・・・・
「もう十分、元を採りました(^^)」
おしまい。
「ready to …」
(C)ガリレオ
Nikon F3 AiNikkor600mmF4S 1/60 開放 RVP
参考文献
写真レンズの基礎と発展 朝日ソノラマ(1995)
レンズテスト 朝日ソノラマ(2001)
季刊クラッシクカメラ 双葉社(2000)
新・ニコンの世界 日本光学工業株式会社(1979)
(2002/3/30 ガリレオ) |