■ 秘宝堂 Nikon F-601M Page 1

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 1990年9月、F-601(定価8万円)が発売された。キャッチフレーズは「良く効く光のスパイス付き」。そう、ニコンではF-401シリ−ズに次ぐ、スピードライト内蔵AF一眼レフだったのだ。ペンタプリズムの上からちらりと表情を覗かせるスピードライトは、「いい作品が撮れるかも」と思わせるには十分な風格を持ち合わせ、しかも機能満載の中級機。瞬く間にF-601はベストセラーカメラとなったのだ。

 そのF-601と同時に、ひっそりと発売されたのがF-601M(定価6万5千円)だ。広告でも隅の方にひっそりと、そして小さく「同時発売 F-601M」と紹介されているのみの扱いだった。F-601に比べるとなで肩で、どことなく頼り無さ気にも見えた。

 F-601Mは簡単に言えば、F-601から 1.AF機能と 2.スピードライトと 3.スポット測光を省略したMF専用機だった。その他のスペックはF-601と全く同じ。当時はまだ「AF vs MF論争」が影を潜めており、「AFなんて使えるか!」と言った漢(おとこ)のためのカメラとして登場した(ものと思われる)カメラであった。

 しかし...生まれながらにして「AFレンズしか使えない」というハンデを背負っていたのだ。「AFなんて使えるか!」と言った漢はまだ当然、AFレンズなど持つはずもなく大コケしてしまったのである。ちなみに、同じようなコンセプトのカメラとしてオリンパスOM-101もあったが、こちらも然り。

 F-601は日本での販売終了後も、タイに製産拠点を移してアジア向けに販売が続けられていた程の人気にも関わらず、兄弟機のF-601Mは知らぬ間に、しかもF-601の国内販売中にフェードアウトし、「カルトカメラ」となってしまったのだ。一縷(いちる)の望みとして「絶版後に人気が出て、価格高騰」という「28&35Ti現象」も期待されたが、そのような事もないまま、中古相場でも激安価格で取り引きされている。

 F-601Mをオススメしたいのは、「写真は自然光!スピードライトは使わず、大口径レンズで勝負」といった作品派の人ではないだろうか。事実、ピントのヤマもつかみやすく、露出計もバ−表示で操作系も使いやすい。

 小型軽量なので、スナップ撮影にはもってこいだ。しかし、私はF-601Mを入手後、一度も撮影に連れ出していない。いつも持ち歩いていたのはF-601QD(クォーツデート、+5千円)の方だった。仕事柄、常にカメラの携帯が理想的だが、夜間に撮影する機会もあるだろうからスピードライトは欠かせない。よって、通勤にはF601QD+35-70といった、メーカー推奨セットで使用していたのだ。しかし、F-601M+35/2やF-601M+28/2.8など軽量で、ちょっとしたお散歩カメラにはもってこいだと思う。

 「今度の休みはこの組み合わせで、近所の町並みでも撮影に出かけようかな」とも、思わせる組み合わせだ。

(2001/4/19 いずみ)

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