■ 秘宝堂 [フィルムマガジン(カセット)] Page 3/3

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なにこれ?

 このような素晴らしいアクセサリーだが、F3様にはついに用意されることはなかった。なぜなら、カラーフィルムが主流となり、このマガジンではラボに出せないのと、フィルムの値段も相対的に下がり、黒白フィルムにしても、いちいち長尺フィルムから詰め替える人も減ってしまったからだろう。また、マガジンの開閉には裏蓋の開閉操作と連動するのが最も合理的。一方、裏蓋の開閉機構をボディ下面に持っていくと、モータードライブを装着した際に構造がややこしくなってしまう。設計の時点で、マガジンを使用可能にするかどうか激しい議論が交わされたことだろう(かな?)。結局F3様ではそれを避けて、ボディ上部、巻き戻しノブと共用することに。この時点で、事実上マガジンの使用可能性は絶たれてしまったのだ

 しかし、お星様を写す時等はとても重宝したアクセサリーだったので残念。特殊なフィルムは長尺のみでしか供給されなかったし、36枚の長さにはなっているものの、パトローネに入っていなかったX線用フィルム(これが安かった!)などを使う場合の必需品だったのだ。もっとも電子シャッターとなられたF3様は、あまりお星様向けとは言えないお体ではあるが。

 さて、写真に見られる道具は、ニコン様製ではないが、そのような時代の遺産で、「日中フィルムローダー」と呼ばれる類のもの。しかしまだこちらは現在でも何社かから似たような機能のものが供給されている。ここでは特にこのメーカーのを紹介したい。ニコン様の為の素晴らしい機能がついているのだ。

装填準備完了!

 「日中フィルムローダー」とはその名の通り、暗室、ダークバッグ無しで、長尺フィルムを小分けしてパトローネに装填する為の道具だ。もちろん、最初に長尺フィルムをローダーに装填する際は暗室、ダークバッグが必要だが、その後は明るいところで操作でき、巻き込むフィルム枚数もチェックしてくれる。個人で長尺フィルムを使う場合の必需品。

 長尺フィルムが装填されたローダーの蓋を開けると、フィルムの先端が見えている。もちろん、パトローネのスプールに巻き付ける為にはもう少し出さねばならないだろう。この部分は当然ながら感光していて、撮影には使えない。いかにこの部分を短くして有効フィルム長を伸ばすかが腕のみせどころだ。というか、短くしておかないと、最後の一コマで失敗する羽目になる。

 巻き込む枚数には細心の注意が要求された。なぜなら、100フィートの長尺フィルムをいかに均等に分けるかというのがとても重要だったからだ。別に、最後の小分け分が15枚撮りとか半端になっても構わないじゃないか、と言われればそうなのだが、パトローネにいちいち何枚撮り、なんて印付ける必要ないし、全部同じ長さの方が撮影時に余計な気を遣わなくていい。それに気持ちがいいじゃない、ねぇ(血液型A型)。

 そう言えば、長尺フィルムを使おう、なんて人間はたいていフィルムに対してとてもケチである。カメラにフィルムを装填する際、ベロの感光してしまう部分を短くして、いかに撮影枚数をかせげるか、なんてのも競われた。中にはフィルムの装填は基本的にダークバックの中で行う、なんてのもいたくらいだ。

装填終了!

 しかし、実はもっと重要な理由があったのだ。当時、天体写真用(だけではなかったですけど)の特殊フィルムを100フィート買っても、有効期限内に全部1人で使い切るのは無理であった。これは他のアマチュアも同じ事。そう、商売が成立するのだ。親しい写真屋から使い終わった空のパトローネを貰ってきて、しこしこ詰めては1本いくら、という具合。もちろん、販売価格には若干利益を載せるので、自分で使う分はもちろん只。さらに若干の機材購入費も捻出できたのだ。だから36枚なら36枚で、最低36枚撮れないと怒られるし、かと言って、余計にするのも勿体なかったのだ。

 フィルム一コマは、コマ間も入れるとおよそ38mm幅。前後の無駄になる部分を計算に入れて40枚分の長さ、すなわち1520mmにしておけば、まず36枚は撮影可能だ。で、100フィートは約30480mm。つまり丁度20本採れるって訳。なんて具合が良いんだろう。案外、36枚という数は逆にこの長尺フィルムの長さから由来したのかも知れない。

 パトローネの再使用(又は新品の空パトローネ)の場合、スプールにフィルムを固定し、パトローネを組み立てた後、所定の位置にぴったり納め蓋を閉めれば装填準備完了。必要な枚数を巻き込んだら、蓋を開け、はさみで切ってお終い。

 ところがF/F2様マガジンの場合、そう簡単にはいかない。フィルムを装填する際には口を開けておかねばならないが、そのままでは装填が終わっても蓋を開けられない。マガジンを取り出すには暗室かダークバッグが必要になってしまうのだ。

NiKON?

 しかし、それを解決したのがこのアクセサリーで、通常のパーツと交換して取り付ける。フィルム装填が終了したら、F/F2様の裏蓋開閉キーを回すのと同じ要領で、このツマミをまわすと、中のフィルムマガジンが密閉されるのだ!。なんとニコン様思いの会社なんだろう、と思わず感心してしまう。

 私の知る限り、このように、ニコン様フィルムマガジンに対応したフィルムローダーはこの1種類だけ。

 ちなみにこのパーツ上の名称だが、ちゃんと「Nikon」になって・・・いないぞ!。よーく見ると「NiKON」となっているのがご愛敬。聞いたところでは商標権との兼ね合いだそうな。まぁ、こんなパーツと実際のニコンF様を間違える事はまずないであろうから、そのままでもいいとは思うのだが・・・。

まだ買えますよぉ〜っ

 ちなみに、このフィルムローダーも、NiKON・F/F2アダプターも現行商品。特にアダプターは、作ってはみたものの、あまり売れるものではなかったようだ。しかしいつまでもあると思ってはならないだろう。ニコン様のAF50mm/1.8Sみたいなもので、いつまでもありそうでいて、いつ在庫払底になっても不思議ではない商品だ。

 特にこの記事が発表された後は、当然、購入希望者が殺到するであろうから、在庫払底となるのは時間の問題だ。急がねばならんな。特にF/F2アダプターみたいに、正体不明のアクセサリーは、一度在庫払底となったが最後、入手はとても困難になるだろう。そうだ、私も、もう1セット買っておこう。

 ニコン様マガジン、特にF2様用は中古市場(お店の名前ではない)では割と簡単に見つかるアイテムだ。運が良いと、カメラ屋で埃を被っている新品を買える可能性もまだあるだろう。最終定価は2500円だった。

 そういえば、私も長らく使ってない。白黒の現像くらいは再開しようと思い続けているのだが、なかなか。長尺フィルムを買って、マガジンに詰め替え、モータードライブ付きF様に装填。詰めてしまえば見えないマガジンなのに、外観は縮緬塗装が施されている。

 う〜ん、なんかとってもお洒落だなぁ (^^)。

(2001/5/16 フランツ佐伯)

 

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