妖精との楽しい過ごし方      

49. 妖精との楽しい過ごし方 030303


妖精は通常、森や林の空地に生息する。森の木陰や泉、苔むす沼地、蜘蛛の巣のはった小屋、月夜の湖の岸辺、花畑や野原に咲く花の傍ら、インターネットのネットバトル等で見かけることができる。キノコや花で作った家に棲むこともある。

妖精の食物ははっきりしないが、一説には森のエナジー、小麦、リンゴ、ごぼう、なすび、きゅうり、白菜、黒胡麻、抹茶、小豆、珈琲、柚子、桜、青柳ういろう、善良な市民の生き血を好んで食すと言われている。

ヒトとの会話は可能だが、普通に使われている日本語とは微妙に異なった使用をする。また、その主張を通常平均1日当たり230回程度変更するため、その発言には責任が伴わないとされている。妖精同士とのコミュニケーションにはかん高い羽音を使う。普通の人間には理解できない。

妖精とめぐり合うと、少しの幸運と多くの不運に襲われる。妖精は、不思議な力をもっていて助けに来てくれたり、あなたが誰かを愛したとき応援してくれたりする。しかし、助けに来てくれるだけで実際は役に立たない上に、油に火を注いだり、泥舟の舟底に穴をあけたり、のれんに腕押ししたりするだけである。他にも、馬に仏教のお祈りを捧げたり、豚に真珠を与えたりする。さらに糠に釘を入れると漬物の色がよくなるだけなので注意が必要である。まれにカチカチ言ったり、ボウボウ言ったり、柿の木の上からおにぎりを投げつけたりする。いずれにしても役に立たない。かえって危険である。応援も物陰からこっそりエールを送るだけで実効性は無い。不思議な力をもっているとされているが、どのように不思議なのか誰も見た人がいない。見たと主張する人はいつのまにか皆の前から姿を消す。

妖精はしばしば人の話を聴かない。自分のことを喋るので精一杯である。こちらの言葉を理解させるには井戸まで連れていって水を掛けながら妖精の手のひらに指で文字を繰り返し書く必要があると言われている。うぉーたー! 通常はそこまでの手間をかけるわけにはいかないので諦めが肝心である。人の話を聴かないので、妖精は聞かれたことにも滅多に答えない。妖精が質問に答えたとしてもそれは自分についての話の導入部である。相手の人格は無視であるので、ちゃんとした会話がなされることを決して期待してはならない。同じ理由で、妖精からの質問に答えてもお礼が返ってくることを決して期待してはいけない。しかし質問を無視すると黄色い粉をかけられて呪われるので注意すること。滅多に無いことだが、妖精が正当な主張をすることがある。しかし、これを信じると痛い目に会うので覚悟すること。

部屋をきれいに整え、シクラメンやさくら草などの花の鉢植えとミネラル・ウォーターを入れたコップを窓辺に置いて夜明け前に一気に飲み干すと妖精避けのおまじないになるとの言い伝えがある。試した人の経験によると、効き目があるかないかよく判らなかったが、少なくとも朝のお通じにはいいとの喜びの声が続々と寄せられています。あなたもぜひ!

妖精は直接名指しされることをいやがる。そのため掲示板ではしばしば名前を変える。意味なく名前を変えるのをごまかすために架空の(脳内)人格を捏造したりする。しつこく追求したりすると(脳内)旅行に出かけたり、パソコンが(脳内)故障したりする。なるべく直接名前を呼ばず、機嫌をとり、ほめるような良い名前か、あるいは間接的な名称で呼ぶこと。

人間と思うから腹がたつのであって、森の妖精さんがなにか喋っているなと思えば腹も立たない。何事もあきらめが肝心である。

妖精を呼び寄せるのは簡単だが、妖精にさよならを言う方法はまだ発見されていない。

#この雑文はフィクションであり、実在の人物・事件・団体等とは関係ありません。実在の森の妖精さんとも関係ありません。もし文中に実在の人物・事件・団体・森の妖精さん・青柳ういろうと類似するものが存在しても、それは偶然であります。


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