リハビリャー      

23. リハビリイもしくはカツカレーをめぐる冒険 021111


今日の昼飯はカレーライスであった。単に本日の定食が好みでなかったためであり、特に私がカレー教徒というわけではない。周りに飲食店が少ないため、しぶしぶ会社が作った食堂なのでメニューが乏しい。カレーについても種類を選べるわけではなく、カレーを選ぶと本日は否応無しに一口カツカレーであった。それはともあれ、なにぶんにもカレーにはそんなに詳しくないので、識者の意見を問いたいところであるのだが、驚いたことに一口カツカレーに載せてあるカツは一口カツが二つであった。一口カツが二つ載った一口カツカレー。繰り返します。一口カツが二つ載った一口カツカレー。これは正しいあり方なのであろうか。これでは二口カツカレーではないか。あくまでも一口カツカレーと称するのであるならば、二つの一口カツを一口で食べなければいけないではないか。この二つのカツは、彼の真実の名前に従い一口で食べるべきか、それとも二口で食べるべきか。私はカレーを前にして悩む。一口かな二口かな。一口かな二口かな。一口かな二口かな。一口二口は良いけれど、三つ醜い浮世の鬼を。四つ弱みは見せないで。五つ何時でも禿がある。六つ無理矢理塞ぎたい。七つナナカマドの木が燃え尽きるとき。八つやっぱりよかちんちん。九つ 高野の弘法さん。十 尊いお方とやるときは 羽織袴で。ハッと我に返るとなんだか私のテーブルの周りに誰もいない。みんな私をちらちらと見ている。

気を取り直してカレーを食べて見る。味はいつものカレーである。その時私の灰色の脳細胞に啓示がひらめいた。一口カツカレーというならば、一皿のカレー丸ごと一口で食する必然性があるのではないだろうか。すなわち(一口カツ)カレー ではなく、一口(カツカレー)ということであろうか。これで一口カツカレーに一口カツが二つ載っている謎が解明できたのではなかろうか。

しかし、ここでひとつの疑問が生じる。ひとつどころではないとおっしゃりたい方がいらっしゃるかとも存じ上げるが、ここはだまらっしゃい。すなわち一皿のカレーを一口で食べることができようか。いやできない(反語)例外としてウガンダを除く。さて困った。この目の前に鎮座しているカレーを一口で食べるべきかそれとも一口で食べることを諦めて敗北感に打ちひしがれながら食堂を去るか。一口かな去るかな。一口かな去るかな。一口かな去るかな。一口かな去るかな。一口二口は良いけれど、三つ醜い浮世の鬼を。四つ弱みは見せないで。五つ何時でも禿がある。六つ無理矢理塞ぎたい。七つナナカマドの木が燃え尽きるとき。八つやっぱりよかちんちん。九つ 高野の弘法さん。十 尊いお方とやるときは 羽織袴で。ハッと我に返るとなんだか私のテーブルの周りに誰もいない。みんな私をちらちらと見ている。

とここまで考えて、さっき一口味見したことを思い出した。しょうがない一口食べてしまった以上、一口カツカレーをこれ以上食べるわけにはいかないではないか。それでは一口カツカレーではなく、二口もしくはそれ以上口カツカレーとなってしまい、整合性に欠くことになる。ここで「二口もしくはそれ以上口カツカレー」を正規表現で表してみたらどうかと考えたが、よくわからないので割愛する。「二口もしくはそれ以上口」を平たく言うと、一口かな二口かな三口かな四口かな…もういいですか、そうですか。

これ以上食するのは人の道に反すると論理的に証明された私は恨めしげに一口カツが二切れ載っているところの一口食したカレーを眺めていた。ふと一筋の光明が私の目の前に現れる。メニューに書いてあった「一口カツカレー」は実は「横棒□カツカレ横棒」なのではないか。すると2文字目の漢字の「くち」と思われたものは「四角の空欄」であり、これを埋めよという私への挑戦状ではないのか。この暗号を解読したものには永遠の命を与えよう。いやだ機械の身体なんかいらないやい。この謎の文章「−□カツカレ−」は左右対称であるからして、四角の中には当然「レ」が入るであろう。−レカツカレ− 謎の言葉「レカツカレ」。この暗号を巡り海を巡り山を渡り密林の奥地に分け入り謎の秘密結社と渡り合い魔の邪教教団に潜入し幾つもの冒険と恋を経験した。そして判明した「レカツカレ」の秘密とは!

というところで昼休みが終了してしまった。私は一口だけ食べた一口カツカレーもしくはーレカツカレーを残し食堂から去るのであった。


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