国連決議


2000年 第55回国連総会 

「核兵器の全面的廃絶への道程」決議(日本決議)

 国連総会は、

 1994年12月15日の決議49/75H、1995年12月12日の決議50/70C、1996年12月10日の決議51/45G、1997年12月9日の決議52/38K、1998年12月4日の決議53/77U、1999年12月1日の決議54/54Dを想起し、

 国際の平和及び安全の増進と、核軍縮の促進とは相互に補完し強化し合うことを認識し、

 核兵器不拡散条約(NPT)が、国際核不拡散体制の礎として、また、核軍縮を追求する上で必要不可欠な基盤として決定的に重要であることを再確認し、

 核兵器国による一方的或いは交渉を通じた核兵器削減の進展、及び国際社会による核軍縮及び不拡散に向けた努力を想起し、

 核軍縮の更なる進展は、国際の平和と安全を確保し、国際核不拡散体制を強化することに資するとの確信を再確認し、

 核兵器不拡散のための世界的な体制を強化しようとする国際的努力への挑戦である先般の核実験及び地域情勢に留意し、

 「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」の報告書についての加盟国の種々の見解を念頭に置きつつ、右報告書に留意し、

 NPT第6条の下で、全締約国が約束している核軍縮につながるような核兵器国による全面的核廃絶に関する明確な約束を含んだ、2000年NPT運用検討会議における最終文書が成功裡に採択されたこと歓迎し、

以下決議する。

1. NPTの普遍性を達成することの重要性を再確認し、未締約国に対し、同条約に非核兵器国として遅滞なくかつ無条件に加入することを要請する。

2. NPTの全締約国が同条約の下での義務を履行することの重要性を再確認する。

3. NPT第6条及び1995年の「核不拡散及び核軍縮のための原則と目標」決定のパラグラフ3及び4(c)を履行するための体系的かつ漸進的努力に向けて、以下の現実的な措置をとることの核心的重要性を強調する:

(a) 包括的核実験禁止条約(CTBT)の2003年以前の早期発効を念頭に、すべての国家、就中その批准が同条約の発効要件となっている国家が、同条約に早期に署名・批准すること及び発効までの間核兵器実験を目的とした核爆発及びそれ以外のあらゆる核爆発を停止すること。

(b) 1995年の特別調整者の報告書とその中に含まれた任務に基づき、核兵器又はその他の核爆発装置のための核分裂性物質の生産を禁止する無差別で多数国間、かつ国際的で効果的な検証を可能とする条約に関する、ジュネーブ軍縮会議(CD)における交渉の即時開始と2005年以前の可能な限り早期の妥結、また、核軍縮及び不拡散という両目的を考慮して、同条約の発効までの核兵器用核分裂性物質の生産を停止すること。

(c) 作業計画を策定する文脈において、核軍縮を扱うことを任務とする適切な補助機関をCDの下に設置すること。

(d) 核軍縮、また核及び核に関連する軍備管理・削減措置に関し、不可逆性の原則を含めること。

(e) 戦略攻撃兵器の一層の削減及び制限に関する条約(START II)の早期発効及び全面的履行、並びに、ABM条約を戦略的安定性の礎として、また戦略攻撃兵器の更なる削減に向けた礎として、その規定に従って維持・強化する中で、START IIIを可能な限り早期に妥結すること。

(f) 国際の安定を促進し、かつすべての国家の安全保障が損なわれないとの原則に基づく方法で、すべての核兵器国が核軍縮につながる以下の措置をとること:

 すべての核兵器国による、一方的或いは交渉を通じた核軍備削減を継続するためのより一層の努力。

 すべての核兵器国による核兵器能力及びNPT第6条に従った合意の実行に関しての、また核軍縮の一層の進展を支持する自発的な信頼醸成措置としての透明性の向上。

 一方的なイニシアチブに基づく、また核兵器削減及び軍縮の過程の不可欠な一部としての、非戦略核兵器の一層の削減。

 核兵器体系の運用状態を一層逓減するための具体的な合意措置。

 核兵器が使用される危険性を最小化し、かつ核兵器廃絶へ至るプロセスを促進するため、安全保障政策において核兵器が果たす役割の低減。

 すべての核兵器国による、核兵器廃絶へ至るプロセスへのできるだけ早い適当な時期における関与。

4. 核兵器のない世界を実現するためには、核兵器国による以下の点を含む更なる措置を経る必要があることを認識する:

 START III以降の核軍縮プロセスの継続。

 核兵器廃絶に向けた過程において、すべての核兵器国による一方的或いは交渉を通じた大幅な核兵器の削減。

5. 核兵器国が、核軍縮に係る進捗や努力を国連加盟国に対し然るべく通知するよう求める。

6. 現在進行中の核兵器解体に係る努力を歓迎し、その際に生じる核分裂性物質の安全かつ効果的な管理の重要性に留意して、できるだけ速やかにすべての核兵器国により、もはや軍事上必要とされない核分裂性物質が永久に軍事計画の枠外に置かれ、平和的目的のために処分されるよう国際原子力機関(IAEA)また関連する国際的な検証措置の下に置かれることを要請する。

7. 核兵器のない世界を実現し維持するための核軍縮合意の履行を保証するのに必要となる、IAEAの保障措置を含む検証能力の更なる発展の重要性を強調する。

8. すべての国家に対し、核兵器及びその他の大量破壊兵器並びにその運搬手段の拡散に資する機材、物資、技術を移転しないとの政策を必要に応じ確認かつ強化しつつ、係る兵器及びその運搬手段の拡散を阻止するための努力を倍加することを要請する。

9. すべての国家に対し、大量破壊兵器の拡散に資するあらゆる物質の安全性、安全な保管、効果的な管理及び防護に関するできるだけ高い水準を維持することを要請する。

10. 核不拡散を促進するため、IAEAモデル議定書(INFCIRC/540)の重要性を強調し、IAEAとの追加議定書の末締約国すべてに対し可能な限り速やかにこれを締結するよう奨励する。

11. 保障措置協定及び追加議定書の締結と発効を促し、これを容易にする行動計画の要素を含んだ決議GC(44)/RES/19がIAEA総会で採択されたことを歓迎し、右決議の早期かつ完全な履行を要請する。

12. 核不拡散・核軍縮を促進する上で、市民社会が果たす建設的役割を奨励する。


2000年10月27日 
A/C.1/55/L.4/Rev.1 

核兵器のない世界へ:新しいアジェンダの必要(新アジェンダ連合決議)

 国連総会は、

 1998年12月4日の総会決議53/77Yおよび1999年12月1日の総会決議54/54Gを想起し、

 核兵器が使用されうる可能性によって人類にもたらされている危険に深い懸念を表明し、

 1996年7月8日にハーグで出された、「核兵器の威嚇または使用の合法性」と題する国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見に想起し、

 3カ国が、保障措置の下にない核施設を運転して続けており、核不拡散条約(NPT)に加盟していないことにも留意するとともに、これらの3カ国が、核兵器の選択肢を引き続き保持していることを憂慮し、

 核兵器の選択肢を放棄していない国々のうちの2カ国が1998年に実施した核爆発実験が、どのような意味においても核兵器国の地位、あるいはいかなる特別な地位をこの2ヵ国に与えるものではないことを宣言し、

 二国間の、および一方的な兵器削減が行われてきたにもかかわらず、配備されている、または貯蔵されている核兵器の全体の数は、いまだに何千にも上ることに留意し、

 核軍縮に向けた措置として、戦略兵器削減条約(START)過程の下で一方的に、または二国間で行われた核兵器削減で、重要な前進が成し遂げられたことを歓迎し、

 ロシア連邦の「戦略攻撃兵器の一層の削減および制限に関する条約」(START?)批准を、戦略攻撃兵器削減の努力の重要な一歩として歓迎するとともに、アメリカ合衆国によるSTART?批准の完成が優先事項として残っていることに留意し、

 核兵器削減交渉が順調に進んでいないことを憂慮し、

 核兵器関連施設の閉鎖と撤去を含む、他の核兵器国がとってきた重要な一方的削減措置をさらに歓迎し、

 いくつかの国々が、軍事目的から余剰と宣言された核分裂物質の検証、管理および処分に関する発議を通じて、核軍縮措置をとりわけ不可逆的なものにすることに協力している努力を歓迎し、

 自国の核兵器のどれもがいかなる国をも狙っていないとの、核兵器国による宣言に留意し、

 すべての国が、核不拡散条約の下での自国の義務をしっかりと遵守することの必要性を強調し、

 国家および政府の元首たちが、大量破壊兵器、とりわけ核兵器の廃棄に向けて努力することを決意するとともに、核の危険を除去する方法について協議する国際会議を招集する可能性も含めて、その目的を達成するためのすべての選択肢を開放することを決意している、国連ミレニアム宣言に留意し、

 核不拡散条約締約国第6回再検討会議の最終文書を歓迎し、

 核不拡散条約締約国第6回再検討会議の最終文書の中にある、すべての核不拡散条約締約国が条約第6条の下で誓約している核軍縮につながるよう、保有核兵器の完全廃棄を達成するという、核兵器国による明確な約束を考慮に入れ、

 核兵器のない世界を達成するための行動の必要性を強調し、

 核不拡散条約第6条、および、「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」と題する1995年の決定の第3節と第4節(c)を履行するための体系的かつ前進的な努力に向けた、実際的な諸措置を追求することを決意し、

(主文)

1. 包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を達成するために、遅滞なく、無条件に、憲法上の過程にしたがって、署名し批准することの重要性と緊急性について合意する。

2. CTBTが発効するまで、核兵器の爆発実験またはその他の核爆発の一時停止を維持することを要求する。

3. 軍縮会議(CD)において、1995年の専門コーディネーターの声明とそこに含まれる任務に従って、核兵器用およびその他の核爆発装置用の核分裂物質の生産を禁止する、差別的でなく、多国間の、国際的かつ効果的に検証可能な、条約のための交渉を、核軍縮および核不拡散という両方の目的を考慮して、行うことの必要性について合意する。軍縮会議は、5年以内に妥結する見通しをもって、このような条約の交渉を即時に開始することを含んだ作業プログラムに合意することが求められる。

4. 軍縮会議において核軍縮を扱う任務をもった適切な下部機関が設置されることの必要性について合意する。軍縮会議は、このうような機関の即時設置を含んだ作業プログラムに合意することが求められる。

5. 核軍縮、核およびその他関連の軍備管理と削減措置に適用されるべき、不可逆性の原則を要求する。

6. 対弾道ミサイルシステム制限条約を、戦略的安定の基礎として、また、戦略攻撃兵器のさらなる削減の基盤として、条約の規定に従って、維持し強化しながら、START?を早期に発効させ完全に履行し、START?を可能な限り早期に妥結することを要求する。

7. アメリカ合衆国、ロシア連邦および国際原子力機関(IAEA)の三者構想の完成と履行を要求する。

8. 国際的安定を促進するような方法で、また、すべてにとって安全保障が減じないとの原則に則って、すべての核兵器国が核軍縮へつながる諸措置をとることを要求する:

  (a)核兵器国による、保有核兵器の一方的な削減のさらなる努力。

  (b)核兵器能力について、また、核不拡散条約第6条にもとづく合意事項の履行について、核軍縮のさらなる前進を支えるための自発的な信頼醸成措置として、核兵器国が透明性を増大させること。

  (c)一方的な発議にもとづいて、また、核軍備削減と軍縮過程の重要な一部分として、非戦略核兵器をさらに削減すること。

  (d)核兵器システムの作戦上の地位をさらに低めるような具体的な合意された諸措置。

  (e)核兵器が使用される危険を最小限に押さえるとともに、核兵器の完全廃棄の過程を促進するために、安全保障政策における核兵器の役割を縮小すること。

  (f)すべての核兵器国を、適切な早い時期において、核兵器の完全廃棄につながる過程に組みこむこと。

9. すべての核兵器国が、もはや軍事目的に必要でないと各核兵器国が認めた核分裂物質を、実現可能な早期において、IAEAまたは関連する国際的検証の下に置くという制度、および、そのような物質が永久に軍事プログラムの外に置かれることを保証するために、そのような物質を平和目的に移譲するという制度を要求する。

10. 軍縮過程における国の努力の究極的な目標は、効果的な国際管理の下での全面かつ完全な軍縮であることを再確認する。

11. 強化された核不拡散条約再検討過程の枠組みの中で、すべての締約国が、核不拡散条約第6条、および、「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」と題する1995年の決定の第4節(c)の履行について、1996年7月8日の国際司法裁判所の勧告的意見を想起しつつ、定期報告を行うことを要求する。

12. 核兵器のない世界を達成し維持するための核軍縮協定の遵守を保証するために必要な、検証能力のさらなる発展を追求することに合意する。

13. 核不拡散条約にいまだ加盟していないすべての国に対して、とりわけ、保障措置の下にない核施設を運転している国々に対して、同条約に非核兵器国として、迅速にかつ無条件に加盟することを要求する。そして、これらの国々に対して、求められている包括的な保障措置協定を、「国(々)と国際原子力機関との保障措置適用のための(諸)協定へのモデル追加議定書」(原注:国際原子力機関、INFCIR/540(訂正))と矛盾しない追加議定書とともに、発効にいたらしめ、核兵器の開発または配備を追求するようないかなる政策をも明確にかつ緊急に転換させ、そして、地域的および国際的な平和と安全保障、および、核軍縮と核兵器の拡散防止に向けた国際社会の努力を損なうようないかなる行動をもとらないことを要求する。

14. いまだそうしていない国々に対して、国際原子力機関との全面的保障措置協定を締結し、1997年5月15日にIAEA理事会が承認したモデル議定書に基づいて、それら保障措置協定への追加議定書を締結することを要求する。

15. すべての核物質の効果的な物理的防護の至上の重要性に留意し、すべての国に対して、核物質の保安と物理的防護の可能な限り高い水準を維持することを要求する。

16. 核不拡散条約締約国第6回再検討会議が、5つの核兵器国による、同条約締約国である非核兵器国に対する法的拘束力のある安全の保証が、核不拡散体制を強化することに合意したことに留意する。そして、同会議準備委員会が、2005年の再検討会議に向けて、この問題について勧告を行うよう要求されていることに留意する。

17. 関係する地域の国々の間で自由に達成されたとり決めに基づいて、国際的に認知された非核地帯を設立することは、世界的および地域的平和と安全保障を高め、核不拡散体制を強化し、核軍縮という目的を実現することに貢献するとの確信を再確認する。そして、中東や南アジアといった、非核地帯が存在しない地域に非核地帯を設立するための提案を支持する。

18. 核兵器のない世界が、究極的には、普遍的で多国間で交渉された、法的に拘束力のある条約や、相互に補強しあう一連の条約体系を含む枠組みによる、下支えを必要とすることを確認する。

19. 総会決議54/54Gの履行に関する事務総長の報告書(原注:A/55/217)を承認し、事務総長に対して、現存の資源の範囲内で、この決議の履行についての報告書を作成することを求める。

20. 第56総会の暫定議題に、「核兵器のない世界へ:新しいアジェンダの必要」と題する項目を入れ、この決議の履行について検討することを決定する。


共同提案国:アルジェリア、アンゴラ、オーストラリア、ベニン、ボリビア、ボツワナ、ブラジル、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、チリ、コロンビア、コスタリカ、コートジボアール、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、フィジー、ガーナ、グレナダ、グアテマラ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、アイルランド、ジャマイカ、レソト、リベリア、マダガスカル、モザンビーク、メキシコ、ニュージーランド、ニカラグア、ナイジェリア、パナマ、パラグアイ、ベルー、フィリピン、シエラレオーネ、ソロモン諸島、南アフリカ、スリナム、スワジランド、スウェーデン、ウガンダ、ウルグアイ、ベネズエラ、ベトナム、ザンビア、ジンバブエ