1999. 1.20

ハーグ平和アピール1999

国際市民平和会議の概要


●“ハーグ平和アピール1999”への経緯

 いまから100年前の1899年、オランダのハーグ市で「第1回国際平和会議」が開催されました。当時のロシア皇帝(ニコライ2世)が呼びかけ、オランダのウィヘルミナ女王の協力を得て行なわれました。  この会議は画期的なものです。特定の戦争の解決のためではなく、軍縮、戦争の防止、紛争の平和的解決のための恒久的な国際法を創り出すことを目的として開催されたもので、このような国際会議が開催されたのは史上初のことでした。  その後1907年にも「第2回国際平和会議」が開催され、この2回の会議によって国際人道法の基礎が与えられました。「常設仲裁裁判所(PCA)」の設立、「国際連盟」および「常設国際司法裁判所」、その後の「国際連合」及び「国際司法裁判所(ICJ)」の創立の種が植えられたのです。「常設仲裁裁判所」と「国際司法裁判所」は、現在ハーグにあります。  1915年に召集するように提案されていた「第3回国際平和会議」は、第一次世界大戦、第二次世界大戦と相い次いだ戦争のため開催されず、今日にいたっています。
 1997年、国連総会は、オランダとロシアの両政府が主唱した「第1回国際平和会議の100周年行事」を支持する決議を行ないました。 「ハーグ平和アピール1999」は、非同盟運動諸国および赤十字によって進められている「1999年ハーグ平和会議」、オランダ、ロシアをはじめ25ヵ国によって行なわれるこの「100周年行事」にも言及しており、私たちが開催しようとしている市民の「ハーグ平和アピール1999」に引き続いて開催されるこの「100周年行事会議」は実質的に「第3回ハーグ国際平和会議」であると述べています。

●“ハーグ平和アピール1999”のテーマ

 過去10年間、世界では子ども、環境、人権、社会開発、人口、女性の社会進出、そして共生といった様々な問題が取り上げる会議が開催されてきました。今世紀最後に行なわれるこの世界会議は、「平和」が主要テーマとなります。
 今回の世界会議は、市民が組織し、各国政府にも、参加を呼びかけているものです。共に手を取り合って活動している世界中の何百ものNGOや何千人という人々が、武力紛争の解決と21世紀を人間の信頼をとりもどした平和な世紀にするための方法を話し合い、計画します。
 総合テーマは「いまこそ戦争をなくす時、戦争の根源を絶つ時」です。 過去200年の間に人類は、奴隷制度、植民地主義、アパルトヘイトなどには正当性がないことを明らかにしてきました。この会議では世界的な指導者、ノーベル賞受賞者、学者、活動家などが指導的な役割を担って全体会議を行ない、テーマ別にそれぞれ、全体会議、セミナー、ワークショップ、特別公開討論会が行なわれます。 全体会議とプログラムとに平行して、「グローバルフォーラム」(地球の広場)を設け、団体による部内会議を開いたり、団体の活動に関する情報を普及するための独自プログラム(国際キャリア・フェア、平和教育フェアなど)を行ないます。音楽、ダンス、演劇、映画、写真展などの各種文化イベントも用意されています。
 歴史上最も悲劇的な世紀が終わろうとしている今こそ、戦争には正当性がないことを明らかにする最後の一歩を踏み出すために、この地球に住む私たち一人ひとりが声をあげていきましょう。

◆総合目標◆

 この会議は前世紀のハーグでの成果を受け継ぎ、次の4つの目標を掲げています。

・核兵器の廃絶を含む軍縮
・国際人権、国際人道および諸機関の強化
・武力紛争の予防および平和構築を含紛争の平和的解決
・戦争の根本原因および平和の文化


●“ハーグ平和アピール1999”の構成

【名誉委員会】

 「ハーグ平和アピール1999」に対して助言し、未来へ展望を与えることを目的とします。世界の指導者、ノーベル賞受賞者、平和活動家及びその他の人々により構成され、現在、以下の人々と構成しています。

・Jody Williams(ノーベル平和賞受賞者、1997年)
・Maj-Britt Theorin(外交官、議員、活動家)
・Desmond Tutu(ノーベル平和賞受賞者、1984年)
・His Holiness the Dalai Lama(ノーベル平和賞受賞者、1989年)
・Oscer Arias Sanchez(ノーベル平和賞受賞者、1997年)
・Dr Bernard Lown(核戦争防止国際医師の会共同設立者、ノーベル平和賞受賞者、1985年)
・Jose Ramos Horta(ノーベル平和賞受賞者、1970年)
・Dr. Norman Borlaug(ノーベル平和賞受賞者、1969年)
・Mairead Maguire Corrigan(ノーベル平和賞受賞者、1976年)
・Adolfo Perez Esquivel(ノーベル平和賞受賞者、1980年)
・Professor Joseph Rotblat(ノーベル平和賞受賞者、1995年)
・Christa Wolf (著名な作家)
・Marion Graefin Doenhoff(ジャーナリスト)
・Carl Friedrich von Weizsacker(物理学者)
・Hans Koschnik(モスタル選出の前EU行政官)

【国際組織委員会】

 「ハーグ平和アピール1999」を支援する約50のNGO(国際的、地域的組織)により設立。この委員会は総合目標および会議プログラムの考案、実施をします。

※組織委員会の役割
・主要課題の考案、実施
・各国および諸地域での準備会議の組織
・「ハーグ会議」への参加代表団の編成
・関連する地域および関連集団との連携
 
※国際組織委員会を構成する主な組織
アムネスティーインターナショナル/アラブ平和組織調整センター/アースアクションインターナショナル/欧州バルカン平和運動/国際反核法律家協会(IALANA)/ヨーロッパ法律学生連盟(ELSA)/インターナショナルアラート/国際法曹協会/国際赤十字委員会/国際和解友好協会/地球環境を考える技師科学者国際ネットワーク/国際平和ビューロー/核戦争防止国際医師の会(IPPNW)/軍縮NGOネットワーク/国際平和キリスト教協会/ピースボート/ハーグ国際模擬国連/第三世界ネットワーク/超国家研究所/青年国連/女性環境開発組織/女性平和と自由のための国際連盟/宗教と平和国際会議/世界連邦運動/世界秩序モデルプロジェクト など。
 

【調整委員会】

 調整委員会は、全てのプロジェクトに責任を担う市民団体の中核的グループです。

 
※調整委員会の役割

・「ハーグ平和アピール1999」の法律的、行政的および財政的側面の管理、監督
・人事および資金調達に関する責任
・組織委員会および名誉委員会の設立
・メディア、政府および市民組織との連携

※組織委員会の構成組織

・国際反核法律家協会(IALANA)
 ハ−グに本拠を置くIALANAは、核兵器の使用および威嚇の違法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見を実現するため世界的規模の取り組みを組織し、極めて重要な役割を果たしました。また、核兵器を非合法化する条約草案を準備し、さらにその開発作業を継続しています。この条約草案は数多くの政府に提示されており、また国際兵器取引の制限と最終的な廃絶に関する条約も同様です。

・国際平和ビューロー(IPB)
 ジュネ−ブに本拠を置くIPBは、最も歴史の古い、また包括的な国際平和連盟で、1892年に創設され、1910年にノ−ベル平和賞を受賞しました。IPBはあらゆるタイプの160におよぶ組織を結集しています。IPBの役割は、国連により、諸国の政府により、そして特に市民により開始されたイニシアチブを支持することにあります。現在の優先的な課題は、核兵器廃絶、紛争防止・解決および国際人道法です。

・核戦争防止国際医師の会(IPPNW)
 米合衆国マサチュ−セッツ州に本拠を置くIPPNWは、80ヵ国以上の各国の医師グル−プの超党派連盟です。1985年ノ−ベル平和賞の受賞者であり、また核戦争の実体に関して世界に警告した業績により1984年UNESCO平和教育賞も受賞しています。その基本的な使命は、戦争の防止、平和および健康の促進と核兵器の禁止です。

・世界連邦運動(WFM)
 ニュ−ヨ−クに本拠を置くWFMは、国際法の強化と国連の民主化に献身している国際的な会員制組織です。WFMは、「国際法の10年」の創設、および第3回ハ−グ平和会議の開催要請という成果をあげ、1989年の非同盟諸国特別閣僚会議に呼応するNGO会議を組織しました。WFMは、さらに国際刑事裁判所設立のためのNGO連合を呼びかけている。WFM専務理事ウイリアム・ペイス(William Pace)氏が、ハ−グ平和アピ−ル1999の事務総長です。

【助言委員会】

 個々の学者および主要学術団体の代表者により構成。会議の議題に関する論述において専門的な助言および情報を与える目的で設立される。

○展望についての声明

 今世紀は史上最悪の世紀であり、また、同時に最良の世紀でもありました。 これまで99年の間、人々は歴史上いかなる時期にもまして、戦争、飢餓およびその他防止可能な原因による多くの死、それも残酷な死を目撃してきました。また民主主義の微かな炎が、狂気の独裁者、軍事政権そして世界の巨大な権力闘争によって幾度となく吹き消されるのも目撃してきました。この世の恵まれた者と恵まれない者との溝はますます深まり、そして恵まれない者に対する恵まれた者の冷淡な扱いが、日増しに強くなる様も目の当たりにしてきました。
 しかし、同時に人々は男女、人種、宗教、そして民族間の古びた偏見に対し、また既成の圧制に抵抗し、それに打ち勝つ人民の力をも目撃してきたのです。
 今世紀は、地球上に住む全ての人々が人並みな生活ができるほど科学的・技術的知識が爆発的に発達しました。また、もし真剣に取り組んでいたなら、その可能性を現実に変える普遍的権利が形成されているだろうし、もし順調に成長していたなら、この過渡期を治めているかもしれない世界統治システム(グローバル・ガーバナンス・システム)の誕生をも目の当たりにしてきました。
 多くの文化と社会的背景を持つ民衆団体の一員であり、代表者である私たちはこのような二面性を持つ今世紀の歴史を心に留めて、私たち自身に対して、また私たちの指導者であると公言する人々に対して次のように提言します。

1、地域社会が地球規模で新しい世紀へと移行している今、21世紀を戦争のない史上初の世紀にしようではありませんか。

2、世界の膨大な資源の不平等な分配、国家間及び国内での対立、そして致命的な兵器となる度合いをますます強めている通常兵器と大量破壊兵器の多量の存在を含む、戦争の原因を取り除くことにより、紛争を防止する手だてを求め、既存の有効な手だてを実行に移そうではありませんか。

3、最善の努力を積み重ねても紛争の勃発は避けられないかもしれません。しかし、紛争が勃発した際には、暴力に訴えることなく紛争を解決する手だてを求め、既存の有効な手だてを実行に移そうではありませんか。

4、要するに、第二次世界大戦後、世界の檜舞台にほんのわずかの間登場した「全面的かつ完全な軍縮」という壮大なビジョンに立ち戻ることにより、地球規模で世界中に大きな変化の波が押し寄せている今こそ、100年前にハーグで開催された平和会議の仕事を完成させようということです。

 そのためには、平和のための新しい機構と抜本的に強化された国際法秩序が必要となります。特に各国政府(指導者)が、しなければならないと分かっていながら、踏み切れないでいる下記の中に実行できる道徳的、精神的及び政治的なことを見つけだしましょう。

・核兵器、地雷及びその他の国際人同胞と矛盾する全ての兵器を廃絶すること。
・兵器取引の全廃もしくは少なくとも国連憲章に述べられている攻撃の禁止に矛盾しないレベルにまで兵器取引を削減すること。
・戦争のない世界を実現するまでの移行期間中に、国際人道法とその制度を強化すること。
・紛争の原因を究明し、紛争防止および解決する創造的な方法を考案すること。
・あらゆる形の植民地主義を克服し、軍備拡大競争の停止または削減により得られる膨大な資源を貧困、新植民地主義、新奴隷制度、新アパルトヘイトの根絶のために、そして地球の環境保護、全ての人々の平和や正義のために使用すること。

 これらの目標に向かって、戦争を廃絶し、力の支配を法の支配に変えるための最終段階を一緒に取り組もうではありませんか。
 この今世紀最後に行なわれる平和構築のための最大のイベントに日本全国からも多くの市民組織及び個人が参加して全世界の人々と交流し、“核兵器も戦争も貧困もない、そして人間の信頼をとりもどせる平和な21世紀”を一緒に創りあげましょう。
 この「ハーグ平和アピール1999」をご理解していただき、一人でも多くの人が何らかの形で賛同、参加されますことを願っております。
 
 ――この地球の平和で美しい未来のために――

“ハーグ平和アピール1999”の要項

 
期  日 1999年5月11日〜15日
場  所 オランダコングレスセンターおよび、ハーグの周辺施設
参 加 者 予定されている団体の数は200〜400団体。約10000名
講 演 者 ツツ大司教、ジョス・R・オルタおよびジョディ・ウィリアムズのようなノーベル賞受賞者や、C・ウィラマントリー国際司法裁判所判事など。コフィ・アナン国連事務総長、ネルソン・マンデラ、マリー・ロビンソンといった世界の指導者たちも招待されています
内  容  テーマ別にそれぞれ、全体会議、セミナー、ワークショップ、特別公開討論会のほか、映画、写真展、コンサートなど各種イベントも予定されています
その他 若者や学生のための特別なプログラムも計画されています。すでに各国諸地域でハーグ平和アピール学生団体が設立されています。コンサート、ビデオ祭、ゲーム、ダンス創作ミュージカル、演劇、写真展などが予定されています。