1999. 5

21世紀の平和と正義を求める

ハーグ・アジェンダ(仮訳)

 「21世紀の平和と正義を求めるハ−グ・アジェンダ」は、72の「ハ−グ平和アピ−ル組織委員会及び調整委員会」(the Hague Appeal for Peace Organizing and Coordinating Committees)の会員、並びに「ハ−グ平和アピ−ル」の設立過程に積極的に参加してきた何百もの組織及び個人による集中的な協議の過程から生まれてきたものです。人類が新しい世紀を迎えようとしているとき、このアジェンダは、これらの市民社会組織及び市民が、数ある課題の中で、どのような課題が現在人類の直面している最も重要な課題だと考えているかを明確に示しています。このアジェンダは、次の「ハ−グ平和アピ−ル」の中心的な四本の柱を反映したものです。
会議版(1999年5月)仮訳

1 戦争の根本的原因/平和の文化
2 国際人道法及び国際人権法並びに制度
3 暴力的紛争の防止、解決及び転換
4 軍縮及び人間の安全保障


前文

 現存する世界は、史上最も血にまみれ、最も戦争に苦しめられた世紀から、いま蘇ろうとしております。新らしい世紀を目前にしているこの時期は、「戦争の惨害から将来の世代を救済する」という国連の主要な目的を実現する条件を創造するのに最も相応しい時だと考えます。このことこそまさしく、「ハ−グ平和アピ−ル」の目標であります。

 懐疑論者は、そんなことは出来はしないと言うでしょう。だが、ハ−グ平和アピ−ルはこのようような決め込みににあえて挑戦するものです。今世紀は想像を絶する様々な変革を目の当たりにしてきました。現在,社会は病気を癒し、貧困を減らし、飢餓を無くす手段を備えております。更に20世紀は、もしそれが実行されるならば、戦争を不必要かつ不可能にするのに大いに貢献するであろう、一連の普遍的規範の創造を目撃してきました。

 非武装人民の運動によって独立と市民権を勝ち取る闘争において、積極的な非暴力主義を掲げて成功を収め、我々を勇気づけてくれた様々な実例を目撃してきました。権威主義的統治形態が、民主政体に取って代わられ、また人道問題において市民社会の役割が益々大きくなってきている事実も目の当たりにしてきました。

 最近、カンボジャ、ボスニア、ルワンダ及びコソボにおける集団虐殺の勃発、民間人に対する残虐な攻撃、そして地球上の多くの、否全ての生命を奪う可能性を秘める恐ろしい大量破壊兵器の拡散が目撃されています。先住民族たちは、自分たちの自決権を拒否され続けております。極めて多数の事例が示しているように、世界諸国の政府は、紛争を防止し、民間人を保護し、戦争を終結し、植民地主義を根絶し、人権を保障し、かつ恒久平和のための条件の創造するという自らの責務を果たす点で,明らかに失敗してきました。

 したがって、この歴史的な使命と責任を諸国政府だけに任せておくことはできないのであります。「ハ−グ平和アピ−ル」は、市民の「21世紀の平和と正義を求めるアジェンダ」を提案します。このアジェンダにとっては、市民運動家たち、進歩的諸政府及び国際諸機関が、共通の目標を実現するために協力するという最近の「新外交方式」(New Diplomacy)に基づく、基本的に新しいアプロ−チが必要となります。われわれは、道徳的な創造力と勇気を受け入れるように迫られることになるがあ、それは21世紀の平和の文化を創造し、最終的には世界の平和と正義の保護者となる宿命を負う国家制度及び超国家的な制度を発展させるために必要なものであります。

 選択すべき課題は既に十分に存在しています。市民社会は、冷戦終結後その勢いを増し、地雷の根絶、小火器取引の削減、第三世界の債務の緩和、女性に対する暴力行為の禁止、核兵器の廃絶、子どもの権利の保護、少年兵の従軍阻止,及び独立した国際刑事裁判所の設立を求める運動を展開してきました。このような草の根運動は、重大な衝撃を及ぼしつつあります。これらの運動が成功を収めている理由は、一般市民を動かし、様々な分野(人権、環境、人道的援助、軍縮、持続可能な開発等)を統合し、かつ女性、若者、先住民族、少数民族、身体障害者及びその他の被害者団体の全面的な参加を求めているからであります。

 このような運動は、統一と団結を新たに生みだしたばかりか、説得されるのでなく自ら声を挙げるとき、一般市民が何を為し得るかと言うことを明らかにしています。「ハ−グ平和アピ−ル」は、意見を聴き、学び、そしてそこから運動を構築することを目指しております。このプロセスから、「21世紀の平和と正義を求めるアジェンダ」が誕生することになります。このアジェンダは、決定的に重要であり、しかも実現可能な目標であります。

 全体的なハ−グ・プロセスにおいて、ほとんど全ての参加諸団体が、自ら選んだ課題に取り組むことに集中してきたことは周知の事実であります。参加諸団体は、署名及びその他の自発的な手続による場合を除き、共通の基本方針又は他団体の提案を支持するよう求められることはありません。


テ−マ

 市民社会会議プログラムから様々な運動に及ぶ「ハ−グ平和アピ−ル」の構成要素にたいして、その動機を与えているのは、下記の主要なテ−マであります。

●過去の失敗
 戦争の防止と平和の構築を試みた伝統的なアプロ−チは、これまでのところその大半がものの見事に失敗に帰しています。この事実は、戦争の残虐性の増大、コンゴ、シエラ・レオ−ネ及びコソボのような紛争地域における一般市民の人命に対する冷酷なまでの軽視により裏付けされています。民族浄化及び人道に対する犯罪を咎めることなく野放しにしておくことは、国際法の主旨に反することになります。大国の脅しによる戦略は外交ではありません。貧しい人々を飢えさせるような制裁処置は連帯とは呼べません。緊急出動部隊(Firebrigade)による平和維持活動は、洗練された早期警報及び紛争防止システムの代わりとなるものではありません。

●人間の安全保障
 国家主権及び国家領域の代わりに、人間及び生態系の必要に基づく観点から安全保障を再定義する時がまさに訪れております。軍備から人間の安全保障及び持続可能な開発へと財源を再配分することが、女性及び先住民族を含むこれまで権力機構から疎外されてきた集団の平等な参加を保証し、軍隊の使用を制約し、そして集団的国際安全保障に向けて前進する新しい社会秩序の建設に結果的に繋がる新優先事項を定めることになります。

●柔らかな力
 私たちは、市民社会及び進歩的な諸国の政府が、主要大国、軍部及び巨大経済企業体による「硬い力」(hard power)による命令を退けて、交渉、連合の構築及び紛争を解決するための新しい外交手段を活用する「柔らかな力」による道を選択していることに大いに勇気づけられております。

●全ての人に全ての人権を
 人権侵害は、戦争の根本的原因の一つに挙げられます。このような侵害には、政治的及び市民的権利はもとより、経済的、社会的及び文化的権利の否定も含まれます。これらの二組の権利を人為的に区別することは、もはや許されることではありません。私たちは人権の普遍性と不可分性とを固く信じております、そして人・条約を実施かつ執行でき、また人権侵害の犠牲者に対する救済を与えることのできるより強固な機構を要求します。

●力による支配を法の支配により置き換えること
 現在の紛争においては、法の支配は屈辱的なまでに無視されてきました。「ハ−グ平和アピ−ル」は、国際法に対する世界的な遵守及び実施を発展かつ推進することを求めております。更に、国際司法裁判所のような既存の国際司法機関の活性化を図ること、並びに国際刑事裁判所のような新しい機関の創設を求めております。一般市民一人一人が、国際法についてよく知り、そして国際法を容易に利用できるようにしなければなりません。

●平和の創造で主導権を握ること
 今こそ人民は,自分たちが平和に関与することを主張し、必要な場合には、政治家及び軍部上層部が排他的に支配している平和創造機能を、その手から取り上げるべきであります。平和のイニシアチブは,戦争挑発者だけが行う交渉で、最後の解決手段として提案され、最も影響を受ける人々(特に女性と子ども)に,犠牲を強いることがあまりにも多すぎます。最も犠牲を被ってきた人々が,平和協定が起草される際に、女性に平等な代表権が与えられることも含めて、交渉の場での発言権を与えられるべきなのです。更に、事態が手に負えなくなり死傷者が出る前に、必要に応じて、市民社会は平和のイニシアチブを発動すべきなのです。このことが、早期警報を単なるスロ−ガンから現実のものへ転換するテ助けになるかもしれません。

●底辺からのグロ−バリゼ−ション
 経済力の驚くべき集中と新自由主義的マクロ経済政策の押し付けが、環境を破壊し、貧困と絶望とを生みだし、貧富の差を拡大し、そして戦争を助長しています。「ハ−グ平和アピ−ル」は、債務免除を求める「ジュビリ−2000」(Jubilee)のような地域社会を基盤にした連合、及び貧困を根絶誌,また女性に経済的に力を与える運動を通して、このような破壊的な形態のグロ−バリゼ−ションと対決する活動を促進します。

●国際的意志の民主的決定
 国連システム及び多数国家が参加するその他の諸機関は、平和を求める独自のかつ普遍的な推進力となる能力を備えております。しかし最近ではしばしば、これらの機関は冷たくあしらわれ、政治の道具にされ、そして財源不足に陥っています。平和構築におけるその潜在力を認識するのであれば、この国際システムを復活し、民主化し、そして潤沢な財源を与える必要があります。特に私たちは、大国の利益よりも人間の安全保障に奉仕する安全保障理事会を要求するものであり、かつ国際金融制度をより透明で責任の所在が明確なものにし、企業の必要ではなく人間の必要に奉仕する国際金融制度にするための抜本的な方向転換を求めます。

●人道的介入
 「ハ−グ平和アピ−ル」は、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪及び極度な国家的災害により一般市民が脅威にさらされているときには、国連憲章の規定に従って,人道部隊による迅速かつ実効的な介入がおこなわれることを要求します。介入のための常備軍を設立するという着想が、ほとんど注目されてこなかったことは異常とも言えます。市民社会は、緊急の課題として新しい形態の市民による介入を考えなければなりません。

●平和に役立つ財源を調達し、戦争のための財源を枯渇させること
 資源の配分は,極端に偏っています。今日の紛争の多くは、経済的な貪欲さと原料の不法入手により煽られています。一方では何十億ドルもの金が、兵器取引及びその他の様々な軍備増強のために浪費されております。同時に、この十年間に開催された、歴史に残る世界会議で,一連の驚くべき世界行動計画が諸国の政府により採択されたにもかかわらず、多くの貴重な平和のイニシアチブや人間の安全保障のためのプログラムは、財源不足に苦しんでおります。このような優先順位は逆転されるべきです。大量破壊兵器の廃絶と兵器取引の大幅な削減に加えて、軍事予算は継続的に削減されねばなりません。


主要な行動――「ハ−グ・アジェンダ」を実現すること

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、いくつかの主要なイニシアチブと運動のための橋頭堡として役立つことになります。ハ−グにおいて浮き彫りにされるいくつか中心的な行動は以下の通りです。これらの行動は、市民社会及び世界的なネットワ−クに参加する新しい仲間を求めている連合によるイニシアチブを示しております。更に、その他の多くの行動計画が、会議そのものから生まれてくるものと期待されます。

●小火器に関する国際行動ネットワ−ク(IANSA)(International Action Network on Small Arms)
 「小火器に関する国際活動ネットワ−ク」は、国境を越えて国際的な活動を押し進めている小火器の拡散と不法使用の抑止に献身するNGOの世界的なネットワ−クです。「ハ−グ平和アピ−ル」における「IANSA」の活動は、小火器の拡散と誤った使用による壊滅的な影響についての考察、世界的なキャンペ−ンの必要性についての概要説明、及び今世紀の最大の人道上の課題の一つに取り組むための市民社会組織間の協力の推進を求めることから開始されます。

●平和教育を求める地球運動(Global Campaign for Peace Education)
 「平和の文化」は、世界市民が地球問題を理解し、紛争の解決と正義を求める闘争を非暴力的な手段により実現する術を身に付け、人権及び平等に関する国際基準に従って暮らし、文化の多様性を理解し、そして地球及びお互いを尊敬するようになったとき、始めて達成されるものです。このような学習は、体系的な平和教育を実施することにより初めて可能となります。

 「ハ−グ平和アピ−ル」会議は、「平和の文化及び世界の子どもに対する非暴力を求める国連の10年」(the United Nations Decade for a Culture of Peace and Non-violence for the Children of the World)を支持し、また平和と人権教育を、医学及び法律を学ぶ学部・大学院を含む全ての教育制度に導入する呼び掛けと運動に着手します。この運動は、教育団体による、並びに地域、国家及び地方の市民と教育者による世界的なネットワ−クを通して行われることになります。

●国際刑事裁判所の批准を求める地球運動(Global Ratification Campaign for the International Criminal Court)
 「ハ−グ平和アピ−ル」において、「国際刑事裁判所を求めるNGO連合」(CICC)(the NGO Coalition for an International Criminal Court)は、国際刑事裁判所に関する「ロ−マ規程」の批准を求める地球運動に取り掛かります。国際刑事裁判所(ICC)は、ジェノサイド、戦争犯罪及び人道に対する罪の廉で、個人を告訴できる常設裁判所となるものです。六十カ国による批准という目標に達するために、この運動は、一般大衆、市民社会のあらゆる階層、報道機関及び世界中の意志決定者のICCに対する意識の高揚を図り、理解を広めることに全力を傾倒することになります。

●地雷の禁止を求める国際キャンペ−ン(ICBL)(International Campaign to Ban Landmines)
 「地雷の禁止を求める国際キャンペ−ン」は、「オタワ地雷禁止条約」(the Ottawa mine ban treaty)の実施に関する最初の報告を発表し、その世界的な批准を繰り返し要求します。ICBLの次の目標には、地雷の使用、生産、貯蔵及び移譲を禁止するこの条約の普及、批准及び実施が含まれております。更に、ICBLは、条約締約国が、全世界での地雷の除去を促進し、犠牲者援助の努力を推進する責務を果たすよう求めています。

●核兵器の廃絶(Abolition of Nuclear Weapons)
 1998年6月に、勇気ある7カ国の政府からなる「ニュ−・アジェンダ連合」(the New Agenda Coalition)(ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュ−ジ−ランド、南アフリカ及びスウェ−デン)が、全ての核戦力の非常警戒態勢解除を含むいくつかの実際的な措置を直ちに講ずるよう核兵器保有国に迫りました。これらの7か国は、1998年12月に国連決議案の形をとってこのアジェンダを提案し、これは114票対18票で採択されました。

 この機を捉えて、「核拡散防止条約」(the Non-Proliferation Treaty)第?条及び国際司法裁判所により要求されている通り、核兵器廃絶条約の早期締結に向けて交渉を開始するよう核兵器保有国及び非核兵器保有国に求める運動が、IALANA、INESAP、IPB,IPPNW、アボリション2000及びミドル・パワ−・イニシアチブ(中堅国家構想Middle Powers Initiative)により、「ハ−グ平和アピ−ル」において発足します。

●戦争防止のための地球行動(Global Action to Prevent War)
 「ハ−グ平和アピ−ル」は、「防衛軍縮研究所」(the Institute for Defense and Disarmament Studies)、「憂慮する科学者連合」(Union of Cnoncerned Scientists)及び「世界秩序モデル・プロジェクト」(World Oder Model Project)と共同して、「戦争防止のための地球行動」に着手します。これは、武力紛争が稀にしか存在しない世界の実現に向けて一歩進み出るための包括的かつな多段階に渡るプログラムです。

 「地球行動」は、強化された紛争予防、平和維持、軍縮、並びに次の様々な措置――人権、非暴力的解決及び法の支配を促進する様々な措置の複合体を推進します。「地球行動」は、紛争解決のための非暴力的手段及び平和教育に関与している人々、また社会的及び経済的不正に起因する戦争の根本的原因に対する取り組んでいる人々、人道的援助、経済発展、紛争防止、平和維持及び「通常兵器」と核兵器の軍縮に関与している人々の連合を形成することに貢献しようと望んでおります。

●少年兵の従軍阻止
 「少年兵の従軍阻止連合」(the Coalition to Stop the Use of Child Soldiers)は、徴兵制度の廃止及び、政府軍であれ反政府軍であれ、十八歳未満の全ての少年兵の従軍阻止を求める指導的な国際NGO組織により1998年5月に設立されました。「ハ−グ平和アピ−ル」会議において、UNICEF及び「少年兵の従軍阻止オランダ連合」(the Dutch Coalition to Stop the Use of Child Soldiers)の協力を得て、この国際的な連合は、世界中の少年兵従軍の阻止、特に武力紛争への少年の徴兵と徴用が継続している国家における政府及び市民社会による行動の強化を繰り返し求めることになります。


平和と正義を求めるハ−グ・アジェンダの4つの柱の紹介

 「ハ−グ平和アピ−ル」の四本の柱を構成する討議項目(戦争の根本的原因/平和の文化、国際人道法及び国際人権法とその制度、暴力的紛争の防止、解決及び転換、軍縮及び人間の安全保障)は、参加組織により明確に述べられている問題、イニシアチブ及び信条を、可能な限り正確に表現しようと努力したものです。いくつかの場合に、特定のアジェンダ項目に対して特別な用語あるいは表現様式が用いられていますが、これは組織の連合により提案されたものであったり、あるいは関係団体の長時間に渡る議論の末に決定されたものです。これまでに寄せられた数多くの協力に最大限応えるためにも、四つの分野間の様式の統一を図ったり、また一定の重複箇所を削除することも敢えて行いませんでした。

戦争の根本的原因/平和の文化

1 平和、人権及び民主主義のための教育を実施すること

 私たちの社会に蔓延している暴力の文化と対峙するためには、次の世代が抜本的に現在とは異なる教育、即ち戦争を美化する教育ではなく、平和、非暴力及び国際協力をめざす教育を受ける必要があります。「ハ−グ平和アピ−ル」は、あらゆる階層の人々に、調停、紛争の平和的転換、コンセンサスの醸成及び非暴力による社会変革をもたらす平和創造のすべを与える世界的な運動の発足を求めております。

 この運動は:

 ・平和教育が、教育制度のあらゆる段階において必修科目とされるよう主張します。
・教育省庁が、地方及び国家規模での平和教育に関するイニシアチブを体系的に実施することを要求します。
・教員養成及び教材作成の一環として平和教育を促進するための開発援助機関を要求します。

2 グロ−バリゼ−ション(Globalization)がもたらす逆効果と対決すること

 経済のグロ−バリゼ−ションは、世界人口の幅広い階層を置き去りにし、貧富の差を更に拡大しています。「ハ−グ平和アピ−ル」は、次の諸点に特に重点を置く公正な世界経済の創造を支持します:

・地方、国家、国際及び政府間組織における労働権の尊重を促進する国際キャンペ−ン
・「世界銀行」(the World Bank)、「国際通貨基金」(the International Monetary Fund)、「世界貿易機関」(the World Trade Organization)及びその他の国際金融制度の民主的改革
・国際金融制度の規制
・国際特許状(international charters)の認可及び極端な濫用に対する認可の取消、並びに国際市場規準及び規範に則って営業することを求める提案を含む多国籍企業の責任の明確化
・兵器あるいは公債の国際的な移譲に対する妥当な課税という新しい財源からの経済開発への資金援助
・G8のG16への拡大、あるいは発展途上国を含む経済又は環境安全保障理事会の設立
 ・ 世界の最貧国に対する返済不能な債務の取消、及び直前の腐敗した、非民主的な政府と入れ替わった民主的な政府に引き継がれた不当な債務の取消
・開発権、子供と女性の権利を含む、経済的、社会的及び文化的権利の承認と実施

3 環境資源の持続可能かつ公平な使用を推進すること

 「世界の支配的な消費者は、圧倒的に富める国に集中している。その反面、世界的な消費による環境破壊の損害は、貧しい国々に最も重くのしかかっている。」と1998年の国連開発計画の人間開発報告(the 1998 United Nations Development Program Human Development Report)に述べられている。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、次のイニシアチブを支持します。

 ・特に、クリ−ンで健康的な環境に対する基本的な権利という概念を広めるこによる国際環境法の強化及びその実施
 ・過剰消費及び環境資源の不公平な配分に関する問題への取り組み
・水の不公平な配分という深刻さを増している問題についての考察
・世界の森林及び環境の劣悪化から種(人類をも含め)を救済するための運動への支持
・環境の軍事的破壊、特に先住民族用地の軍事用地化の中止
 ・持続可能な開発に対する様々な選択肢の確認

4 植民地主義及び新植民地主義を根絶すること

 先住民族及び公の場に代表者を出していない人民を苦しめているのは、彼らの民族自決権の抑圧、エスニック的及び文化的ジェノサイド、文化、言語及び宗教の自由の侵害、並びにその生活、用地及び水の軍事基地化及び核武装化であります。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、次の諸点を支持します:

 ・植民地諸国の国民による民族自決権行使に向けての努力
 ・「植民地諸国及び国民の独立の承認に関する宣言」(Declaration on the Granting of Independence to Colonial Countries)及び「先住民族の権利に関する宣言」(Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)を含む様々な国際協定に規定されている、植民地化の根絶
・全ての非自治領土が、自治権及び独立権の行使を完了するまでの「国連非植民地化委員会」(the UN Decolonisation Committee)の存続
・国連に先住民族のための常設フォ−ラム設立
・工業国の有毒廃棄物の発展途上国への投棄の禁止
 ・外国軍隊の基地を閉鎖すること

5 人種、エスニック、宗教及び性に対する不寛容を廃絶すること

 エスニック、宗教及び人種に対する不寛容な姿勢及び民族主義が、現代の武力紛争の主要な原因の一つになっております。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、次の諸点を支持します:

 ・政治上及び経済上の目的のための人種、エスニック、社会的性差及び宗教上の違いを政治的に操作することを排除する努力
 ・「人種差別撤廃条約」(the Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination)の実施
 ・2001年の「人種差別主義及び人種差別、外国嫌い、並びに関連する不寛容な姿勢に関する国連世界会議」(2001年)(the United Nations World Conference on Racism and Racial Discrimination, Xenophobia and RelatedIntolerance)への準備
・世界の司法制度への「差別煽動罪」(hate crimes)の編入
 ・同性愛嫌い(homophobia)の克服を意図した教育及び立法措置
 ・過去の差別の影響が矯正されるまでの積極的優先処遇措置(affirmative action)の推進

6 社会的性差(gender)にかかわる公正さを推進すること

 未だに大半の社会に蔓延している「男らしさ」(machismo)の代償は、このような規準によりその選択肢が狭められている男性にとっても、また戦時であれ平時であれ、絶え間なく暴力行為に苦しめられている女性にとっても高くついています。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、次の諸点を支持します:

 ・あらゆる決定及び政策立案の公式の場への相当数にのぼる女性の積極的な参加

 ・平和の創造者としての女性の能力を認識し、採用する努力

 ・「女性差別撤廃条約」(the Convention on the Elimination of all Forms of Discrimination Against Women)の実施

・暴力を永続化させる歪められた社会的性差の役割の再定義

7 子ども及び若者を保護し、尊重すること

 子ども及び若者は不当に利用され、また犠牲にされ続けています。特に武力紛争の状況においては、子供に対する加害が、紛争の結果もたらされるだけでなく、戦略の一環として行われることがしばしばあります。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、次の諸点に関するイニシアチブを支持します。

 ・少年労働及び少年兵徴用の撤廃を含む「子供の権利条約」(the Conventionon the Rights of the Child)の世界的な採択及び実施を確実にすること

 ・武力紛争状況の最中にある子供に対する人道的援助及び保護を確実にすること

 ・武力紛争に巻き込まれ、精神的損傷を受けた子供の機能回復訓練及び社会復帰を図ること

・平和の創造の過程に若者を参加させることにより、平和の創造者としての子供及び若者の役割を認識すること

8 国際的な民主主義及び公正な世界政治(Global Governance)を推進すること

 社会の全ての階層における民主主義の推進は、武力による支配を法による支配と置き換えるための絶対に必要な条件となります。代議制による、より民主的な意志決定のプロセスを確立することは、拘束力と執行力に富む公正な司法機関の下で、一定の制約の下に責任ある地域及び世界の政治を達成するために絶対に必要な条件です。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、次の諸点を支持します。

 ・国連総会の民主的強化、並びに国連活動の全ての段階において、助言する権限を市民社会の代表者、非政府組織及び議員に対して拡大することを含む国連の改革及び民主化

 ・国際法遵守を通して平和を促進可能な地域機関設立の推進

 ・小規模国家の利益を保護するため、国際金融機関(IFIs)により使用されている加重投票方式(weighted voting formulars)の修正

 ・「グロ−バル・ガバナンス」(地球統治)への市民社会の参加を含む「グロ−バル・ガバナンスに関する委員会」(the Commission on Global Governance)の勧告

・より公平な理事国構成を実現し、またその意志決定のプロセスをより透明にするための国連安全保障理事会の改革

9 積極的非暴力を宣言すること

 暴力と戦争とは本来人間に固有のものであると一般的に考えられていますが、証明されたことは一度もありません。実際、多くの伝承及び事例によれば、積極的な非暴力は社会変革を達成する効果的な方法であることが示されています。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、次の諸点を支持します。

 ・軍国主義の栄光化を積極的非暴力の模範的例と置き換えること

 ・メディア及び日常の会話からの暴力を一掃、あるいは少なくとも削減することを求めるキャンペ−ン

 ・「国際連合の平和の文化の年」(2000年)(the United Nations Year for the Culture of Peace)及び「平和の文化及び世界の子供に対する非暴力の十年」(2001年−2010年)(Decade for a Culture of Peace and Non-violence for the Children of the World)に関連する諸活動

10 地方の共同社会における暴力の一掃を図ること

 地方の共同社会における暴力が、国家及び国際的な紛争へと結果的に発展することがあります。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、次のイニシアチブを支持します。 

 ・往々にして経済的機会に対する制約の結果、社会から疎外され、その社会的疎外感の故に、暴力へと走った若者及び一部の長老を社会に再統合すること

 ・武器の回収、平和キャンプ及び紛争解決教育を含む地方の平和を求めるイニシアチブを推進すること

11 「暴力の文化」の「平和と正義の文化」への転換において、世界の宗教からの協力を要請すること

 宗教は、これまで戦争の原因ともなりましたが、同時に平和の文化の発展を可能にする潜在的な能力をも秘めています。宗教には、平和への道を実現するために協力してもらわねばなりません。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、次の諸点を支持します。

 ・軍縮及び世界平和を実現する努力における異宗教間、宗派間の協力

 ・様々な宗教の共存及び宗教間の和解の推進


国際人道法及び国際人権法並びにその制度

12 国際刑事裁判所(the International Criminal Court)の設立を求める世界的キャンペ−ンを推進すること

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、集中的な教育及び批准運動、並びに「国際刑事裁判所国連準備委員会」(the United Nations Preparatory Commission for the International Criminal Court)の会議への積極的な参加を通して、常設国際刑事裁判所を設立するための地球的規模の運動の拡大を図る「国際刑事裁判所を求めるNGO連合」(CICC)の活動を支持します。CICCは、「ハ−グ平和アピ−ル」において新しいNGOの協力者を求め、また「地雷の禁止を求める国際キャンペ−ン」のような別の国際条約キャンペ−ンからの支持の拡大とネットワ−ク作りに関する貴重な教訓に基づき活動の拡大を図ろうとしております。

13 収斂傾向(convergence)が高まりつつある国際人道法及び国際人権法の分野の緊密な関係樹立を推進すること

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、人権法及び人道法侵害の犠牲者に対する効果的な保護のために極めて重要な展開である国際人道法及び国際人権法分野間の収斂傾向の増大に気付いております。「ハ−グ平和アピ−ル」は、保護の際の二法間の致命的なギャップを埋め、また国際法の極めて重要な領域であるこれら二法の調和を図るため、双方の分野における法の発展及び実施面での改革を支持します。

14 国際刑事法廷(the International Criminal Tribunals)に対する支持の強化を図ること

 旧ユ−ゴスラビア及びルワンダに対する国際刑事法廷は、第二次世界大戦の終結以来、国際人道法及び国際人権法違反の廉で、個人の刑事責任を問うために国際社会が講じた最初の措置を象徴するものです。「ハ−グ平和アピ−ル」は、罪を咎められないままでいる戦争犯罪容疑者の告発及び逮捕を求めます。更に、「ハ−グ平和アピ−ル」は、法廷の諸慣行及び審議方法、並びに法廷が偏向しているという非難に対処する必要性、並びに法廷及び市民社会、地域、国際組織間の建設的な相互協力関係の樹立を支持する必要性に焦点を当てます。「ハ−グ平和アピ−ル」は、カンボジャにおけるジェノサイド及び人道に対する犯罪を審理するための国際刑事法廷の設立に向けての国連の努力を支持します。

15 国際犯罪に対して国際司法権を執行すること:ピノチェト(Pinochet)の先例からの発展を図ること

 戦争犯罪、平和に対する罪及び国際的に承認されている人権の諸原則の侵害は、単なる一国家の問題と言うよりはむしろ国際的な問題であることが現在一般的に認められております。たとえ国際刑事裁判所が設立されたとしても、国際犯罪を犯した人物を一人残らず国際刑事裁判所あるいはルワンダ及び旧ユ−ゴスラビアの場合のように特別法廷で裁くことは、不可能なことでもあり、また実行すべきことでもありません。市民社会及びそれぞれの国内の裁判所が、スペインがピノチェトの裁判において果たそうと努力しているように、その役割を果たす必要があります。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、世界諸国の司法機関が、人権、特に子供に対する人権の重大な侵害が無罪とならないことを確実にするため、不法行為に加えて上述のような犯罪に対して国際司法権を執行するという原則を、それぞれの国内法に取り入れるよう要求します。

16 より包括的な国際司法制度という観点から、国際司法裁判所の役割の改革及び拡大を図ること

 国際司法裁判所は、より効果的で統合的な国際司法制度の中核として機能しなければなりません。「ハ−グ平和アピ−ル」は、より包括的な国際司法制度を促進するという目的の下に、国家、地域及び国際司法機関の相互関係の強化を図る諸提案を推進します。この目的を促進する諸イニシアチブには、市民社会、地域及び国際組織が国際司法裁判所をより利用し易くするための勧告的意見及び紛争解決機能の拡張、国家に対する強制的な管轄権の制定、及び紛争解決のための代替機関と国際司法機関との協力関係の推進が含まれています。

17 武力紛争犠牲者に対する保護を強化し、補償の給付を図ること

 第二次世界大戦以降、紛争の焦点が劇的に変化しました。その結果、一般市民が攻撃目標にされることがしばしばあり、紛争での死傷者の数は、戦闘員の死傷者数を大幅に上回っています。「ハ−グ平和アピ−ル」は、自国内難民、国外難民、女性及び子供を含め通常兵器の拡散及び武力紛争により最大の被害を受ける犠牲者に対するより強固な保護措置を支持します。更に、「ハ−グ平和アピ−ル」は、特定の国家に所属しない戦闘員(non-State combatants)及び準国家的、準軍事的組織(quasi-state paramilitary forces)による国際人道法及び国際人権法の規定に対する一貫した遵守を求め、また武力紛争状況における国連の役割を検証します。最後に、「ハ−グ平和アピ−ル」は、時宜を得た形で犠牲者の必要に応ずる国家、地方及び国際的な犠牲者補償基金及びその他の補償措置の設立を通して、武力紛争及び人権侵害の犠牲者が社会復帰を果たせるよう要求します。

18 武力紛争時の女性に対する暴力行為を禁止すること

 今日、戦争、武力紛争及び軍事基地の存在は、女性、若者及び子供にかってない大きな影響を及ぼしています。女性とその家族が、強姦、暴行、強制売春及び性的奴隷の目標にされることが益々増えています。更に、自国内難民や国外難民にされ、また駐留軍により犯された不法行為に対して権利の行使を差し控えるよう自国な問題にも直面しています。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、女性に対する基本的な保護が国際刑事裁判所規程に組み込まれることを支持し、また武力紛争時の女性の権利及び尊厳が保証されるように、国際法の発展と実施における更なる改革を支持します。

19 少年兵の従軍阻止

 18歳以下の30万人以上の子供達が、世界各地の武力紛争に現在従軍しているものと信じられています。更に何十万人もの子供達が、軍隊あるいは軍事活動集団の一員であり、今すぐにも戦場に送り出される可能性があります。「少年兵の従軍阻止連合」(the Coalition to Stop the Use of Child Soldiers)、UNICEF及びICRCは、徴兵年齢を十八歳まで引き上げるためのキャンペ−ンを積極的に展開しています。更に、各国政府及び全ての軍事活動集団に、十八歳以下の子供の徴用を中止すること、即刻少年兵の動員を解除すること、少年兵の様々な要求を平和維持、平和協定及び動員解除計画に組み入れること、またこの非道な慣行の廃止及び旧少年兵のリハビリテ−ションと社会復帰を訴え続けています。「ハ−グ平和アピ−ル」は、その他の非政府組織にもこのようなキャンペ−ンに貢献し、子供の権利を保護できる別の手段を探究する機会を与える所存です。

20 犠牲者による国際人道法及び国際人権法に基づく濫用者の責任追及を援助すること

 国家及び地域における告訴及び起訴に関する最近の傾向を見ると、重大な人権法及び人道法侵害の犠牲者が、濫用者の責任を追及し易くなっています。このような権利は、欧州及び米州人権裁判所(the European and Inter-American Courts of Human Rights)を含むいくつかの国内の裁判所及び地域の法廷に実在しています。そしてこの権利を行使して、傭兵、兵器の生産及びその他の企業といった私設部門の個人に対する告訴が行われてきました。「ハ−グ平和アピ−ル」は、この権利が国際司法秩序全体に拡大されることを支持します。

21 人権擁護者、人道的活動家及び内部告発者を保護すること

 1998年には、平和維持軍の兵士より多くの国連の民間人代表が、活動中に殺害されています。更に、数え切れないほどの国家、地域及び国際組織の人権擁護者及び人道的活動家が、その任務中に殺傷されています。「ハ−グ平和アピ−ル」は、任務に携わっている人権擁護者及び人道的活動家に対する保護策の改善、及びこのような個人の権利の侵害を監視したり、少なくすることが可能な機構を提案かつ要求します。更に、「ハ−グ平和アピール」は、政府、企業及びその他の機関による国際法の侵害、あるいは不法行為を、自らの職歴、また時と場合によっては、生命の危険さえも冒して暴露する人々である内部告発者に対する保護の強化を求めます。

22 国際法の執行に当たり、国家、地域及び国際レベルの諸機関が利用できるよう、草の根組織を教育すること

 草の根組織が、地域及び国際機関を通して、地方又は自国において人道法及び人権法の侵害に対する矯正措置を求める機会が益々高まっています。「ハ−グ平和アピ−ル」は、上述の矯正措置、及びこれらの機関を制約されることなく利用できることを確実にするため、草の根組織が共同あるいは単独で活動できる方法についての理解を深める教育及び意識改造計画を提案します。更に、「ハ−グ平和アピ−ル」は、活動家が、自らの地域社会において、侵害者を識別し、その行為にたいして責任を問う活動へどのようにかかわればよいかを学習する機会を提供します。

23 国際人道法及び国際人権法に関する公的な知識、教育及び理解の増大を図ること

 武力紛争に対する国際的なかかわりの可能性が大きくなるにつれて、国際法の要件に対する意識の深化及びその遵守を図るために、国家の軍事機関に対する同様な教育と平行して、平和維持軍に対する人権及び人道についての効果的な教育の必要性が一段と高まっています。更に、国内の立法者及び法の執行者の間に、国際人道法及び国際人権法に対する意識を一層深める必要があります。「ハ−グ平和アピ−ル」は、法律家、立法者、裁判官及び政治家に対する国際人道法及び国際人権法の教育を義務化するよう要求します。

24 人権保護を、紛争防止、解決及び紛争後の再建過程に統合すること

 紛争への国際及び地域による介入は、紛争解決及び紛争後の再建の領域において増加傾向にある現象です。国際社会が、紛争後の社会における政治、司法、社会及び経済制度再建の責任を負うことが益々多くなっています。「ハ−グ平和アピ−ル」は、長期的、体系的な人権の保護が、このような過程の中で中心的な枠割りを確実に果たせるような措置を支持します。

25 真相究明委員会(Truth Commission)及び政治犯特赦(Political Amnesties)の成功及び失敗事例に基づき発展を図ること

 紛争後の再建分野では、過去数十年に渡り顕著な新しい発展が目撃されています。特に、南アフリカにおけるように、真相究明委員会及び政治犯特赦は、戦争、武力紛争及びアパルトヘイトにより引き裂かれた社会を再建するための手段として脚光を浴びています。

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、過去の真相究明委員会及び政治犯特赦の失敗及び成功事例を検証し、同時に、ボスニア、東チモ−ル及びその他の地域における新しい真相究明委員会の設立を提案します。

26 人身保護令状(Habeas Corpus)の普遍的かつ効果的な制度を確立すること

 何千人もの人々が、毎年政治上の理由、エスニック問題に関連する理由及びその他の違法な理由で逮捕されています。これらの人々は、殺されたり、拷問を受けたりあるいは行方不明になる前に、本人あるいは代表者が、その窮状を訴えることのできる効果的な制度を必要としています。「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(the InternationalCovenant on Civil and Political Rights)の第9条は、地域又は超国家的な人権委員会あるいは裁判所へ訴える権利に加えて、迅速に機能する効果的な人身保護令状制度を付与されることにより強化されねばなりません。

27 戦争開始を民主的な管理の下に置くこと

 国家を戦争に巻き込む権限を、政府の行政あるいは軍事部門の手に専ら委ねることほど民主政治にとって致命的なことはありません。「ハ−グ平和アピ−ル」は、全ての国家及び国際組織に、自衛のため緊急行動を要する極端な場合を除き、武力紛争の開始には議会の承認を必要とするという憲法上あるいは制定法上の措置を講ずるよう求めます。


暴力的紛争の防止、解決及び転換

28 地域の能力(Local Capacities)を強化すること

 暴力的紛争が、解決の結果を背負って暮らしてゆかねばならない人々の願いをほとんどあるいはまったく考慮することなく、外部の関係者により「解決」されることが多すぎます。その結果、合意された解決が、短命に終わることがよくあります。もし暴力的紛争を防止、解決及び転換する努力が、長期間に渡り有効であり続けることを望むのであれば、その努力は、平和の構築に専念する地域の市民社会団体の強力な参加に基づく必要があります。このような「地域の能力」を強化することは、平和の維持には決定的に重要なことです。そして、その強化策は、教育、訓練及び社会におけるボランチア精神の養成に始まり、地域の平和構築イニシアチブの活動資金の増額及び地域の平和活動家の成果をメディアを通して浮き彫りにするといった様々な形で実施されます。

29 平和を維持する国連の能力を強化すること

 国連は、依然として多国間協力を通して世界平和を達成するための最大の頼みの綱です。国連のねらい及び目的に対する強力な市民社会による支持が、国際平和及び安全の保護者としてのその可能性を十二分に達成するためには、これまでにも増して決定的に重要です。特に、このような支持は、国連の一層の民主化をもたらす改革、また例えば、人道的介入のための国連平和常備軍(standing UN peace forces)の創設、及び国連平和活動のための代替資金源の確保を通して、暴力的紛争、大規模な人権侵害及びジェノサイドを防止する国連の能力を強化に向けられるべきです。

30 早期警報(Early Warning)及び早期対応(Early Response)を優先させること

 諸国政府及び政府間機関により、暴力的紛争を防止する努力に使われる財源は、特に、暴力的紛争が勃発した場合に必要となる活動(人道的介入、緊急援助、平和執行活動及び戦争により引き裂かれた社会の全体的な再建)に使われる財源と比較しても不足しています。市民社会は、紛争防止は可能であり、また、費用はもとより人命及び損害の観点からしても、暴力的紛争に対応するより好ましいものであることを率先して明らかにする役割を担わねばなりません。特に、次の事項が優先的に取り上げられるべきです。

(1)紛争防止へより多くの財源を割り当てること、(2)紛争の早期警報のためのネットワ−クを創設し、更に発展させること、そして(3)警報を受けて迅速に対応するために必要な政治的意志を作り出すこと。

31 民間の平和活動専従者(civilian peace professionals)の訓練を促進すること

 選挙監視者、人権活動家、あるいは一般的な監視者のいずれの場合であれ、平和の構築のための民間の活動家に対する需用が急速に増大しています。このような特別な訓練を受けた民間人を当てにすることのできる共同利用の場は未だ整ってはおりません。紛争解決、調停、交渉等の技を磨くための民間人(男女)に対する特別教育を更に推進し、また平和構築の任務を実行するために、これらの民間人の紛争地域への配置を促進する必要が大いにあります。長期的な目的は、すぐさま紛争地域へ介入するよう要請可能な、特別訓練を受けた「民間の平和活動専従者」の国際的集団の創設に絞られます。

32 制裁措置(sanctions)の行使を改善すること

 経済制裁措置の行使は、国際外交の最も非常な手段の一つであると言えます。制裁措置は、制裁措置が発動された社会の罪のない一般市民に過酷な苦難を強いるばかりでなくその社会構造をも破壊する力を備えています。コフィ・アナン(Kofi Annan)国連事務総長は、経済制裁措置が「より効果的で、害の少ない」(more effective and less injurious)なものになるよう要請してきました。この要請に応えるために、経済制裁措置の影響が、その行為を改めさせることを意図した該当国の指導者から、罪のない一般市民へと転換されない形で目標の達成が図れるより良い手段を開発する必要があります。子供の利益を考えると、子供及び最も被害を受けやすいその他の集団への影響を監視するための機構を設立することが必要であり、また義務的で、即座に執行可能な人道的免除の無いまま、制裁措置が発動されてはなりません。

33 人道的介入のための機構を強化すること

 将来のジェノサイド行為及び人権の重大な侵害行為の回避を助成するために、人道的介入を通して危険に晒されている人命の保護が可能となる機構を開発することが必要です。

34 平和構築(Peace Building)を作り出すこと

 紛争及び戦争には、社会的性差が明らかに現れます。戦争は、特に女性の出産後においては、社会的性差による仕事の区分が最も明確な領域と言えます。従って、女性と男性は、紛争及び戦争を異なった形で体験し、また権力及び意志決定過程へのかかわり方も自ずから違ってきます。(1)男女平等と平和構築との相互関係の理解にねらいを定めた特別なイニシアチブ、(2)平和構築イニシアチブへの参加を図るための女性の能力の強化、及び(3)紛争解決の意志決定段階への平等な女性の参加が必要となります。このような必要に応ずるため、諸国の政府は、全ての和平交渉に市民社会の女性の代表を含めることを約束しなければなりません。和平及び安全保障機関は、その活動と活動方法とに、女性を配慮した視点を組み入れなければなりません。また、市民社会は、国際的な女性の平和ネットワ−クを設立、強化しなければなりません。

35 若者に力を付けること

 戦争は、無責任な指導者により始められますが、最も被害を受ける犠牲者は、市民及び徴集兵としての若者達です。若者の体験、新鮮な視点及び新しい考え方を、社会の全ての階層が、聞き入れ、取り入れ、そして実行しなければなりません。紛争事態の最中にある若者が、伝統的な偏見を克服し、紛争を創造的に解決し、また意義ある和解と平和構築過程とに関与する方法を見い出すだけの力量を備えていることは十分に証明されています。若者が平和構築に参加する機会を得ることは、暴力の悪循環を裁ち切り、また紛争を減らしたり回避するために極めて重要なことです。相互の尊敬、信頼及び責任に基づく真に世代間の交流と呼ぶに相応しい交流の中で進んで学びたいという気持ち、及び私たちのビジョン、心の広さ、連帯感を分かち合いましょう。

36 公の場に代表者を出していない民族(Unrepresented Peoples)の自決権を支持すること

 今日繰り返し起こる多くの暴力的紛争は、国家と公の場に代表者を出していない民族との間に起きており、そして極端な力の不均衡がその特徴となっています。その結果、公の場に代表者を出していない民族が、自らの力では、平和的な紛争解決のための交渉の場に政府を着かせることができない場合が多く見られます。この事実により、これらの紛争が何十年もの間続けられる傾向が生まれ、また結果的に、大きな被害と文化の崩壊がもたらされることになります。これらの紛争の原動力となっている力の不均衡に対抗するには、世界の諸政府及び非政府組織の共同体が、民族の自決権を積極的に支持し、これらの紛争を優先事項として取り上げ、またその非暴力的な解決を促進することが必要です。

 自決権の否定が、数多くの長期間に渡る紛争を結果的に引き起こしてきました。そして、その大半は未解決のままです。紛争勃発の原因は、自決権そのものではなく、むしろ自決権の否定であることを認識することが重要です。従って、国際的に承認されている自決権が、紛争防止及び紛争解決の手段として積極的に推進されることが決定的に重要なのです。

37 市民社会組織間の連合の構築を強化すること

 紛争防止、解決及び転換の領域における市民社会活動の多様性が、市民社会の主要な力の源の一つであることは確かです。しかし、市民社会活動の効力は、しばしば同じ分野で活動している組織間の協力関係の欠如によって阻害されています。乏しい財源が仕事の重複により浪費されたり、また相乗効果を達成することができないという結果に至ることがしばしば見受けられます。この分野における効果を高めるには、市民社会組織間の連合及び後援者団体の構築を推進するためのネットワ−クを創設することが決定的に必要です。

38 地域及び小地域の平和を実現する能力を強化すること

 例えば、欧州安保協力機構(OSCE)(the Organization for Security and Cooperation in Europe)、アフリカ統一機構(OAU)(the Organization for African Unity)、東南アジア諸国連合(ASEAN(the Association of South Asian Nations)、米州機構(OAS)(the Organization of American States)のような形で、平和のための地域の能力の強化を図ることは、ほとんど無視されてきた紛争が分相応の脚光を浴び、解決への努力が図られることを確実にする一助となることでしょう。

39 多重トラック外交(Multi-Track Diplomacy)を主流にすること

 次の世紀では、「多重トラック外交」を暴力的紛争を防止、解決及び転換するための基本的路線にするよう努力しなければなりません。多重トラック外交は、政府、非政府組織、宗教団体、メディア、企業、一人一人の市民といった様々な社会分野を、紛争の解決及び平和の構築にかかわらせます。個人及び組織は、個々に機能するより協力関係の中で機能するほうがより効果的であり、また紛争状況には、体系的な取り組みが必要とされる大規模で複雑に絡み合った関係者と要因が必然的に伴うというのが、平和の構築に関する学際的な見解です。システム内のそれぞれの「トラック」は、それ自身の視点、解決手段及び財源を持ち寄ります。そしてその全てが、平和の構築過程において求められねばなりません。

40 平和構築を積極的に支持する道具としてメディアを活用すること

 メディアは、暴力的紛争状況において、決定的に重要ではあるが、議論の余地を残す役割を果たします。緊張を一気に高めたり、あるいは鎮静することのできる力を持っています。従って、暴力的紛争の防止や解決、また和解の促進において極めて重要な役割を果たす力量を備えています。紛争について報道するというその伝統的な役割とは別に、様々に選択可能な方法で平和の構築のためにメディアを利用することができます。特別な注意が次の点に向けられる必要があります:(1)メディアが戦争の大義より平和の大義に奉仕できるよう、紛争状況の客観的、非扇情的な報道を推進すること、そして(2)平和の構築及び和解の促進を図るために、創造的な新しい方法でメディアを利用する道を更に探究すること。

41 政策の紛争影響査定(Conflict Impact Assessment)を促進すること

 市民社会は、国家、二国間の機関及び国際機関、並びに国際金融機関が、その政策の立案と実施に、(1)提案されている経済政策及び開発計画の紛争影響査定の導入、及び(2)制度の制定と人的資源の強化を図る要素(例えば、調停センタ−、交渉技術の訓練、紛争解決のための教育、寛容形成及び共存の推進)を、様々な形態の紛争解決及び平和の構築手段に組み込むことを含む紛争防止の観点を取り入れるよう奨励する必要があります。


軍縮及び人間の安全保障に関するアジェンダ

42 戦争の防止のための地球活動計画を実施すること

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、人権に対する保護措置を補完し、下記の主要な段階を経ながら非暴力的紛争解決の強化を図る「戦争の防止のための地球活動行動計画」(Global Action Plan to Prevent War)を支持します:(1)地球及び地域的安全保障機関の強化を図ること;(2)攻撃及びジェノサイドに対する単独国家による武力介入を多国間の防衛と置き換えること;(3)防衛的地球安全保障システムの樹立をめざして、軍備、兵器及び軍事費の大幅かつ段階的な削減を交渉すること。

43 軍事予算を削減し、その財源を人間の安全保障計画に振り替えることにより世界経済の非軍事化を図ること

 21世紀の平和は、今世紀の軍事支出から人間の安全保障を保護するための民間計画への切り替えを要求します。軍縮は、兵器、軍備及び軍事予算の大幅な削減を伴います。非軍事化には、世界の人々の安寧を保証する計画、即ち食糧、住居、教育、仕事、健康管理、安全及び平和といった基本的人権を考慮した計画へ資源を割り当てることにより軍事経済から平和経済への転換を図ることが必要です。非軍事化を進めるためには、国連憲章、非軍事的安全保障機構及び調停制度を全世界が遵守することが必要となります。

 軍縮及び非軍事化への第一歩として、「ハ−グ平和アピ−ル」は、五年間続けて、一年当たり5%の軍事費の削減とこの財源の人間の安全保障計画及び平和教育への再配分を求めている「女性による平和の請願(Women's Peace Petition)」を支持します。

44 核兵器の廃絶を求める国際条約の交渉及びその批准を図ること

 核兵器が引き続き存在すること、並びにその脅威及び事故、計算ミス、意図的な使用が、地球上の全ての人間と生命体の存続を脅かしています。「核拡散防止条約」(the Non-Proliferation Treaty)の第?条及び国際司法裁判所の命令に基づく法的義務に従うために、全ての国家は、五年以内に、核兵器の生産、使用及び使用による威嚇を禁止し、また核兵器廃棄の査察及び執行を規定する「核兵器禁止条約」(a Nuclear Weapons Convention)を交渉しかつ締結すべきです。

 第53回国連総会により採択された「ニュ−・アジェンダ連合」(the New Agenda Coalition)の決議は、核戦争の危険性を回避し、また全面的な核軍縮に向けての交渉を開始するための実際的な措置を即刻講ずるよう核保有国に求めています。

 核軍縮に向けての過渡的措置には、次の事項が含まれています:
 包括的核実験禁止条約(the Comprehensive Test Ban Treaty)の批准;
 弾道ミサイル禁止条約(the Anti-Ballistic Missile Treaty)の遵守;
 非常警戒態勢の解除;
 非先制使用;
 地域安全保障協定の非核化;
 非核地帯の拡張;
 核兵器及び施設の透明性;
 核分裂性物質及び未臨界実験の禁止。

45 軽火器、小火器及び銃を含む通常兵器の拡散及び使用を防止すること、並びに個人の安全に対する保護措置を講ずること

 小火器、軽火器及び地雷は、人間の安全に対する大きな脅威となっています。一般市民の殺害理由の大半はその使用によるものであり、また兵士として幼い子供が安易に利用される原因ともなっています。完全な動員解除計画には、武器の回収とその破壊が必要であり、また旧兵士に有形の手当と代わりの職業を与えねばなりません。「ハ−グ平和アピ−ル」は、「小火器に関する国際行動ネットワ−ク」(the International Action Network on Small Arms)によるキャンペ−ンを支持し、また全ての国家に、軽火器、小火器及び銃を含むあらゆる種類の通常兵器の輸出に関する包括的な国際行動規範(a comprehensive global code of conduct)を交渉し、かつ実行するよう求めます。

 兵器の流通を阻止する手段には、次の事項が含まれます:
 国家間の合法的な移譲の管理統制;
 自国内の小火器の使用及び貯蔵の監視;
 人権侵害者への移譲を含む不法な移譲の阻止;
 紛争地域からの余剰兵器の回収、排除及び破壊;
 透明性の増進及び責任の所在の明確化;
 暴力の文化を逆転することによる需用の削減;
 公的安全保障機関の改革;
 兵器非保有の基準の作成;
 旧戦闘員に対するより効果的で持続可能な解体及び再統合の推進。

46 地雷禁止条約の批准及び実施を図ること

 全ての国家は、1997年12月に署名のため公開され、そして1998年3月1日に発効した1997年の地雷禁止条約(Land Mine Ban Treaty)に署名及び批准し、それを遵守すべきです。

 地雷の除去という重要かつ緊急を要する仕事に加えて、「地雷の禁止を求める国際キャンペ−ン」(the International Campaign to Ban Landmines)は、諸国の政府が、「予防的対地雷行動」(preventive mine action)の一環として地雷の貯蔵を廃棄することに高い優先順位を置いています。更に、全ての国家が、地雷除去活動を進めるよう強く求めています。貯蔵及びその他の地雷に関連する情報についての透明性を高めることが極めて重要です。犠牲者の援助、地雷除去、地雷に対する正しい認識を深めるための教育及び子供と地域社会のリハビリテ−ションのために、より多くの財源が割り当てられる必要があります。

47 劣化ウラン及び宇宙への兵器配備の禁止を含む、新兵器及び新軍事技術の開発及び使用の防止を図ること

 「ハ−グ平和アピ−ル」は、新兵器(例えば、劣化ウラン)及び技術の影響を査定し、新兵器が国際法に違反するか否かを決定する機構を求めます。劣化ウラン兵器は、少数民族差別の防止及び保護に関する国連人権小委員会(United Nations Human Rights Subcommittee on the prevention of discrimination and protection of minorities)により「大量破壊又は無差別な影響を及ぼす」兵器の一つに挙げられてきました。「ハ−グ平和アピ−ル」は、国際社会が、このような兵器の生産、移譲及び使用を禁止する問題に取り組むよう求めます。

 「宇宙空間平和利用条約」(1967年)(the Outer Space Treaty)は、いかなる国家による宇宙への大量破壊兵器の配備をも禁止しています。91カ国により批准されたこの条約は、国家は、地球環境の有害な改変に加えて、宇宙に有害な汚染をもたらす可能性のある活動を回避すべきだと規定しています。宇宙への兵器の配備を防止するために、この条約は万国により遵守される必要があります。

48 生物兵器禁止条約及び化学兵器禁止条約の国際的な遵守及び実行を奨励すること

 全ての国家は、あらゆる大量破壊兵器の廃絶を求める世界的な努力の一環として、生物兵器禁止条約(BWC)及び化学兵器禁止条約(CWC)に批准する義務があります。全ての国家は、なんらの条件も付けずにこれらの条約を実行するための強力な国内法を採択し、またこれらの条約への遵守強化を図る現在の活動に参加すべきです。いかなる国家も、これらの条約の実施を阻害するような行政上及び立法上の措置を講ずるべきではありません。BWC及びCWCに従う全ての締約国は、これらの条約に含まれる二重目的用の薬剤及び設備の取引に関して平等な扱いを受けるべきです。国際的に責任の所在を明確にするため、輸出管理は、両条約の枠内で設立されている機構により行われる必要があります。BWCの締約国は、平和利用のための細菌に関する情報及び資料の交換を奨励している第X条の強化を図るべきです。研究機関、専門家の協会、及び個々の科学者は、戦争用の化学及び生物薬剤の開発及び使用を推進する研究あるいは教育に承知の上で従事しないことを誓約しなければなりません。平和目的か否かが曖昧な生物及び化学薬剤の開発は、たとえこのような活動が、防衛目的のためであっても、禁止される必要があります。

49 軍需品生産、実験及び使用による環境及び健康に対する影響について、国家の責任を明確にすること

 特に核兵器所有国は、核実験、生産及び使用が健康及び環境に与える影響に対する責任を認めるべきです。「ハ−グ平和アピ−ル」は、全ての軍事活動、並びに環境及び健康への影響についてより高い透明性及び責任の所在の明確化を求めます。諸国の政府は、軍の旧実験場の監視、浄化及び現状復帰のための計画、並びに旧実験場の従業員、実験場及び付近の地域社会の民間人と軍関係者に対する補償についての計画を提案し、あるいは拡大する必要があります。

 工業国における核及び化学兵器の廃棄が、有毒な化学及び核廃棄物の発展途上国への不法投棄をもたらすようなことがあってはなりません。国家及び企業は、全ての軍需生産、軍事基地とその他の施設での実験及び使用による影響に関する情報の透明性を高め、また復旧を容易にするために、情報を入手可能な状態にしておく必要があります。

50 戦争を無くす市民社会運動を構築すること

 全ての核兵器の廃絶を求める困難な交渉の実現、また小火器及び軽火器の流通の阻止に加えて、過去の輝かしい成果(例えば、化学及び生物兵器、地雷及び核実験を禁止する諸条約)を保護し、完全に実施するための諸制度及び能力を構築することが、戦争を無くすためには必要となります。「ハ−グ平和アピ−ル」は、軍事力を抑制し、非暴力及び国際法の遵守を受け入れる新しい国際行動規範による暴力の無い世界を心に描いています。市民社会は、国際関係の民主化を進め、また国際調停機関の強化を図る際の中心的な役割を担っています。市民社会組織及び市民は、人々の要求を国際舞台に直接持ち込み、そして「新しい外交」(a new diplomacy)を創造してきました。「ハ−グ平和アピ−ル」は、21世紀の国際及び多国間の軍縮並びに安全保障交渉における市民社会の重要な役割を確言します。

以上 終)


※ ハーグ平和アピール世界市民平和会議(略称=ハーグ平和市民会議)は、オランダのハーグにある国際会議センターで、5月12−15日の4日間、開催されました。この文書は、このハーグ平和市民会議に提出されたアジェンダ(課題及び行動計画)です。