日本の核保有と憲法(国会審議抜粋)
参議院 予算委員会(委員長:苫米地義三)
1957年4月25日(木)午前10時31分開会

○湯山勇君 自衛権の行使に必要な力というものは、これは戦力でない。そうだとすれば、この、たとえば駆逐艦というようなものは、どこでも戦力と数えております。しかも駆逐艦という言葉が出たのは、今国会が初めてだと思いますが、駆逐艦であっても、あるいは、もっと端的に言えば戦術的な原子兵器であっても、自衛のためであれば、これは戦力でない、こういうふうに総理は解釈しておられますか。
○国務大臣(岸信介君) いわゆる、ただ単に戦力という言葉だけをあげてきまして、その戦力がどうであるかということについては、いろいろなまた解釈なり議論があろうと思いますが、要するに、ここで問題になりますのは、憲法で禁止している戦力に入るか入らないかという解釈問題であろうと思います。私は、これはやはり一つの国が持つところの、急迫不正の侵略に対してわれわれが自衛的にこれを防衛するという力というものは、やはりこれは相対的なものだと思います。先ほど来、いろいろ議論がありまして、一体日本に対する急迫不正の侵略がどういう形で出てくるか、どういうことを予想しているのかということで、いろいろな御質問がございましたが、これは、あらゆる観点から十分国際情勢や、また日本を取り巻くところのいろいろな事情を十分検討して、われわれの安全を保障し、われわれみずからが他から今言ったような侵略を受けない、受けた場合においてこれを阻止するという力として考えるわけでありまして、私は、現在われわれが企図しておる防衛力の増強の程度においては、憲法の禁止しているいわゆる戦力には当らない、こういうふうに解釈しております。
○湯山勇君 原子兵器の……。
○国務大臣(岸信介君) 原子兵器という問題も、先ほど来、いろいろオネスト・ジョンが原子兵器であるかどうかというようなお話もありましたが、私は、とにかく原水爆を中心としている核兵器というものは、日本に持ち込みをさせないということを強く繰り返して申し上げておりますが、従ってそういう意味におけるこの原子兵器というものは、私は今の状況において、いわゆる自衛の意味において、日本は持つ必要のないことであり、また持つのは適当でない、かように考えております。
○湯山勇君 重ねて今の点についてお尋ねしたいのは、核兵器というものが憲法で許されていない兵器だと、こう御判断になるかどうかであります。アメリカの方に行って、原子兵器の持ち込みを断わると言われますけれども、日本では、憲法でも原子兵器は持てないことになっておる、こういうことが足場になるかならないかということは、これは非常に訴える力の強弱に影響もあると思います。ただ単に国民感情からということでなくて、そういう点から核兵器というものは、憲法上持てないというように判断しておられるかどうか伺いたいと思うわけです。
○国務大臣(岸信介君) 私、専門的の言葉として正確であるかどうかということは、なお検討する必要があると思いますが、いわゆる、私は核兵器と称せられるところのものは、これは、今申しましたように、日本が日本を自衛する、憲法の自衛権の範囲でもってわれわれがこの国を自衛するという立場から、現在の状態においてこれを持つ、あるいはこれを持ち込むということは、これは許せない問題であるという考えに立っております。ただ、いわゆる誘導兵器がことごとくいわゆるこれに当るかどうかというような点におきましては、私は、これは十分一つ検討してみなければ――もちろん、この兵器の科学的発達とともに、私どもが量よりも質に重きを置いて自衛力を増強しなければいかぬ、それでなければほんとうの日本の防衛なり、安全を期するわけにいかないという点から、そういう科学的の進歩を全然無視した兵器でもって防衛されると、装備でもって防衛されということは、これは私考えられないと思いますけれども、原水爆であるとか、あるいはこれを中心としたような核兵器と今日言われておるところのものは、私はこれは日本の自衛の何に入らないと、こう思っております。
○湯山勇君 ただいまの点は、核兵器と言われておるものは――私は誘導弾の問題には触れておりませんから、核兵器と呼ばれておるものは、これは明かに憲法第九条の上から工合が悪いという、総理がお考えを持っておるということを確認したいと思うのでございますが、よろしゅうございましょうか。
○国務大臣(岸信介君) 今現在の、この言われておる核兵器というものは、私は、今日の憲法の解釈において、自衛権の立場からいって、これは憲法上適当でない、こういうように思っております。

参議院 内閣委員会(委員長:亀田得治)
1957年4月25日(木)午後2時27分開会

○委員長(亀田得治君) 防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案を一括して議題に供します。両案について御質疑のおありの方は、順次御発言を願いますが、その前に、昨日の質疑に関連して、小瀧防衛庁長官から発言を求めておられますから、この際発言を許可いたします。
○国務大臣(小滝彬君) 昨日、総理、法制局長官、私が核兵器について答弁いたしましたことに対して、そこに一致しない点があるではないかという御質問もございましたので、その後速記録もよく調べまして検討いたしましたが、私どもの気持といたしましては、それで何ら相違はないと思っております。しかし、この点をさらに明らかにいたすために、はっきりと今の政府の見解を申し上げます。
 現在、核兵器といわれているものは、原水爆が代表的なものであるが、その他のものも、伝えられるところによれば、多分に攻撃的性質を持つもののようである。そうとすれば、この種の核兵器をわが国がみずから持つことは、憲法の容認するところではないと考えられる。以上でございます。
○秋山長造君 ただいまの長官の御発言は、これは、先ほどもこの原文をだいぶ長い間読んでみたのですけれども、どらもはっきりわからない点があるので、あらためてお尋ねしますが、この途中にある「そうとすれば」という言葉ですね、「そうとすれば」というのはどこにかかるのですか。はなはだむずかしい日本文になっているので、どうも……。
○国務大臣(小滝彬君) 核兵器がどういうものかということにつきましては、日本の自衛隊はもちろん持っておりませんし、持つ意向はないし、政府の意向もそういう方針でありますので、この実体というものにつきましては、いろいろ資料によって調べておりますけれども、最近どの程度ほんとうに発達しておるものか、十分な判断を下しかねる実情でございます。しかしながら、大体私どもの承知しておりまするところでは、「そうとすれば」の前に申し上げたような性質のものと了解いたしておりまするので、それがすなわち核兵器であるとすれば、そういうものは憲法にも違反するであろうという趣旨でございます。
○秋山長造君 そうしますと、前置きとして、われわれとしては、核兵器なるものの全容というものもわからない。日本にもないし、また日本で使うつもりもないし、また、日本に外国から持ってくるつもりもないということを前提として、さらにこの文章がくるわけですね。だから、手っ取り早く、わかりやすく考えれば、もう初めの方を取ってしまって、要するに、われわれとしては、核兵器をわが国がみずから持つことは憲法の容認するところではない、もうこの一言で尽きるわけですね、内容は。実質的には、もうその一言と同じことなんですね、言われていることは。違いますか。
○国務大臣(小滝彬君) 先ほど申しましたように、核兵器というのの実体がはっきりわかりませんので、核兵器というものをこういうものと了解いたしまして、こう申し上げたわけでございます。
○秋山長造君 そうすると、やはり疑問が起ってくるのですが、こういうもりというのは、多分に攻撃的な性質を持つもの、こういうことだろうと思うのですが、そこで、その逆の解釈をすると、この攻撃的ということも、けさほど予算委員会でだいぶ議論があったようですが、それはまあそれぞれの主観によってまた違うとは思いますが、ここでは、常識的な意味での攻撃的という解釈をしなきゃしょうがないと思います。多分に攻撃的でない、多少は攻撃的かもしらぬけれども、多分に攻撃的というほどでもというようなものならば、核兵器といえども持ってもいいというような解釈も、理論的には出てくる可能性があるんじゃないかと思うのですが、その点はどうお考えになりますか。
○国務大臣(小滝彬君) 私どものこの憲法に対する解釈は、自衛権というものは国家にあると、そうして自衛力は持つことはできる。自衛力というのは、結局攻撃的なものであってはならないので、あくまで防御の一段階的なものでなければならぬ、こういう考え方であります。従いまして、そういう趣旨において、この核兵器なるものが攻撃的な性格を持っておるもののようでありまするから、そういう攻撃的な兵器は持たないという考えでございます。それがまた攻撃的なものを持つということになれば、憲法には抵触するおそれがある、こうした考えでございます。
○秋山長造君 核兵器というものは、多分に攻撃的な性質を持つものだというお話ですが、それならわかるのです。核兵器というものが、これはもうその本質的に攻撃的な性質を持った武器だと、こういうように解釈された上でのこういう文言なら、私はある程度了解がつくと思うのですけれども、そういうふうにやはり解釈しておられるのか、もう一ぺんはっきり承わりたい。核兵器というものは、本来本質的にいわゆる攻撃的な性質を持つものと、こう観念しておられるなら、それは話がある程度わかる。一口に核兵器といっても、それは攻撃的もあれば、防御的もある。だから、攻撃的は困るけれども、防御的な核兵器ならばいいじゃないかというような、拡張解釈が導き出されるような余地が多少とも残っているというところに、私どもこの問題を重ね重ね長官にお尋ねしておる理由があるわけなんですから、その点、もう一度はっきり伺いたい。
○国務大臣(小滝彬君) 核兵器と普通いえば、その代表的なものは原爆とか水爆とかいうようなものだろうと思います。まあ今後どういうものができるか、全然存じませんけれども、そうした核兵器という概念において、私どもは、そういう性格のものは憲法の規定に反するというのであります。
○八木幸吉君 大臣にお伺いしたいのですが、今お読みになりました御答弁は、政府の統一解釈、つまり総理も、あるいは法制局長官も、防衛庁長官も、三者ともお打ち合せになった結果の御意見でありますか。あるいはそれを推定されて、防衛庁長官だけの御意見でありますか。いかがでありますか。
○国務大臣(小滝彬君) これは統一した意見でありまして、今申しましたような意味において、いわゆる核兵器というものは、これは憲法に抵触するおそれがあるということでございまして、いわゆるという意味は、今申しましたような意味でございます。

参議院 本会議
1957年4月26日(金)午後2時39分開議

○亀田得治君 ただいま議題となりました防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を一括して御報告いたします。(中略)
 なお、昨日の委員会において、「核兵器の保有と憲法第九条との関係いかん」との点につきまして、「現在、核兵器と言われておるものは、原水爆が代表的なものであるが、その他のものも、伝えられるところによれば、多分に攻撃的性質を持つもののようである。そうとすれば、この種の核兵器も、わが国がみずから持つことは憲法の容認するところではないと考えられる」旨、小瀧防衛庁長官を通じて、政府の統一的見解が明らかにされました。この点に関し、さらに秋山、田畑、八木の各委員より、政府の見解のあいまいな部分について質疑を重ねたのであります。(後略)
○議長(松野鶴平君) 両案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。田畑金光君。
○田畑金光君 私は日本社会党を代表し、ただいま議題となりました防衛二法案について反対の意見を述べたいと思います。
 岸総理は、近く渡米するに当り、国防の基本方針、長期防衛計画を携行する手はずになっておりますが、今回の二法案は、これら長期計画における年次計画にほかなりません。編成装備の質的改善をはかる、これがため誘導弾の研究開発を行うというのが法改正並びに本年度防衛予算の内容でありますが、研究開発はやがて利用に至る前提であり、原子力体制に第一歩を踏み出したものと言わなければなりません。委員会における質疑応答を通じ明らかにされましたことは、攻撃的核兵器は憲法の認めるところでないが、防御的核兵器――小型核兵器保有は、憲法に違反しない。また、核兵器と言われるものがすべて憲法違反とは思われないというような、憲法の戦力解釈に新たな内容を付加し始めてきたのであります。戦力なき軍隊という吉田理論から、急迫不正の侵害があった場合は、敵基地をも攻撃することができるとする鳩山理論を経て、戦術的原子兵器の保有も可能であるとする岸理論の展開は、いずれ時間の問題であると予見いたします。目的のために手段を選ばず、これが歴代保守内閣の権力政治の実体でありました。労働者に法の順守を説き、公務員に法の尊重を求める前に、政府みずから憲法を守ることこそ、政治に折り目を正す上において、緊急の課題であると考えます。政府は、近く憲法調査会を発足せしめると言いますが、野党の参加なく、改正反対の立場に立つ第三者の参加なき調査会に何を求め、いかなる権威を求めようとするのか、およそ無意味と言わなければなりません。岸総理は、民主政治家として深く反省し、過去の罪跡を消滅したいというのでありますが、真に反省するならば、侵略戦争の廃墟の中から生まれた憲法を守り、教育基本法を尊重し、民主的公務員制度を堅持することこそ、反省の具体的立証であると思います。(拍手)岸総理は、過去の閲歴から見ても、いずれ岸体制の整備が内外にわたり実現した暁には、いよいよ腹をすえて憲法改悪に乗り出してくると思います。こういう背景の中に、平和憲法の精神をふみにじり、憲法を空文化する自衛隊の増強は断じて許すことはできません。(拍手)
(後略)

参議院 外務委員会(委員長:笹森順造)
1957年4月30日(火)午前10時19分開会

○森元治郎君 簡単に御質問申し上げます。核兵器と憲法に関する政府の統一的見解、この一点を伺います。核兵器が日本に導入されるということは、憲法の関係あるいは国の世論、海外の世論などから見て大へんな大きな問題になると思います。みすみすこれを容認してしまったならば、一部には核兵器の一部は通常兵器だというような議論も出てきた今日、われわれは看過することができないし、外務委員会としてもこの点を将来のためにはっきりと伺いたいと思います。総理の方は従来通り憲法解釈上核兵器は持てないのだと、ところが防衛庁長官は、政府が発表した統一見解にきわめて近いような発言で、全部が違憲だとは思わないと言っております。そうして統一見解の内容ははなはだあいまいで、「多分に攻撃的な性質を持つもののようである。そうとすれば」というふうに逃げております。また「わが国が自ら持つことは」と言って、アメリカ軍が持つならばわれわれの知ったこっちゃないというような逃げ道があるように感ぜられるのですが、総理の見解の方をわれわれはとった方が正しいのでしょうか。統一的見解の再統一が必要じゃないかと思うので伺います。
 それからもう一点は、国際的取りきめのできるまでは、核兵器による報復力だけが侵略に対する現在唯一の防衛手段であることは、不幸ながら明白だというのが原水爆を持っておる国の大体の一致した見解のようでありまするが、総理のこれに対するお考え、二つをお伺いします。
○国務大臣(岸信介君) 実はその核兵器という言葉で示されておるところのものが、どの範囲のどういうものであるかということについてのいろいろの見解が違うのじゃないかと思うのです。森委員も御承知の通り、われわれはやはり防衛を完備していく上から申しますと、いわゆる自衛の範囲内においては科学の進歩、すなわち装備の上につきましても、できるだけ科学的な研究も進めていって有効な装備を持たなければならぬことは、これは言うを待たないのであります。ただわれわれはあくまでも自衛のために、憲法の上からいうと自衛権というものになにであって、従って他を攻撃するという性格のものではないと思うのです。しかしなかなかそういう兵器そのものを、攻撃用の兵器と防御用の兵器というように分けられるかどうかというようなことにつきましても、これは議論がございまして、またいわゆる戦略的な兵器と戦術的な兵器というような考え方も、これもされておるような感じでありまして、従いましていわゆるわれわれがこの原水爆を中心としておるような兵器に対して、そういうものを持たない、のみならずわれわれの憲法の自衛権の意味からいって、そういうものを持つということが憲法上妥当でないというようなことは、これは私どもはっきり考えておかなければならぬことであります。しかし今申すように、私どもにもよくわからないのでありますが、研究してみると、いわゆる核兵器と称せられるところのものはいろいろななにがあり、そうして誘導兵器というようなものも、ある意味からいうと核兵器じゃないかというふうな議論も出てきておるようであります。そういうようなことから申しますと、いわゆるとにかく核兵器と名がつけば、すべてこれは憲法違反だという議論も、これはずいぶん実際のなにから言うと行き過ぎじゃないか。同時にわれわれはこの兵器についても自衛権の範囲というものを逸脱してはならぬ、これは憲法の精神だということも明瞭でございます。そういう意味からいろいろ研究された結果、いわゆる統一した何として、防衛長官が申しましたことは私もそれが正しいだろうというふうに思っております。
○森元治郎君 そうすると、総理がかねがね国会でおっしゃられたことからだいぶ後退されて、自衛権の範囲内の有効な手段、しかも兵器の科学的進歩の段階から見て、核兵器の一部はどうも持てそうだ、攻撃はしないのだと、そういうのは兵器発達の常識だというようにお認めになったようですが、おそろしいことは、この兵器というものはどんなおそろしいものでも、だんだん進歩すれば通常兵器化する傾向にあるのです。ですからこの際画然とした態度を示さないために、私は日本が各自衛隊ともいろいろな形の核兵器を持つようになると、こういうふうに思うのですが、この点もう一度お伺いします。
○国務大臣(岸信介君) 今申し上げますように、私どもすでにアメリカから誘導兵器の供与を求めて研究をしております。しかしこれがいろいろ議論があるようですが、この今、日本が研究をしておるところの誘導兵器というものは、これはやはり攻撃の兵器であるというふうな議論も一部にあるようですが、そういう意味において、いわゆるあるいは核兵器、核兵器と申しますけれども、その実際のものを十分検討してみない、観念として核兵器というものは一切いけないのだ。核兵器という名がつけば、いかに防御的な性質を持ってるものでもいけないのだ。こうすることはこの日本の自衛の装備を科学的進歩からとめてしまって、そうしていわばこれはちょうど兵器が発達してきたのに、いつまでも竹やりで装備しているのが、それが防衛の何だというわけにはいかぬと思うのです。しかし私どもが強い原水爆の実験の何に反対をし、それからこのいわゆる核兵器ということを申しますと、この原水爆を中心としてこのもろもろの兵器というような一つの観念でみますと、それが日本に自衛の名においてそういう装備をするということは、これは私はあくまでも間違っておるということについては明確であると思いますけれども、今申しましたように、ただいま兵器の発達とともに、いわゆる核兵器と称せられるあの中に、純粋の防御、防衛の目的を果すという意味からいうと、そういうものを、装備をしなければならない。それがいろんな点から批判して核兵器というような範疇に入るのだ、従ってそれはもういけないのだ。こういうように解釈するということは、兵器の発達の現状からいって私は適当じゃなかろう。こう思います。
○森元治郎君 こまかいことは総理にお尋ねしませんが、非常に重大な問題でございまするから、総理もどなたかに教えられたとみえて、だいぶいろいろ知っておられるようですが、もっと一つ勉強してやっていただかないと大へんなことになると思います。これで私は打ち切ります。

参議院 内閣委員会(委員長:亀田得治)
1957年5月7日(火)午前11時6分開会

○委員長(亀田得治君) これより国の防衛に関する調査を議題に供します。本件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○秋山長造君 私は核兵器と憲法の問題についてごく率直にお尋ねをいたします。まず第一にお尋ねしたいことは、一体日本の自衛隊が核兵器を持つということは日本の憲法に違反するものである、こう私考えるのですが、総理大臣の御見解を伺いたい。
○国務大臣(岸信介君) 核兵器という言葉で用いられている各秘の兵器を、私はことごとく技術的に承知いたしませんけれども、名前が核兵器であればそれが憲法違反だ、秋山委員のお考えはそういうふうなようでありますが、そういう性質のものじゃないのじゃないか。一方から言えば、われわれは、やはり憲法の精神は自衛ということであり、その自衛権の内容を持つ一つの力を備えていくというのが、今のわれわれの憲法解釈上それが当然できることである。しこうしてそれぞれ科学の発達等からやはり兵器の発達というようなものにつきましては、科学的の研究をしていかなければならぬという建前におきまして、いつまでも竹やりで自衛するという性格のものではなかろう。しかし今日いわゆる核兵器という言葉で言われておるその中心をなす原水爆のごときもの、これは当然われわれは自衛権の内容としてそういうものを持つということは、憲法上許されないということについては、私も異論ないのでございますけれども、今言っておる科学的の技術的の研究なり、発達というものと見合せて、あくまでも憲法の精神であるところの、われわれは他から侵略される場合において、その侵略を阻止するという性格のもの以上を持つということは、これは憲法が禁止しておることであり、憲法に反することである。そこのにらみ合せの問題でありまして、ただ核兵器と名がっくから一切いけないのだと、こういうことは私は行き過ぎじゃないかと、こう思っております。
○秋山長造君 総理大臣は、核兵器というときわめてばく然としたでたらめな名称のように、呼び名のようにおっしゃるけれども、核兵器という以上はおのずからその性格なり範囲などというものはきまったものだと思う。何でもかんでも核兵器といえるものではない、核兵器だから核兵器だ。現に政府自身がイギリスやソ連、アメリカに対して核実験の中止の申し入れをなさったり、あるいは実験の禁止についての国際的なアッピールをなさっておる。書面を見ましても、これは当然のごとく核兵器々々々という言葉を使っておられるじゃありませんか。にもかかわらず今ここで質問をすれば、一がいに核兵器といってもその内容はいろいろだ、というきわめてぼやかした御返事しかいただけないということは、私はなはだ不満なんだ。その点について政府あるいは総理大臣は、核兵器々々々と口ぐせのように言っておられる。その核兵器というものはどういうものを言っておられるか、その点をはっきりしていただきたい。
○国務大臣(岸信介君) 私どもが強く諸外国に向って、ことに英、米、ソ連に向ってその実験の禁止を要望しておるのは、言うまでもなく原水爆と一般に言われておる、今実験をやろうとしておるが、そういうものでありまして、そういうものに対する何については、私どもは強く反対をし、またそういうものを持つということは、日本の自衛隊に許されないということにおきましては、私どもは秋山君のお考えと同一な考えを持っております。しかしずいぶん誘導兵器の研究を自衛隊においてもいたしております。しかしその誘導兵器がことごとく核兵器であるかどうかということについては、これはずいぶん議論があるようであります。私はそういうような、今自衛隊で研究をしておるような誘導兵器を研究をし、あるいはそのうち日本の自衛力のために持つというようなことは、これは決して憲法に違反しておると、こういうふうには見ておらないのであります。
○秋山長造君 私の質問しておるのは、自衛隊がたとえばエリコン誘導弾なるものの研究をやるということとは別の問題なんです。これは核兵器そのものについての質問をしておる。だから今日まで総理大臣以下核兵器には絶対反対だ、現にマクミラン首相に対する書簡においても、核兵器の生産、使用及び実験、とにかく一切を禁止すべきだという呼びかけをやっておられるわけなんです。にもかかわらずそういう呼びかけの裏にはただし書きがついておって、ただし自衛の範囲内なら、あるいは攻撃的でない、きわめて小型の防御的なものなら、日本さえも、世界に例のないと言われておる平和憲法を持っておる、その日本の平和憲法からでさえもあえて違反じゃないというようなただし書きがついておるようなことでは、これはもう政府がいかに口で核兵器の生産、使用、実験を行うのをやめろということを世界に訴えられたところで、これはただ今の国民感情に対する私はジェスチュアにすぎぬ、あるいは外国に対しても単なる一時的の、思いつきの感情論にすぎないという結果に私はなるのじゃないかと思うのですが、その点はどうお考えなんですか。端的にお伺いしますが、自衛の範囲内ならば、あるいはきわめて小型のものならば、あるいは防御的なものならはというようにワクさえつけば、核兵器を用いてもあえて憲法違反ではないというようにお考えになっているのかどうか。
○国務大臣(岸信介君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、この日本の憲法の精神は自衛ということに限られているのでありますから、従ってこの自衛のワク内において、いろいろな科学的の進歩と申しましても、われわれの持つところの兵器は制約されることは私どもは当然であると思います。そこで今御質問になっております、核兵器とこう称せられているところのものは、今発達の途上にありますので、いろいろな場合を予想しなければならないのでありまして、ただ核兵器という名前がつくから、原子力をどういう形において用いているものでもこれは一切いかぬ、というように窮屈に考えるということは、われわれがむしろ自衛力の増強について量より質ということを考え、われわれはやはりこの近代的科学技術の発達に即応した有効な兵器をもって、自衛を全うしなければならぬという見地から申しますと、今日われわれの普通に核兵器と考えられている原水爆やこれを中心としたようなもの、これはもっぱら攻撃用の性格を持っているものであると思いますが、そういうものを用いてはならないことはこれは当然でありますけれども、ただ言葉だけの観念でもって、核兵器と名前がつけばいかなるものもこれは憲法違反と、こういう法律的解釈につきましては、今私がお答え申し上げましたように、その自衛力の本来の本質に反せない性格を持っているものならば、原子力を用いましても私は差しつかえないのじゃないか、かように考えております。
○秋山長造君 私は重大な御発言を今初めて聞くんですが、原子力を用いた兵器でも自衛の範囲内ならばかまわない、これはその通りなんですか。原子兵器を用いてもいいのですか、自衛ということならば。
○国務大臣(岸信介君) 私は科学の発達から見ますと、今火薬でいろいろなわれわれが一つの兵器を動かすとか、あるいは原子力で潜水艦が動かされるというような、一つのエネルギーとして原子力を使うというようなことが、今後発達についてはやはり予想されるであろうと思います。しかし今言っているように、一つのこの原子力それ自身がその破壊力といいますか、原水爆みたいなような形でなしに用いられる場合もあるんだろう、いろいろな発達の前途を考えてみると、ただわれわれがこの核兵器という、原子力が用いられるとか、あるいは誘導性の兵器であるとかというようなことでこれはきめられない。問題はわれわれがあくまでも自衛力の範囲であり、自衛力というワクを越えないということが、自衛権の範囲を越えないということが憲法の精神であって、やはりそういう意味における科学の発達というもの、技術の発達というものについてそれを一切制約するというものではなしに、自衛権という本来の本質ですべての兵器というものの性格をきめるべきものである、かように考えております。
○秋山長造君 自衛ということを非常に絶対的なものに考えての御答弁なんですけれども、しかし自衛権といえども私は絶対のものじゃないと思う。自衛という認定さえすれば、何でも持てる、何でもやれるというものじゃない。さらにいろいろなやはりそれに制約がかかってくると思う。原子力基本法をごらんになっても書いてある。わが国に関する限りは原子力の研究、開発及び利用は、すべて平和目的に限定される、こういうことがはっきり書いてある。だからその面からも、原子力の利用というものは何にでも使っていいというものじゃないと思うのです。その原子力基本法の第二条の大原則というものは、その自衛ということとどういう関係になるのですか。
○国務大臣(岸信介君) 原子力基本法は原子力基本法として私は解釈していかなければならない問題であると思います。しかし今ここで御質問になっておるのは、憲法九条の関係における憲法論として、私はあくまでも持ち得るところの兵器は、今後原子力以外にもいろいろなものを科学の発達として考えなければならぬと思いますが、そういう場合においてわれわれは、やはり自衛権というものが憲法に許されておる範囲であって、あくまでもその自衛を全うするために持ち得る兵器というものは、自衛権という憲法に許されておる範囲内のものでなきゃいかぬ、そういう性格のものでなければいかぬということが言えるんじゃないか。今の原子力の基本法の問題とは私はおのずから別の問題である、こう思っております。
○秋山長造君 いや、それは違いますよ。原子力基本法は原子力基本法で、日本における原子力の研究、開発、利用は一切平和目的に限定するというワクがはまっておりながら、自衛隊の方は自衛隊の方でおれはそんなことは関係ないのだと、とにかくおれは自衛権の解釈次第でどんどん進めていくんだというような、そんなばかなことはないですよ。やはり原子力基本法というものは、日本国憲法というものから出発しておるのです。従って、それが自衛隊で使おうと何で使おうと、とにかく原子力基本法の平和目的に限定するというワクというものは、これは日本国に関する限り一切の分野に適用さるべきものだと思う。そんなばらばらに御解釈されては困ると思う。これは一つお考え直しを願えませんか。そういうことでは納得しませんよ。国民も納得しませんしわれわれももちろん納得できぬ。どうですか。
○国務大臣(岸信介君) 私は今憲法九条におけるところの範囲の自衛権で持ち得る兵器の範囲を申し上げているわけでありまして、もちろん日本のすべての法律が憲法全体から出てきておる問題であることは、これはまあ言うを待ちませんけれども、しかし、原子力基本法にそう書いてあるから、あるいは自衛権の本質としてわれわれが当然憲法の範囲内において許されておると考えられるものまでも禁止するということは、適当でない。憲法の今の九条のワクの問題でありますから、これはこれとして考えていきたいと思っております。

参議院 予算委員会(委員長:苫米地義三)
1957年5月7日(火)午後2時3分開会

○吉田法晴君 渡米に当っては、防衛計画を国防会議にかけて持っていくということです。それから渡米前に憲法調査会を発足したい、非常な無理をしておる。ところがそういう状態を見ておりますと、戦術兵器は防衛的に使われる場合、これは憲法違反でないと当内閣委員会で言明をされた。それから自衛戦争について所見を承わることができなかったようでございますけれども、この国会で小滝長官は局地戦争という言葉を便っておられます。自衛のためには戦争をおやりになるのではないか。私はそう解釈されるのでありますが、その点はどうでございましょうか。きょうも私、内閣委員会に出ておりましたけれども、NATOの理事会の動向、ドイツを含んでの原子武装、それからこの間SEATOで演習がございましたが、昨年の実態等を見ますと、これはSEATOの演習に日本の自衛隊も参加をいたしておりましたけれども、大型小型の原子兵器が事実、演習でありますけれども、使われております。こういう事実、あるいは内閣の論理、防衛的なものであれば原子兵器を使ってもよろしい、憲法上も使うことはできるのだ、あるいは自衛戦争、局地戦争という言葉が、内閣の担当者から出るような状態を見ておりますというと、さらに渡米前に憲法改正のために調査会を無理やりにも発足させたい、こういうことを考えておられるところを見ると、向うに行って、日本の自衛隊員に原子兵器を、小型原子兵器を、戦術的な原子兵器を持つことを要請された場合に、おそらく総理としてはこれを拒否することができないのではないか。だんだん自衛戦争の名において、あるいは局地戦争において、防衛的な武器だと言いながら原子兵器を、戦術的な原子兵器であろうとも、それはすぐ戦略的な原子兵器をアジアにおいて使うことにつながりますが、日本を中心にしたアジアにおいて原子戦争の危険がだんだん近づきつつあることを私は憂える。これは同僚議員からも内閣委員会で言われておったところであります。そこでもし総理が戦争はもう絶対にやらぬのだ。戦争を防ぐことができなかった過去の失敗を再び繰り返さないという信念がもしほんとうであるならば、原子兵器を、戦術的な兵器といえどもこれは使わない。小型のものであろうと、防衛的なものであろうと、使わないとはっきり言明せらるべきだし、また局地戦争であろうと、自衛戦争であろうと、戦争というものは絶対にしないとはっきり言明せらるべきだと私は思うのでありますが、なお、はっきり言明をする勇気があるか、あるいはアメリカに行った場合についても、戦術的な原子兵器を含んで、原子兵器の持ち込みについては絶対に反対をする。あるいは実験禁止についても、登録制ではなくて、関係諸国の間にその禁止のための協定に到達すべきことを希望すると言われますが、国連に提訴をするなり、あるいは原子兵器の所有と使用と、それからその戦争の危険について、国際的舞台において、はっきり保証を取りつけるべきである。あるいは日米の間にだけでなしに、国際的に取りつけるべきであると思いますけれども、その点について明確に岸総理の言明を願いたいと思います。
○国務大臣(岸信介君) 憲法九条の憲法解釈から申しまして、われわれは国際紛争を解決する手段として戦争に訴えないということは、きわめて明瞭に書かれておりますが、同時にこの憲法九条は、独立国の持っている自衛権というものを否認したものではないという解釈をとって、そうしてその自衛のために必要な最小限度の実力は、これを保有する。それが憲法に違反しないものだという解釈をとっておるわけであります。しかしいかなる意味においても、みずから戦争するというようなことは、われわれは毛頭考えていないことは言うを待たないのであります。ただ侵略が行われてきた場合に、その侵略を排除するということは、これは自衛権の当然の内容であり、われわれが自衛的実力を持つ、自衛権の内容としての最小限度の実力を持つということは、不幸にしてそういう侵略があった場合、それを実力をもって排除するという努力をするということは、これは当然であろう。それを、それは戦争じゃないか、実力と実力とがぶつかれば、それは戦争じゃないかという意味において、あるいは戦争ということが言われるかもしれませんけれども、いわゆる従来の自衛のための戦争だというような、非常に広い意味のことをわれわれは頭に描いておることはないということは言うを待たないのであります。従ってその自衛権の内容というものを裏づけるところの最小限度の実力とはどういうものだという解釈になりますというと、これは憲法上の解釈としては、私はいわゆる核兵器と名前がつくものは全部憲法違反だという御説もあるようでありますけれども、それはこの技術と科学の発達につれまして、核兵器と言われるところの性格というもの、性質も、また兵器の種類もいろいろこれから出てくることでありましょうし、従って名前は核兵器とつけばすべて憲法違反だということは、私は憲法の解釈論としては正しくないのじゃないか。憲法の解釈論としてはあくまでも今申しました自衛ということを裏づけるに必要な最小限度の実力ということが限度であって、従って攻撃を主たる目的とするような兵器は、たとえ原子力を用いないものであっても、これは憲法で持てないということは当然であろうし、今の原水爆やあるいはこれを中心としているいわゆる核兵器として今の米英ソ等が互いに競うておるところのものは、これが憲法にいっているわれわれの自衛権の、自衛のための最小限度の何であるとはとうてい考えられませんから、それは憲法が禁止しておると私は考えておるのであります。ただ核兵器と名前がつけばどんなものでもいけないかと言われると、今後の発達を見なければ、これは一がいに言えないのじゃないかというのが私の考え方でございます。しかし私は、今いわれておる核兵器と――あるいは原水爆はもちろんのこと、核兵器といわれているような、あるいはアメリカが考えておるところの原子力部隊というようなものは、われわれはこれを拒否するということをしばしば申し上げておる通り、その考え方につきましては少しも変っておりません。従ってアメリカでたとえそういう話が出ましても私は拒否する考えでおります。ただ、今それに触れて憲法調査会云々の問題がございましたが、これはかねて私は憲法調査会の制定の当時から、この問題にタッチしておりまして、そうして法律がせっかくできて、いろいろな事情で今日までまだ発足をいたしておりませんが、これは社会党の方々にもほんとうに謙虚な気持で参加してもらって、日本の憲法を再検討すべき――権威ある再検討をすべきときであると考えておりまして、従ってこれが法律によるところの構成を早く発足しようということは、これは当然のことであります。私は別に、アメリカへ行く前にどうしても無理をしても作るというような考えではなくして、私が最近これの発足について社会党の首脳部ともお話し合いをし、懇請もしておる努力については御承知だと思いますが、そういう意味におきまして実現させる考えでおりますけれども、別に私の訪米と直接の関係がありませんことを御了承願いたいと思います。

参議院 予算委員会(委員長:太田正孝)
1964年3月9日(月)午前10時27分開会

○米田勲君 そうすると、現在の防衛の条件でも、なお他国の侵略はあり得ると、こういう判断をしているかどうか。
○国務大臣(池田勇人君) 備えあれば憂いなしという気持ちでやっております。他国がどんな暴力をするかは、私らの考える筋合いのものじゃない。そういうことを起こさないように、準備しているということであります。
○米田勲君 それでは、次に、政府は、自衛隊が核兵器を保有する問題について、これは条件がやはりついています。法理論上の解釈で、防御用の核兵器を保有することは法理論上違憲でない、こう言ってきている。なぜ防御用の核兵器と限定して言わなければならないのだか、その理由をお聞きします。
○国務大臣(池田勇人君) われわれは自衛権があるだけでございます。他を武力をもって威嚇しあるいは武力を用いることは禁止しておりますので、自衛のためのものならば理論上はできる、しかし実際には持たない、こういうことでございます。
○米田勲君 総理に申し上げますが、ここの場で論議をすることは、政策上の論議よりも大事なことは、法理論上どう解釈しているかということであれます。政策はあすにでも変えられる。だから、ここの争いはあくまでも法理論上の争いでなくちゃならぬ。防御用の核兵器を保有することは違憲でない、こういう政府の態度は、その逆をいえば、攻撃用の核兵器を保有しては違憲だと、こういうことを肯定していることでありますか。
○政府委員(林修三君) この点も何回か過去においてお答えいたしたことでございますが、要するに、憲法九条の解釈として、自衛のために必要な限度の実力を持つことは違憲ではない、かように考えているのであります。その場合の実力の限界、程度、これはまあ原則としては総合的に判断すべきものでございまして、個々の兵器、武器等を取り上げて判断すべきものではございません。原則はですね。そこで核兵器の問題になりますが、したがって、核兵器というものも、今後いろいろこれは進歩発達していく段階でございまして、これは将来のことを考えれば、非常に小型あるいは力の弱いようなものも開発される可能性もあるわけでございます。したがいまして、いわゆる核兵器だというだけの理由で、すぐそれが憲法上自衛のため必要な限度の実力を越えるというものではあるまいというのが、従来の政府の考え方であります。つまり、核兵器であるがゆえに、核兵器といういわゆる核エネルギーを破壊用または殺傷用に使うということだけをもって、それが憲法違反になるというものじゃなかろう、結局その自衛のために必要な限度の実力として持ち得る限界に入るかどうかということだけがこのめどになるわけであろう、こう考えているわけであります。その場合に、いまの核兵器の状況を見ますと、たとえば、これも御答弁したことでありますが、原水爆とか大陸間誘導弾というごときは、これは自衛のために必要な最小限度の実力とはとうてい考えられない、これは個々のそういう兵器をとってみても、これを自衛のため必要最小限度の武器と考えることはできない、したがって、そういうものは完全にいまの憲法のワクからは大いにはみ出しているものだ、かような意味でお答えしているのであります。
○米田勲君 いまの御答弁は長々とやっているが、私は一言聞きたい。政府の見解は、攻撃用の核兵器を保有することは違憲かと、違憲だという判断だなと、こう聞いている。
○政府委員(林修三君) これは先ほどから法律論として言えとおっしゃるわけでございますから、法律的な考え方を申し上げるわけでございます。要するに、いわゆる自衛隊の持ち得る範囲の力というものは、原則は、これは総合的に見るべきものであって、個々の武器とか兵器というもの、あるいは部隊の数とかいうものだけを取り上げて言うべきものではないと思います。総合的な判断で言うべきものだと思います。しかし、いまの核兵器の問題になりました場合に、さっき例をあげましたように、いわゆる大型の攻撃的な核兵器、まあ例をあげれば原水爆とか大陸間弾道弾、すなわちICBMとかIRBM、そういうようなものは、それ自身自衛権の、自衛のために必要な限度として持ち得る実力の範囲にはこれは入らないのじゃないか。
 個々の兵器をとらえてみても、これは当然そういうものとして持つようなものではないのじゃないか。そういうような意味で、たとえば長距離爆撃機のごときもそのカテゴリーだと思います。つまり、核兵器という点だけでなくて、いま言ったような総合的な判断から申しまして、そういうものは憲法で持ち得る力の限界を越えるものだ、かように考えているのであります。
○米田勲君 委員長、答えておらぬのだよ、遠回りで。端的に答えさしてください。
○理事(斎藤昇君) 米田君、質問してください。
○米田勲君 大体、政府側が言いだしたのは、防御用の核兵器を保有しても法理論上違憲じゃない、こう言いだしたのは政府なんだ。だから、逆に、そういうからには、攻撃用の核兵器を保有するということは違憲だとはっきり考えているのだなと、こう聞いている。それを答えなさいよ。
○政府委員(林修三君) 政府が法律的な言い回しで申し上げますことは、いま言ったように簡単に言ったわけではなくて、いわゆる抽象的に一般理論として応用し得る範囲内でこれは言っているわけであります。先ほど申しましたように、いわゆる核兵器なるがゆえに直ちに、どんなものであっても、それが違憲になるというものではなかろう、これはまず第一の前提でございます。つまり、核兵器――核エネルギーというものを殺傷用あるいは物の破壊用に使う、戦闘においてですね。国内の平和的な意味の破壊用はこれは違いますが、戦闘的な目的として、殺傷用あるいは破壊用に核エネルギーを使った武器を使うということそれ自身だけで、直ちに憲法違反となるというものではあるまい。それはもう少し端的にいえば、防御的なものは憲法違反じゃないということばになってくるわけでございますが、抽象的に申せば、さっき私が言ったような表現になります。
 したがって、それをさらに、しからばその限界を越えるものとしてはどういうものがあるかということで、その例示として、たとえば原水爆とかあるいは大陸間弾道弾、そういうものはそれ自身一つをとってみても、自衛のために必要なる行動をとるための必要最小限度のものとは言えないのじゃないか。したがって、そういう限界をはみ出すものはこれは攻撃用の核兵器といってもいいかもわかりませんが、つまり、そういう大型の、他国を――自国がたとえば侵略された場合に、自国を守るときに使うような性質を持たないもの、そういうものはこれはやはり憲法のワクをはみ出すものである、かように考えておるわけでございます。
○藤田進君 ちょっと、議事進行。まあことばの内容で、将来問題を残しますからね。質問者である米田委員は、あなたが例示されたようなIRBMであるとか、あるいは大陸間長距離弾道弾、あるいは大陸間の電爆撃機というものを例示されて、そういうものを現行悪法第九条の限界を越えるものだ。これも、状況にもよるし、それから相手を攻撃する様態にもよるといったような意味のことが介在しての御答弁ですから、非常にすっきりしないわけです。いま例示されたような大陸間弾道弾その他爆撃機といったような、これらは現行憲法第九条に違憲なりとはっきり言えるのかどうかという点がポイントなんです。
○政府委員(林修三君) それはどうも御答弁をいたしたつもりでございますが、そういう私の例示したようなものは憲法第九条のワクをはみ出すと、要するにこれは私は条件をつけたつもりはございません。
○瀬谷英行君 いまの答弁は、核兵器が一体大型、小型でもって攻撃用と防御用に分けられているものか、あるいは用途でもって攻撃用と防御用に分けられるのか、あるいはその中間の説明によると、兵器というものはこれは総合的に判断をするものであるということで、兵器には攻撃用とか防御用とかいうものはないかのようにも聞き取れるわけです。ところが、三月三日の防衛庁長官の答弁によりますと、自衛隊でいま持っているのはアジャックスであって、ハーキュリーズのほうがはるかに性能がすぐれているが、問題は核弾頭をつけ得るというところに微妙な問題がある。第三次防衛にはハーキュリーズを採用するかしないか、検討の段階に入っておりませんという答弁がありました。このアジャックスとかハーキュリーズというものがはたしてしからば攻撃用の兵器かあるいは防衛用と限定されるのか、核兵器を、核弾頭をつけ得るというところに微妙な問題があると、こういうふうに言っているのでありますけれども、一体核兵器なるものの定義は、先ほど申し上げましたように、答弁によると、大型、小型、あるいは用途等によって攻撃用と防御用に分けられるかのような言い回しをされておりますけれども、そのような分け方がはたして妥当であるのかどうか、またそういう分け方をすることが軍事的に可能なのかどうか、これらの点について防衛庁長官からも専門の立場で御説明願いたい。
○国務大臣(福田篤泰君) 先般の答弁に関連いたしまして、いまお尋ねの点をお答えいたします。
 ナイキ・アジャックスを使うかあるいはハーキュリーズを使うかという点に関する問題でありますが、防御用あるいは攻撃用兵器の区別はきわめて困難でございますが、いわゆる論ぜられるところの目的ということも大きな条件でありますが、同町にまた、他国に攻撃的脅威を与えるということも一つの要素ではないかと考えているわけでございます。したがいまして、この問題につきましては、先般お答えいたしましたとおり、性能においては非常にすぐれておって、法理論的には許される自衛権の範囲内という規定があっても、政府としては核弾頭を用いないということを政策的に、法理論と分けましてお答えいたした次第でございます。
○米田勲君 私は、この核兵器保有の問題について、政府が、防御用だとか攻撃用だとかといって、実際の問題としてはきわめて分けづらいのに、あえて法理論上だと称して、防御用の核兵器を保有できるという考え方を固執しておる理由がわからない。なぜ固執するのか。大体、核兵器というものそのものの威力は、防御用のために使っても、自国民を殺傷することは間違いない。それほど危険な兵器を、自衛のために防御用であれば持てると、なぜその法理論を固執するのか、その真意をお伺いしたい。
○政府委員(林修三君) これは過去において何回も御質問がございまして、私としては、法理論としてはそう言わざるを得ない、そう考えて、政策論を抜きにして、法理論としてはそうお答えしているわけでございます。
 つまり、核兵器の定義でございますが、これは御承知かと思いますが、過去において国会に文書として防衛庁から提出したことがございます。核爆発あるいは核融合のエネルギーを戦闘用として人の殺傷あるいは物の破壊に使うような武器、兵器、これを核兵器という、というようにお答えをしておるわけでございます。これは大体において一般的な通念的な概念だと思います。そういう概念から考えますと、これは現在でもそうでございますけれども、だんだん小型の核兵器も開発されておるわけです。小型といいますのは、単に型が小さいだけでなくて、いわゆる性能も必ずしもそう大きくないというものが、だんだん開発されていった場合に、いわゆる核エネルギーを使うというだけの理由で違憲になるか、ならないかということは、どうも私としては理論としては言えないんじゃないかと思います。これは純粋の理論上の問題でございます。要するに、憲法第九条で保持が禁止されているのは、自衛のために必要な最小限度を越える戦力、こういうものが保持が禁止されているという解釈をいたしております。そういう解釈からいえば、いわゆる個々の兵器が核エネルギーを使うというだけの一点だけでそれを判断するというのは、どうも理論的でないんじゃないか。で、非常にいわゆる破壊力が大きくて、あるいはその飛しょう力が長くて、いわゆる自国の防衛というために当然その性能上使い得ないもの、そういうものは当然に私は憲法からはみ出した、つまり持てないものだと思いますが、しかし、その核エネルギーを使うということだけでどうだと言われれば、私は法理的には、これは政策的な考え方のよしあしは別として、法理的にはそれだけでメルクマールするということは理論が通らない、かように考えておるわけでございます。
○米田勲君 いまの答弁を聞いておると、やがては日本も核兵器を使う場合があり得る、こういうふうに政府は考えておる。だからその法理論に固執するのだと、こう解釈してよろしいかどうか。
 さらに、総理には、今後核兵器を一切保有しないということを国民に約束できないかどうか、もう一度お聞きします。
○国務大臣(池田勇人君) 将来日本が実際に使うことがあるからというんで、そういうことを言っておるのではありません。純然たる憲法上の法理論として言って一おるのであります。私は、たびたび申しておりますとおり、日本は核兵器々持たないということははっきり言っておるのであります。

参議院 予算委員会(委員長:西郷吉之助)
1968年4月4日(木)午前10時20分開会

○国務大臣(増田甲子七君) 核抑止力というものは核戦争をじゃまをする力である。英語をそのまま翻訳するとそういうことになります。じゃまをする可能性、それは核戦争をじゃまをして、ないようにする可能性ということばでございます。そういう意味のものをわれわれは米国に期待をいたしております。これは相当期待を置いてよろしいと思います。にもかかわらず、通常兵器による局地的侵略というものはあり得るということは、明瞭にベトナム紛争によって証明されておるわけでございまして、でございまするから、これに万一という場合には、通常兵器による局地的侵略に対して国家国民をお守り申すだけの存在と訓練が必要である、こう考えております。核戦争がない、核兵器の核抑止力はあるといたしましても、通常兵器による侵略というものはあり得るということは前々から私どもは申しておりまするし、また、昭和三十二年以降ずうっときまっておりまする日本の国防に関する基本方針にも、そういうことが明瞭に記載されてあるわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、その核抑止力というのは一体どこにあるんですか。
○国務大臣(増田甲子七君) 具体的のことを言えとおっしゃるんですか。
○稲葉誠一君 いや、あなたの考え。
○国務大臣(増田甲子七君) 私は国の名前は特定いたしませんが、強大なる核兵器を持っておる国がありまして、そこでいつも申しておることでございまするが、一発でも戦術、戦略核兵器を使うとすれば、昭和二十年のころと違いまして、必ず連鎖反応を起こす。そうすれば人類が壊滅状態に陥る。でございまするから、核兵器を使う者が結局核兵器によって滅びるということになると私は思います。でございまするから、核兵器の存在によって核兵器による侵略を防止するという力がある国は二つばかりございます。これは特定して申せといえばまた申しますが、これは世界の常識ではないかと思っております。でございまするから、ほかの三国が核兵器を多少持っておりまするが、それを使いましても、一発使いましても連鎖反応起こします。たとえばサブロックなんていうものを使うことも私は非常な考えものであるということを、私はきのうここで前川さんに申し上げたわけでございます。サブロックやアスロック等も、あるいはナイキ、ハーキュリーズ等も、あるいはメースB等も、戦術核兵器かもしれませんが、戦術核兵器といえども、これを使えば必ず連鎖反応を起こして人類が壊滅状態になる。直接死亡しなくても、白血病の遺伝素因を持った人類がだんだん健康状態において堕落した状態になる。人類が人類でなくなる状態になるということはまず世界の常識としてわかっておりまするし、私がかねて主張しておるところでございます。でございまするから、これは使わないと思います。しかし、使わないために、いまの現時点におきましては核軍縮や核兵器絶滅ということをわれわれは理念として、理想として考えておるものでございます。それを追及しておりまするが、現時点という現実的の問題といたしましては、二大強国が相手を壊滅状態におとしいれるという力を持っておるということによって、結局、平和共存がよろしいということに踏み切っておる。すなわちこれは核兵器の核抑止力のいたすところであると考えておる次第でございます。
○稲葉誠一君 どうも質問の趣旨がはっきりしなかったのかもわかりませんが、そうすると、核抑止力があっても非核の限定戦争というものは日本の周辺であり得る、こういう考え方に立っておるわけですね。
○国務大臣(増田甲子七君) この論理的にあり得るかあり得ないかということは、ほんとうは実益のない話を私はしたくないのでございまして、実益のある話としてお互いにひとつ対話をいたしたいと思います。私は戦術核兵器による日本船舶、日本艦船等に対する攻撃もあり得ないと考えております。
○稲葉誠一君 いや、核じゃない。非核のものですよ。非核の通常兵器による一つの戦争は日本の周辺にあり得るのかと聞いておるんです。
○国務大臣(増田甲子七君) あり得るか、あり得ないか、それはこのアジア周辺に起きた紛争にかんがみまして、全然あり得ないことではない。万一に備えてあり得ないようにするために自衛隊が存在し、訓練をいたしておるのでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、非核三原則というのは、どういうような根拠から出てきたんですか。
○国務大臣(増田甲子七君) これは岸内閣総理大臣がまず提唱したものだと私は考えております。それを踏襲しておるのが池田内閣であり、佐藤内閣である。そこで、非核三原則というのは、外務大臣も昨日答えられましたが、日本は世界唯一の被爆国であるというようなこと、それから国民的感情、それから核を一たん使えば必ず連鎖反応を起こすというのが、これは私の強い信念でございます。また一つの認識でございます。ですから、単なる信仰といったような感情的の問題ではございません。認識、理性に属する方面でございます。そこで非核三原則を堅持すべきであるというのは、わが国のとっておる賢明なる内閣の政策ではないかと考えております。そこで非核三原則をとっておることによって、全世界の方がだんだんと非核三原則というようなことに目ざめてこられる、コンセンサスを得られる端緒にもなり、よすがにもなれば幸いだと私どもは考えておる次第でございます。
○稲葉誠一君 アメリカの核抑止力があるから、だから日本の非核三原則というものは堅持されていると、そういうふうに考えてはいないんですか。その関係はどうなんですか。
○国務大臣(増田甲子七君) 稲葉さんにお答えいたします。
 そこが前川さんときのうだいぶダイアログをしたところでございまして、つまり理想の問題と現実の問題と二つに分けて議論をしないとぐあいが悪いわけでございまして、現実の問題といたしましては、核兵器を開発して、非常な原始的なものであっても相当それで脅威を与えようとする国がもしあったならば、これはいけませんから、やっぱりアメリカの強大なる核抑止力というのは、この一月、マクナマラが勇退する前にも、圧倒的の核抑止力を持っておるのであるということを言っておる次第でございます。そういう意味合いにおいてわれわれはいまの日米安保条約におきましては、アメリカの持っておる圧倒的なる核報復力といいますか、これは第一撃能力、第二撃能力というようなこともございますけれども、要するに、やっぱり圧倒的なる――最初にはアメリカは使わぬということを明瞭にしておりまするから、報復的の核の爆発力に依存をいたしておる。依存をいたしておれば、核兵器は全世界において使われないものである、核戦争はないものである、こういうふうに私どもは考えております。
○稲葉誠一君 きのう質問があったというのでしたら、それじゃその点ははしょりますが、そうすると、いまの非核三原則というものと日本国憲法とはどういう関係に立つんですか。ここがはっきりしないんですよね。
○国務大臣(増田甲子七君) 法制局長官がおりませんから、法制局長官がしょっちゅう述べておることを繰り返しますが。――それでは、同じことを話せばなおほんとうだということがわかりますから、同じことでも申し上げます。
 日米安保条約の関係で、強大なるスリーBとか、つまりICBMとか、B52にいま水爆を搭載しているということはないようでございますが、あるいはB52とか、あるいは中距離弾道弾であるポラリス、ポセイドンの搭載された潜水艦が四十一隻ございますが、これを日本に持ち込むことは憲法上は違反でない解釈でございます、従来から。つまり砂川判決その他にかんがみまして、憲法九条は日本の戦力を云々しておるのであって、外国の戦力に日本が依存せんとすることとは関係がないのである、こういうふうになっております。
 そこで、しかしながら、これは非核三原則がまたそこでカバーするわけでございますが、政策として、それからその次に戦術的核兵器ということばもほんとうは正確にはないそうでございますが、まず外国に脅威を与えない、防衛だけの核兵器というふうに定義をしておるそうでございます。そういう防衛だけの戦術的核兵器、いわゆる戦術的核兵器を持つことは憲法違反ではない。第九条第一項、第二項にかんがみてこれは持ち得る、憲法上は。ということになっております。しかしながら、原子力基本法によりまして、日本で開発することは原子力基本法に触れる、持ち込んだり、持つことは別に原子力基本法に触れないわけでございます。つまり原子力基本法というものは、核兵器並びに一般平和利用の核エネルギーを開発する際には、平和利用でなくてはいけない、こういうことになっておるわけであります。これはやはり相当理論的に申さなくちゃなりませんから、長いとおっしゃっても時間にも制限がございませんし、稲葉さんも理論の人でございますから、一応、理論を申し上げるわけでございます。そこで、戦術的核兵器はそういうことであるけれども、原子力基本法に触れるおそれもあるし、われわれは持たない。つまり非核三原則がそこでまたカバーをいたします。しかし、戦術的核兵器の持ち込み、外国の軍隊が日本において持つということは、これはまた憲法違反ではないけれども、非核三原則がまたそこに働くわけでございます。要するに、日本並びに日本の周辺におきましては、非核三原則が働く、政策として働く。憲法違反の関係は、戦略核兵器は外国の軍隊ならば日本に持ってよろしい、しかし持たない。戦術的核兵器は憲法上の関係は日本は持ってよろしい。しかしながら、原子力基本法という法律に触れるから持たない。それから一般的に非核三原則が働くからして全部持たない、これは政策として持たない、こういうことになるわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、あなたの答弁を聞いていますとね、日本国の憲法で禁止したことが安保条約によってできる、こういうことですね。
○国務大臣(増田甲子七君) 私の答えはあなたわかっていらっしゃるのに、どうも質問なさっているような感じがするのですが、法制局長官にひとつ答えてもらいたいと思います。
○稲葉誠一君 あなたの答えを聞いているのです。あなた答えたらどうですか。私はよくわからなかったから聞き直している。
○国務大臣(増田甲子七君) つまり、少し答弁が長いとおっしゃいますけれども、段階を追って、論理の順序に従って、序論、序説、総論、本論、各論、こういうふうに申し上げておるのですから、これで稲葉さんがわからないはずはないと私は思っております。
○稲葉誠一君 いや、だから結論として聞いているのは、日本国憲法で禁止されていることが、安保条約によってはできるのですねと言っている。
○国務大臣(増田甲子七君) 戦略的核兵器は、日本憲法は禁止をいたしております。そこで、外国の軍隊、アメリカの軍隊が戦略的核兵器を日本に持つということは憲法は禁止していない。何も安保条約がなくても、安保条約があっても、特別に行政処分的の契約をちょっと結ぶかもしれません。もちろん国会の承認が必要でございますが、批准も必要でございまするが、まああなたのおっしゃるいわゆる安保条約でけっこうでございましょう、安保条約では持ち得るということにはなります。が、しかし、これは持たないという決意のもとに支配された安保条約でございます。非核三原則の……。
○稲葉誠一君 書いてない。
○国務大臣(増田甲子七君) 安保条約には非核三原則まで書いてないのは当然でございましょう、政策でございますから。
○稲葉誠一君 そうすると、あなたの考えでは憲法よりも安保条約が上にあるんですね。
○国務大臣(増田甲子七君) 日本国憲法は外国の軍隊の戦力を規定したものではない、こういうことでございます。
○稲葉誠一君 日本の憲法で禁止した外国の軍隊の持つものを受け入れるか受け入れないかは、日本国憲法、日本の主権の問題じゃないですか。おかしいじゃないですか、あなたの考え方は。あなたは主権を放棄したような議論ですよ。
○国務大臣(増田甲子七君) 外国の軍隊に日本の主権が発動して、要請して――非核三原則が一応ないと仮定して議論しなくちゃいけませんよ、これは。いいですか、非核三原則がないと仮定して、有事も有事、相当の熾烈なる場合に、われわれはあくまで、有事であっても何であっても非核三原則は堅持するんですから、そこで一応議論をお互いに理論について対話をしておるのですから、それですから、一応、非核三原則がないと仮定してということで、きのう前川さんともだいぶ議論いたしましたが、主権の発動として、憲法の制約というものは日本の戦力に対して制約があるんですから、しかしながら、主権――お互い主権というのは三権でございますが、三権はやはり日本の国民を守るためにあるのですから、その守るためにあるときに、非核三原則はわれわれは堅持しておりまするが、一応ないという場合に、もし要請しても憲法の規定していないことは憲法違反ということではないと私は思います。(「きのうと同じ論議を繰り返すことはやめようじゃないですか。われわれ審議を継続してもつまらないですよ」と呼ぶ者あり)
○稲葉誠一君 つまるかつまらないかは別として、そうすると、日本国憲法で禁止していることを安保条約で認められたということになれば、それを受け入れるということは日本の主権の判断の問題でしょう。そこであなた、重大な憲法違反が行なわれるんじゃないですか。入っちゃうことは向こうのことかもしれぬけれども、その受け入れる受け入れないは日本の憲法の問題じゃないですか。ぼくはそのことを言っているわけですよ、問題として。入るときの問題ですよね。そこに問題が出てくるんじゃないですか。主権の制約を受けるんじゃないですか、憲法の制約を受けるんじゃないですか、当然。
○国務大臣(増田甲子七君) 私が言っているのは、憲法の九条一項、二項は日本の戦力についての規定であって、外国の戦力に関する規定ではないという砂川判決の一章をあなたも御存じなんですから、私もこの際この壇上において申し上げるだけでございます。
○稲葉誠一君 砂川判決はそんな積極的なことをいっていないですよ。法制局長官、それじゃもう少し理論的にその間説明してください。
○政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。
 いま防衛庁長官のおっしゃられたことに特におかしな点があると私は思いませんが、結論的に、憲法で禁止していることを安保条約でできることになるのかというのが質問の焦点です。そういう憲法に違反するようなことを、確立された国際法規を成文化するようなものならいざ知らず、一国と他国との間で任意に結ぶ条約で憲法に違反するような事項を定めることは私はできないと思います。やはり条約と憲法との政治的効力としては憲法が上であるというふうに考えております。
○稲葉誠一君 しかし、いまの防衛庁長官の答弁を聞くと、条約のほうが上のようなことを言っているんじゃないですか。そういうようにとれるんじゃないですか。
○国務大臣(増田甲子七君) 私は、憲法、法律、すべてこれ統一ある一体であるという前提からお話をしていますから、稲葉さんとは一番対話ができると思ったところが、稲葉さんがわからなくなっちゃって私困っておるのでございまするが、たとえば事前協議の重大なる装備の変更、これは核装備ということになっております。日本における核装備といえば何も戦略、戦術に限ったことはないんですよ。アメリカが施さんとする装備の重大なる変更、これが事前協議になる。事前協議になる場合には日本の政策がそこで働くんですから、政策抜きで議論しろというなら、きのうの前川さんのように話しやすいんですけれども、政策はやはり一体となって法律論を展開すべきだと思います。そこで、日米安保条約第六条に基づく重要なる装備の変更――交換公文に書いてありまするその装備の変更とは、核装備をするかいなかということでございまして、事前協議をしてきた場合には、たいてい私どもの場合はおそらくノーと言うということを三木外務大臣も答えてございまするから、やはり実益のあるお話をお互いにしょうじゃございませんか。
○稲葉誠一君 一番実益のある話は、憲法でできないのか、あるいは政策でできないのかということですよ。これがポイントなわけですよ。それをぼくは前から詳しく聞いているわけですよ。あなたのあれだと、政策ではできないんだけれども、憲法ではできるようなことを言うから、そういうようにとれるからぼくは聞いているわけですよ。

衆議院 外務委員会(委員長:永田亮一)
1978年2月22日(水)午前10時39分開議

○永田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
○土井委員 防衛庁の方の防衛局長、御出席でいらっしゃいますね。
 それでは、まず防衛局長にお尋ねをさせていただきます。日本国憲法から考えまして核兵器というのは保持できるようになっておりますか、いかがでございますか。
○伊藤(圭)政府委員 憲法からいたしますと、攻撃的兵器というようなものは持てないということになっております。したがいまして、その核兵器そのものが攻撃的か防御的かという問題になろうかと思います。しかしながら、従来から核兵器というものはきわめて破壊的な、大きな破壊力を持っておりますし、また通常戦略核兵器のように、これは防御するというよりは相手に大きな破壊を与えるということによって抑止力となっている兵器でございますので、戦略核兵器は持てない。しかしながら、これは国会でもかつて御答弁がありましたように、純粋に防御的な核兵器というものがあるとするならば、それは憲法に違反するものではない、しかしながらわが国は非核三原則の政策をとっておりますので、核兵器は持てないというふうに考えております。
○土井委員 いまの御答弁からするともう一つあいまいなところが残るわけでありますが、もう一度お尋ねいたします。憲法から考えまして核兵器というのが持てるか持てないか。つまり憲法から考えて、法理的にどうなのかという点をもう一度確かめたいと思います。
○伊藤(圭)政府委員 これは憲法の問題でございますから、法制局から御答弁いただくのが適当かと思いますけれども、従来の国会の御答弁におきまして、また政府の解釈といたしまして、憲法はすべての核兵器を否定するものではないというふうに申し上げているわけでございます。
○土井委員 すべての核兵器を否定するものではない。
 その次に、それじゃ否定されていない核兵器というのはどういうことになるのですか。
○伊藤(圭)政府委員 核兵器が開発されましてから非常に小型化されてきた時代がございます。そのころの答弁でございますが、純粋に防御的な核兵器というものが仮に存在するとするならば、それは必要最小限の自衛力の範囲に入ると解釈されるという御答弁を、これは防衛庁からか法制局からかちょっと記憶いたしておりませんが、国会で御答弁申し上げたことがあります。
○土井委員 そういたしますと、防衛庁とされては、従来から憲法第九条のもとで戦術核兵器ならばこれは合憲である、憲法から考えて戦術核兵器の場合は持てるんだ、憲法違反ではないというふうなお考えで今日まで来られておるわけでありますね。
○伊藤(圭)政府委員 それはそうではございませんで、戦術核兵器の中にもきわめて大きな破壊力を持った戦術核兵器があるわけでございます。その中でもさらに純粋な防御的な兵器であれば憲法の否定するものではないということでございますので、いま先生がおっしゃいましたように戦術核というものを総合して述べているわけではないわけでございます。
○土井委員 私はどの程度の兵器がどういうことかということをお尋ねしているわけではないので、憲法の法理上、従来から戦術核兵器については、憲法第九条のもとでこれを持てるというふうに理解してよろしいという法理的な解釈というのが、今日までこの国会の答弁の上で出てきている。このことを先ほど局長はお確かめになったわけでありますから、防衛庁もそのお考えですねということを私は確かめさせていただいているわけです。よろしゅうございますね。
○伊藤(圭)政府委員 戦術核の中でも、純粋に防御的なものであれば憲法の禁止するところではないというふうに申し上げているわけでございます。
○土井委員 要するに、戦術核であることには変わりがないわけであります。防御的であるか攻撃的であるかということはいずれといたしましても、戦術核そのものについて、これを持つことを憲法は禁止していないという理解は従来どおりで間違いのないところですね、そうでしょう。ふんふんとうなずくばかりでなくて、はいとおっしゃってください。
○伊藤(圭)政府委員 核兵器を大きく分けまして、戦略核兵器、戦術核兵器というふうに分けますならば、戦術核兵器ということになります。
○土井委員 そこで、外務省の方にそれではお尋ねをいたしたいと思いますが、核拡散防止条約について非核保有国が締結いたしまして、そして非核保有国についてこの核防条約を締結いたしましてから後、戦術核兵器というものを持ってよろしい、持つことができるようになっているかどうか、この点はいかがでございますか。
○大川政府委員 核拡散防止条約の締約国である非核兵器国が、いまのように核兵器を持ってよろしいということではございません。
○土井委員 日本はこの核防条約を締結している国でありますか、どうでありますか。
○大川政府委員 日本は核防条約の締結国でございます。
○土井委員 そういたしますと、わが日本としてはこの核防条約締結後は、法理論上から申し上げましても、この核兵器というものを一切持つことができなくなったというふうに考えなければならないし、今後も持つことはできないと考えなければならないと思いますが、外務大臣、いかがでございますか。
○園田国務大臣 お答えをいたします。
 憲法上の議論からすれば、なかなか議論のあるところでありますが、いま御指摘の核条約及び非核三原則という二重に制約をされておりますから、私としては、核兵器は小型であろうと大型であろうと持ってはならぬ、このように解釈をいたします。
○土井委員 いま外務大臣がおっしゃったのは、非核三原則と核防条約の立場からすると、大型であろうと小型であろうと、核兵器を持つことは日本としてできないというお立場を鮮明にされているわけでありますけれども、これはただいま憲法の第九条からしたら、戦術核兵器は持てるという法理論も、実は核防条約の上から考えて、非核三原則の上から考えて持てないということとオーバーラップしまして、法理論上持てないというふうに考えなければいけないのじゃないかと私自身は思います。いかがです。憲法九十八条では、締結した条約というのは日本は遵守する義務がございます。これは憲法上の法理です。憲法上の法理ということから考えれば、核防条約を締結した日本としては、どういう核であるにしろ核兵器を保有することはできないとなっているわけでありますから、それからすれば、憲法第九条の法理から考えて戦術核というのはいまだに持てるんだというお考えというのは、まさに矛盾している、おかしいと言わざるを得ないのでありますが、この点いかがでございます。
○伊藤(圭)政府委員 従来憲法九条の解釈上の問題として、私ども、法制局とその解釈について話し合ってきておりますが、いまのお話でございますと、条約を締結している限りは持てないというふうに考えております。
○土井委員 条約を締結した以上は持てないというのは、憲法の九条から考えて持てないとなっているというふうに御確認をいただいたことになりますか、いかがですか。
○伊藤(圭)政府委員 九条の解釈からするならば、いかなる核兵器も排除するものではないという解釈であろうと思います。
○土井委員 九十八条の憲法の条文をお読みになると、この憲法の条規に反した処分というのは一切無効になるわけでございますよ。しかもその次、九十八条の二項では、日本が締結した条約は誠実に遵守する義務というものを日本の日本国憲法がきちっと明定しているわけでありますよ。それからすると、核防条約を日本は締結した、核は一切持てない、核兵器は大小問わず一切持てない、このことを条約の内容がきちんと明記しているわけですよ。これは非核保有国である日本の義務なんです。これを誠実に遵守すべきであるということを憲法が決めている九十八条に従って、第九条でも持てないということを法理上言わざるを得ないんじゃないですか、どうです。
○伊藤(圭)政府委員 そのことにつきましては法制局からお答え申し上げるのが適当だと思いますけれども、いずれにいたしましても私どもは、核兵器を持つという考えは一切持っておりませんので、法制局の方ともその点につきまして確かめてみたいと思っております。
○土井委員 いまの御答弁はまたあいまいでございまして、これひとつ、それじゃ法制局ときちっと詰めていただいて、政府の統一見解というのをこの節明らかにしておいていただかないと、私は、大変これは意味が大きいと思うのです、重大だと思うのです。
 外務大臣にお尋ねをいたしますが、この節各国から、八〇年になると日本は核兵器を持つのではないかという大変な疑義を日本は受けているわけであります。御承知のとおりだと思います。
 いままでジュネーブ会議を初めとして、軍縮会議の席で、日本は攻撃用の核兵器は持たないけれども、防御用の戦術核兵器というのは持てるのだというふうな説明を、核兵器についてなすってきたのでありますか。核軍縮については徹底的に日本としては、これは核を廃棄するという方向での提唱をなすってきたはずであるとわれわれは理解しております。ですから、こういうことについていかがなんです。国際会議においては、日本は、戦術核兵器は日本国憲法の法理上は持てる国なんだという説明を核についてはなさるわけでありますか。核について、戦術核と戦略核を区別して、攻撃用と防御用を区別してこの問題に対処をいままで国際会議ではなさったわけでありますか、またこれからもなさるわけでありますか。
○園田国務大臣 お答えいたします。
 国際会議でいまのような発言をしたこともありませんし、これから発言する意思もございません。
 いまの御指摘のことについて申し上げますならば、憲法九条だけ限定して見ると、法制的、法理論的な問題はあるかもわかりませんが、いまおっしゃいました結んだ条約は遵守しなければならぬ、それから憲法の各所に、日本国民の生命と財産を守るということが書いてあるわけでありますから、この精神からいっても、小型、大型であろうと、条約を結び、非核三原則の今日、憲法からいっても私は大型、小型は持てない。この前の大戦の末期に、危急存亡のときに、江田島にイペリット、ルイサイト、ホスゲン、こういう毒ガスがございました。これを使うか使わぬかという議論があったわけでありますが、そういう際にさえも日本は使わなかったわけでありまして、まして小型であろうとも、日本国民に被害を与えるおそれのあるようなものは、憲法の精神からいっても、いまおっしゃいました憲法の各所の条文からいっても私は持てない、このように申し上げておきたいと思います。
○土井委員 憲法の趣旨からいっても持てないというふうに外務大臣としてはお考えになっているわけでありますが、これは再度防衛局長の方に確認をして、ひとつはっきりさせておいていただきたいのは、憲法第九条の法理的な解釈とおっしゃいますが、憲法の法理というのは、憲法全体から見てその条文の法理的解釈というのは出てくるわけであります。第九条の文言解釈という点から、従来は防衛庁とされても法制局と詰めの上、戦術核兵器というのは第九条の文言解釈の上で持てるのではないかという見解で、今回までこの国会の答弁を続けてこられました。でも、第九条それ自身の、第九条に対する法理的な解釈というのは、憲法九十八条や、あるいはいまの外務大臣の御答弁の憲法十三条という問題とも関連して考えなければいけないわけであります。憲法全体から考えなければいけないわけであります。そういう立場からしても、日本国の国内法の最高法規である日本国憲法は、この戦術核兵器というものを持つことを許してない、戦術核兵器というものを持つことを禁止している。持てないように憲法の第九条は法理上これを定めているというふうに解釈しなければならないのじゃないか、このように思います。
 ひとつこれはもう一度、先ほど法制局と詰めるというふうなお話をされましたが、よろしゅうございますね、これ、きっちり詰めていただきたい。いまここで実は憲法に対しての法理的な認識をきちっと持っていただけるならば、防衛局長からはっきりした御答弁が得られてあたりまえでありますが、いかがです、局長、もう一度その点についての答弁をしていただきたいと思います。
○伊藤(圭)政府委員 いま外務大臣から御答弁がありましたとおりに、私どもも考えております。
○園田国務大臣 ちょっと先ほどの御質問に落としたことがありますので、お答えをいたします。
 世界のある国々で、日本が核を持つのではなかろうかという不安があるという話でありましたが、実際にそう思われまして、そういう質問を受けたことが二、三回ございます。総理も質問を受けたことがございます。そこで、総理、私は、その際、日本国憲法によってそういう核は絶対に持ちません、その証拠は日本国憲法であります、こういうふうにお答えをしておることを御報告いたします。
○土井委員 大変園田外務大臣ははっきりその点はなさっているのでありますが、園田外務大臣がはっきりその点をわきまえておられればおられるほど、防衛庁や法制局の見解とにずれが出てくるわけであります。法制局や防衛庁はいままで、戦術核兵器は持てる、憲法第九条のもとで持てるというお立場で臨んでこられたわけでありますから、この節、防衛庁、さらには法制局の見解を変更させていただかなければ困るわけであります。どうです、防衛庁としては、いままでの見解と違ってまいっておりますね。
○園田国務大臣 私が弁解する立場でありませんが、防衛庁から答弁しましたのは、最初に土井委員から憲法論議を吹っかけられて、九条だけだということで、九条にはどこにも書いてありません、こういう意味で、実際は防衛庁の方も、大型、小型にかかわらず持てない、こういう解釈には間違いないということでございますので、御了解を願いたい。
○土井委員 せっかくの外務大臣のお言葉でございますけれども、外務大臣は防衛庁長官じゃないので、その点は、防衛庁や法制局の見解というのは、今日に至るまで、国会答弁では、憲法上戦術核兵器は持てるという御見解を持ち続けてこられたわけでありますから、このただいまのいろいろな質疑で、この点が改めて変更されるというかっこうになります。この点をはっきり御確認をしておいていただかないと、外務大臣からのいろいろな注釈は、もうすでに私は外務大臣答弁をはっきりいただいておりますので、不要であろうかと思います。防衛庁、よろしゅうございますね。
○伊藤(圭)政府委員 先ほど来外務大臣が御答弁申し上げたとおりに、私どもも考えております。
○土井委員 そうすると、その点は、従来とはこの解釈が違ってきたということをはっきり確認せざるを得ないわけであります。ひとつ法制局とも詰めて、統一見解というのを改めてはっきり出していただけませんか。よろしゅうございますね。
○伊藤(圭)政府委員 法制局とも打ち合わせてみたいと思っております。
○土井委員 従来、この核防条約の趣旨からいたしますと、核保有国の核軍縮を、手をこまねいて待っているわけにはいかないということで、非核保有国が核保有国を引き込むような核軍縮の提案をすべきである、そういう提案こそ大変大切である、また、そういう時期に来ているのだという認識が非常に強くこの背後にはあるということを、私たちとしては知っておかなければならないのじゃないかと思うわけであります。
 そこで、わが国は、先日来、予算委員会の席を通じましても、福田総理の御答弁の中に、非核三原則というのは憲法に準ずる国是であるということをはっきり御答弁されてまいっております。そういうことからすれば、過去、日本としてはこれは国是だ国是だと、非核三原則に対して国内ではこの認識は非常にはっきりしておりますし、このことに対する認識は非常に高いということを言わなければならないわけでありますが、さて、国際会議の席で、国際的に日本という国は非核三原則の国であるということが十分に認識され尽くしているかというと、私はまだこれからの感があると言わざるを得ないのじゃないかと思うのですが、いままで国際会議の席で、特に軍縮会議なんというのは卑近な会議だと思いますが、そういう席で日本としては非核三原則の国であるということを鮮明にされた、そのことを提唱されたという例がございますか、いかがでございますか。
○園田国務大臣 私の記憶に間違いがなければ、いままでも国連の演説の中でそういうことに触れたことはあると思いますが、しかし明確ではございませんので、今度の軍縮総会では、総理がお出になるか私が出るかわかりませんけれども、いまのような御意見は、世界各国のいろいろな質問に対してもこれは鮮明にすべきチャンスではないかと考えますので、十分検討して、やりたいと思います。
○土井委員 もう外務大臣から、近く開かれる軍縮会議の席ではその点をはっきり鮮明にさせたいという御答弁をいただいておりますので、蛇足になるかもしれませんが、外務省の担当局長が御出席であるかどうかよくわかりませんが、――いらっしゃいますね。いままで国連の席であるとか各国のこういう会議の席で、日本としては非核三原則というものを国是として持っているというふうな意味を鮮明にされ、これを国際的にはっきり提唱されたという例がございますか。
○大川政府委員 昨年の国連総会、第三十二回総会でございますけれども、その際におきます日本の鳩山外務大臣の一般討論演説の中で、こういうことを申しております。「わが国は、自ら、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずとの非核三原則を堅持しておりますが、さらに、核戦争の防止に貢献すべく、核拡散防止条約の締約国となったのであります。」こういうことを申しております。
 なお、ジュネーブの軍縮会議におきましても、この趣旨の発言をしたことがございます。
○土井委員 その二回限りだと思いますが、いろいろな提案が外国からあればそれにこたえてという意味ではなくて、やはりわが国が世界に先駆けて、特に非核保有国の中でも憲法第九条を中心にした平和憲法を保持している国であり、先ほど来外務大臣が鮮明にされたとおり、大小を問わずあらゆる核兵器というものを日本は憲法上保持できないという国であり、非核三一原則の国であるという立場から、核はつくらず、持ち込ませず、そして持たずというこの非核三原則の内容というものをひとつ徹底的に鮮明にさせていただきたい、このように思っておりますが、外務大臣、よろしゅうございますね。
○園田国務大臣 お答えいたします。
 このたびの国連軍縮総会では、日本は三つ、一つは、核の洗礼を受けた悲惨な唯一の国であること。一つ、憲法。一つ、非核三原則。この三つを柱として核廃絶ということを訴える舞台である、私はこのように考えておりますので、そういう方針のもとに大体検討するつもりでおります。

衆議院 外務委員会(委員長:奥田敬和)
1980年8月19日(火)午前10時46分開議

○土井委員 どうも言い得て妙な御答弁なんですが、大臣、御承知のとおりに、広島、長崎の原爆三十五周年の式典で、先日、核軍拡阻止の訴えがございました。しかし日本の国内を見ました場合に、残念なことでございますが、一握りの日本人の中には日本も核武装をすべきであるという意見を持っておる人もございます。
 私は当外務委員会で、園田外務大臣当時でございますが、憲法から考えてわが国は核兵器は保持することができない、そういう明確な御答弁をすでにいただいておるわけですが、しかし、どうもややもいたしますと最近は、いろいろな情勢が流転をいたしておりまして、右バネが強く動くという傾向が間々ございます。従来、いろいろ国会答弁で明確にされてきたこともしばしば変わっていくという傾向がございますので、伊東外務大臣は平和については一方ならぬ異常な執念をお持ちであるということは私も拝察いたしておりますので、本日最初の質問の機会でもございますからこの点をひとつはっきりと確認をさせていただきたい、このように思うわけでございます。
 園田外務大臣当時、憲法から考えてわが国は核兵器を保持することはできないというふうなことを言われた線を、やはり伊東外務大臣とされましてもお考えになっているだろうと私は拝察をいたしますが、そのように考えてよろしゅうございますね。
○伊東国務大臣 御承知のように核兵器の拡散防止条約にも入りまして、これはなるべく核兵器の軍縮といいますか縮小といいますか、そういうことにも世界は努力すべきだということを常に日本は主張しておるわけでございまして、いま園田外務大臣の発言を引いての御質問でございますが、私も同じ考えでございます。