ノアザミとノハラアザミ

ノアザミ

アザミはその鋭い刺(トゲ)で名をはせてきた花である。
名の由来も花に引かれて近づくと葉のトゲにさされる、つまり ’あざむく’ から来た説と、アザは昔はトゲの意で、トゲのある実から来たと言う説、アザムは傷つけると言う意味で、アザムが転化してアザミになった等、諸説あるが、いずれもトゲに関係している。
アザミのトゲは世界的にも有名で、スコットランドでは敵国の軍が忍び寄った時アザミの刺に刺されて大声をあげ、それで気づいて打ち破った故事から救国の花として国花になっている等アザミと言えばトゲを連想させる。
アザミは世界に300種、日本に100種近くあり、三分の一を日本種が占め、その総称がアザミで、アザミと言う固体種があるわけでは無い。
又、日本に生育する100種近いアザミの内、五種類がアジア大陸と共通した種類で、残りは日本固有種であり、その意味ではアザミは日本の代表的な花のひとつであるが、大半は高山等の山地に咲き、平地で見られるアザミは限られる。
平地で見られるアザミの中でもっとも目に付くアザミがノアザミで、アザミ類は普通夏から秋にかけて咲く種類が大半であるが、ノアザミは春に咲き、散歩道の土手で良く目立つ。
ノアザミの変種のミヤマコアザミも春から夏と一般のアザミより早く咲くがこちらは山の花である。

ミヤマコアザミ

一方、ノアザミとそっくりなノハラアザミと呼ばれるアザミが秋の野原を彩り、外見ではノアザミと区別は付かない。 ただ、咲く時期が違う事と、総包がノアザミの様にねばねばしない事で触って見ると区別は可能である。

ノハラアザミ

この地方の散歩道でみられるアザミはノアザミかノハラアザミ、タカアザミ、トネアザミ程度である( 「タカアザミとトネアザミ」 の項参照)。
花屋で売られているドイツアザミは日本のノアザミがヨーロッパで品種改良され里帰りしたもの、あるいは日本で改良されて、箔を付ける為、ドイツの名が冠されたものとも言われる。
これらのアザミ類は古くから美味しい山菜として食べられ、若芽は天ぷら、胡麻和え、クルミ和え等、美味しい食材となり、根はキンピラ、漬物に使われ、特にモリアザミの根はヤマゴボウの漬物の材料として栽培されてもいる。 ヤマゴボウは毒が有り、食用にならず、観光地でヤマゴボウの漬物として売られているのはモリアザミの根である。 又、ヨーロッパで高級食品とされるアンテイチョークはチョウセンアザミの事である。
薬としても、健胃、利尿等に薬効があり、日本でも古くから用いられてきたが、ヨーロッパでもマリアアザミは肝臓、消化の薬としてギリシャ時代から用いられてきた記述があり、洋の東西を問わずアザミは食材や薬として人々の生活に関わってきた。

鮮やかな赤紫色の花と葉の鋭いトゲが特徴のキク科の花であり、 「山には山の愁い有り、海には海の悲しみや まして心の花園に咲きしアザミの花ならば・・・・・」 の 「アザミの歌」 でオールドボーイには懐かしい花でもある。

次へ

最初のページへ戻る