ハタケニラとステゴビル

ハタケニラ

埼玉県指定の天然記念物として県内でも坂戸と秩父だけに自生するステゴビルと呼ばれる植物がある。
なにやら怪獣みたいな名前であるが、「捨て子蒜」 「捨て小蒜」 と書いていわゆる蒜(ノビル、ネギ、ラッキョウ等食用になるユリ科ネギ属の総称)に似て食用にならないので捨ててしまう意味で名付けられた花である。( 「ノビルと万葉の食卓」 「ニラは怠け者の花」 の項参照)
ノビルやニラに似てはいるがネギ属ではなく、ステゴビル属(又はハナビニラ属)に属し、ノビルやニラに似た可愛い花を秋に付けるが天然記念物に指定されるほどの希少種で、筆者も写真だけで本物は残念ながら見たことはない。
ところが、近年、ステゴビル属に属する北米ないしはアルゼンチン原産のステゴビルに良く似た花が道端に目に付くようになってきた。
最初はノビルの近似種かと思って調べてみても、関連書籍には載っておらず、ステゴビルにしては花期が5月から6月と早く、暫くは悩みつつも放っておいた。
たまたま、ニラの関連を調べていたら、ハタケニラと呼ばれる帰化種であることが分かった。 明治時代に鑑賞用に持ち込まれた花が近年帰化して日本中に広がっているようである。 地下茎に鱗茎を形成し、この鱗茎による繁殖力がものすごく、強害雑草として問題になっている。

ハタケニラ(畑韮)と名付けられたのは葉がニラに似て畑で栽培されていたからか、畑の害草になったからかは不明である。


日本古来のステゴビルが天然記念物として保護されて細々と命脈を保っているのに比べ、外来種が大手を振って伸してきているのは皮肉な事である。

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