ヤマノイモ

ヤマノイモの花と果実

八月に入ると白い小さなほとんど開かない花を付けたヤマノイモ(山の芋)があちらこちらに目に付くようになる。
山ばかりでなく、この地方の平地の散歩道の途中にもフェンスに蔓を伸ばしており、蔓の下の長大な根が縦に伸びて自然薯(じねんじょ)となる。
自然薯(じねんじょ)は自然に生えている為、栽培種のナガイモ(長芋)やヤマトイモ(大和芋)と区別してこの名がある。
栽培種のナガイモやヤマトイモ等は中国を経て渡来した外来種であるが、自然薯だけは日本にも古くから生育している芋で古代人にとっても貴重な食料であったと考えられている。
ただ、一般にはナガイモやヤマトイモの事をヤマイモと呼ぶ人が多いのでややこしいが、先日、 「自然薯の里」 と書かれた地方を通った時、 「山から掘って売っているのですか?」 と尋ねたら、 「掘るのが大変なので、最近はパイプを埋めて栽培しています」 との事で、ますますこんがらがる。
サトイモ(里芋)に対し、ヤマノイモ(山の芋)と名付けられたようであるが、春には若葉を茹でてお浸しや和え物にし、秋にはムカゴを取ってムカゴ飯となり、根はとろろ汁や山かけにして食べられる美味しい食材である。

ムカゴ           果実

ムカゴは実(み)ではなく、実(み)は写真右上の様に翼を持っており、子供の頃、鼻の先にひっつけて遊んだ経験を持つ人も多い。
大きな根に貯蔵した栄養分で次年度以降の生育を確保し、ムカゴによって近隣地に新しい生育場所を得、翼の付いた実で遠くに分布を広げるという、したたかな生存戦略を持った植物である。
一方、根を乾燥したものは漢方の生薬名で山薬(さんやく)と呼ばれ、古来から有名な強壮剤で、中国の古書 「神農本草経」 に 「虚弱体質を補って早死にしない。 胃腸の調子を良くし、暑さ寒さにも耐え、耳、目も良くし、長寿を保つ事が出来る」 とある。(参照:e-yakusou.com)
ヤマノイモ酒も造られ、一般には、とろろ、とろろ汁として食用にすれば効き目があるそうである。


ヤマノイモ科の植物で、普段はヘクソカズラやガガイモ等、他の蔓性植物にまぎれて目立たないが、花やムカゴ、実を付けだすと、すぐそれと分かる花であり、秋から冬にかけて美味しい自然薯が取れる。

次へ

最初のページへ戻る