ノブドウとエビズルとヤマブドウ

ノブドウ

秋になると、散歩道のあちこちで急に目立ち始める植物群がある。 ノブドウやエビヅル、、アオツヅラフジ、カラスウリ、スズメウリ、クコ等、実のなる植物群が花の少なくなった散歩道をカラフルに彩る。(  「アオツヅラフジ花よりも実」 「カラスウリとスズメウリ」 「 クコは万病の薬」 )
特にノブドウ、エビズル、ヤマブドウ等のブドウ科の植物は夏に咲く花がほとんど目立たず、葉はいたるところに茂っていても、気に留める人はほとんどいないが、秋になると極めてカラフルな色調で散歩をする人の目を引き付ける。 

ノブドウの花     ノブドウの実と葉     キレハノブドウ

エビヅルの花      エビヅルの実      エビヅルの葉

ヤマブドウの実と葉

ノブドウやエビヅルやヤマブドウは古来から日本で自生するブドウ科の植物であるが、現代の葡萄とは別種である。
現代の葡萄のルーツは西アジア原産と北アメリカ原産の二種類があり、日本で栽培されている葡萄の大半はこの二種類を交配させたものだそうである。 当初は西アジア原産のものが欧州や中国に広まり、日本には中国を経由して伝わったが、西アジア地方の呼び名ブーダウがブドウの名の由来と考えられ、その後、北アメリカ原産の葡萄が導入され、現在の日本の葡萄となっている。
日本に古来から自生する葡萄類の内、エビヅルやヤマブドウの果実は食用になるもののノブドウの果実は食用にならない。
ノブドウ(野葡萄)は野になるブドウ、ヤマブドウ(山葡萄)は山になるブドウの意味で名付けられた比較的新しい名前で、日本原産の葡萄類は古来からひっくるめてエビヅルやエビカズラの名前で呼ばれていた。 
古事記にはイザナギノミコトが黄泉の国(よみのくに)から逃げ帰る時追ってきた鬼にエビカズラを投げつけて、鬼がその実を食べている時に難を逃れた記述があり、それほど古い名である。 現代ではノブドウ、ヤマブドウ、エビズルの三種類に分けられる。

エビカズラのカズラ(蔓)やエビズルのツル(蔓)はつる性植物を意味する事は明白であるがエビの名の由来ははっきりしない。 ただ古来から日本のブドウ類はエビカズラやエビズルと呼ばれ、エビ色はこのブドウの汁や実の色の赤紫色の事であるが、近年、伊勢海老の色にちなんでエビ色と、誤用される事が多い。
ノブドウは食べられない事から中国では蛇葡萄(蛇が食べる葡萄)と書かれるが、漢方の薬になり、葉や茎を漢方の生薬名で蛇葡萄(じゃほとう)、根を蛇葡萄根(じゃほとうこん)と呼び、関節痛等に薬効があり、ノブドウ酒も造られ、痛風等に効果があるとされる。
エビズルやヤマブドウも果実酒にすると、酒石酸と言う成分により血を増やしたり、元気を付ける効果がある。
ノブドウはいたるところに繁茂しているが、変種が多く、葉の形もさまざまで、葉の切れ込んだものはキレハノブドウと呼ばれる。 秋には空色や紫や白等、色とりどりの果実を付けるが、葡萄のような房状にはならず、又、ブドウタマバエやブドウガリバチ等の幼虫が寄生して虫こぶを作るのでいびつな形をした果実が多い。
エビヅルもノブドウほど多くはないが、散歩道のところどころに姿を現し、ノブドウと違っていかにも葡萄といった房状の実を付け、すぐそれと分かる。

ヤマブドウはノブドウやエビズルほど目立たず、山に入らないと見る機会は少ない。
ノブドウ、エビヅル、ヤマブドウは秋になると急にその存在感を示す植物である。

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