「 草が生い茂り、春も盛りを過ぎた頃、林縁や山野にはっとするような青色をした花が立ち上がる。 ホタルカズラである。 」 と書くと、何処にでも咲いている花に思われるが、それは昔の事で、現実には、自生地はきわめて限られてきており、この地方でも、見つけるには場所を限定して探す必要がある。 日本全土の日当たりの良い野原や林に自生し、日本や朝鮮半島に古くからある花であるが、近年では野生種を見る事はなかなか難しく、その代わり、ヨーロッパ南部で咲くホタルカズラがミヤマホタルカズラの名で園芸種として出回っており、こちらを目にする機会は多い。 |
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園芸種のミヤマホタルカズラ
ムラサキ科の花はキュウリグサ、ワスレナグサ、ハナイバナ等、五花弁の小さな花を付けるが、ホタルカズラはこれらに比べると比較的大きく、花も見栄えがする。( 「キュウリグサとハナイバナ」 の項参照) これらムラサキ科の本家本元のムラサキはホタルカズラに似た白色の花をつけるが、ホタルカズラよりさらに自生地が限られ、絶滅危惧レッドデーターブック1B類に登録され、幻の野草とも言われ、残念ながらお目にかかったことはない。 根に紫色の色素があり、万葉の頃から染料として用いられた花で、万葉集に有名な相聞歌がある。 「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」・・・額田王 「紫草の 匂へる君を 憎くあらば 人妻ゆえに われ恋めやも」・・・・大海人皇子 現代でも岩手県で 「紫根染め」 として残っており、ムラサキも栽培されているようであるが、この地方で見つけることは難しい。 一方、ホタルカズラはまだこの地方でも探せば見つかる。 |
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咲き始めはピンク色した花が鮮やかな青色に変わり、花後は横に長い枝をを出して地表を這うように広がり、その先に翌年の新苗を作る。 枝が這う様子を蔓(カズラ=つる性植物)に例え、点在する目に鮮やかな青い花を蛍の光に例えてホタルカズラの名が付いた。 かっては何処にでも見られた花が、自生地をどんどん狭められていくのは残念な事である。 |