ツユクサ
「朝(あした)咲き 夕べは消(け)ぬる 鴨頭草(ツキクサ)の 消ぬべき恋も 我はするかも」・・・万葉集 万葉集のツキクサは現代のツユクサの事で、早朝、露にぬれながら花を咲かせ昼すぎには凋んでしまうツユクサ(露草)のはかなさと恋を掛け合わせた歌である。 古名のツキクサは 「着草」 とも書かれ、かっては布や和紙を染めるのに使われていたのでその名があるが、光や水に弱く変色しやすい為、中国から藍染などの技法が入ってくるとツユクサ染めは衰退した。 ツユクサ染めは色が変わりやすい事から、万葉時代にはそれにことよせて頼りにならない恋心を詠んだ歌が多く、表題の歌や 「ツキクサに 衣は摺らむ 朝露に ぬれての後は うつろひぬとも」 等が有る。 しかし逆に水に溶けやすい性質を利用して友禅染めの染色の下絵を描く染料として利用されるようになり、ツユクサの栽培変種であるオオボウシバナは江戸時代中期から滋賀県草津市を中心に栽培され、現代の草津市の市花でもある。 早朝に開花した花は昼には萎み、又、搾り取った汁はその日の内に変質するので、青花摘みとその後の友禅染の作業は酷暑の中、連日過酷を極め、生産地では地獄花とも呼ばれた。 現代ではこの下絵を描く染料も科学色素に取って代わられ、一部を残すのみとなり、ツユクサも夏に咲く雑草でしかないが、昔は染物ばかりでなく、おひたし等の食用にもなった他、解熱、下痢止め等の薬用としても利用された。 色の淡いウスイロツユクサと呼ばれるツユクサもたまに見かける。 |
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通常のツユクサ
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ウスイロツユクサ
名の由来は そのはかなさを露に例えてツキクサ(着草)からツユクサ(露草)になって次第に定着したとの説が有力である。 |