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肖像を描いて欲しいと所望されたり、この人を描きたいなと思うことがある。だが、前者の所望された場合の方は難しい。若い時より最近は特にそうである。友人やそんなに親しくなくても同性の場合は特に、である。
「いいですよ」とうっかり返事をしようものなら、間髪を入れず「奇麗に若く描いてね」と来るからである。
今回の「ノワ・アコルデ」でのサロンコンサートのテーマは「肖像」だと聞いた。
ルイ14世の御代に活躍した作曲家達が、今の私たちが初対面に挨拶するときに名刺交換をするように、小さな曲を作曲し、尊敬の意味を込めて相手の名前をつけて贈るという、なかなかおしゃれでスリリングなことが行われていたようだ。
早速、私の所へ、「4月のサロンコンサート用に平井さん、今回のベルサイユの作曲家達と私たち出演者の肖像を描いて下さいませんか。是非!」とご所望があった。
ルイ14世や作曲家たちはもう遥か古への方々なので、まあ問題はない。「がさて、‥?」クエスチョンマークが頭の中で増え続ける。今回の企画をしている頼田嬢から「主催コンサートなんですからシリーズにして是非展示しましょう」と言われれば、仕方がない。
「では‥」ということになり、3月の「胡桃庵古楽道場」ヒロ・クロサキ氏(バロックバイオリン)の公開レッスン&セミナーに出て下さった嵯峨山庸子さんに伝わると、「描いてもらえるの?」と普段大人しい日本美人がきゃっきゃっとはじけておられるとのこと。ちなみに目がト音記号、口がバイオリン、眉毛が五線譜になったルクレールの肖像をお見せしたところ、大変興味を示されている感あり。彼女自ら、「奇麗に若く」ではなく時代様式を越えてイングランドのエリザベス女王一世時代のハート形の金髪の髪型にしてほしいとリクエストをされ、そのはじけっぷりに絵描きの創作欲プラス鬼の金棒を与えられたようで「では、わたくしも皆さんの肖像に大整形手術をさせて頂きます故、よしなにお伝え下さいませね」ということに‥。
かくして、私の肖像画に対する“恐怖心”は見事に打ち砕かれ、のびのびと描かせて頂くことができた。
このように寛大でユーモワとエスプリにあふれる4人の美人演奏家達によって、今日はベルサイユ宮殿ルイ14世のサロンへ誘われることでしょう。
存分にお楽しみあれ! |