■ Vol.7 | 2008年1月6日号 ■
少年モーツアルト
 ある日、ダン・タイソンのお弟子で中国人のチン・チェンユウさんのコンサートが我がサロンで開催されたときだった。
世界を飛び回っておられる指揮者M氏が、珍しくノワ(※ノワ・アコルデ音楽アートサロンの略)に来られて「平井さんの絵をコンサートのチラシに使わせてほしいんですが‥」とサロンの壁を見渡され、「これ、いいですねえ」といって1枚の絵を持ってかえられた。

 しばらくたって、そのしばらくとは2〜3ヶ月ぐらいである。チェン君のコンサートのお手伝いに来ていたHさんという音楽事務所をされている知的で落ち着いた雰囲気の女性から電話がかかって来た。声がえらく弾んで楽しそう。
「あの平井さんの絵なんですが、あの『少年モーツアルト君』がうちの事務所にいらっしゃるんですよ。」

「まあ、まあ、そちらにお邪魔してるんですか?」

「いえいえ。毎日このモーツアルト君を眺めて楽しませて頂いているんですよ。先日ね。ウィーンフォルクスオパーの団員さんですごいバイオリニストが来て、この絵を見たとたん『すごいパワーを感じるうう』っていわれて、見ながらリハをされていたんです。彼は素晴らしい演奏家ですよ。その人がそういって‥。コンサートも素晴らしかったので、本当にモーツアルト君に感謝です。」

「まあ、かわいい子には旅をさせよですね。いえ、本物のモーツアルトが旅に生きたんですから、外に出すほうが好いに決まってますね。それを聞いて生みの親も元気でましたわ。」

「え、そうなんですか」

「秋からのコンサート案内チラシ作りでパソコンのかまぼこ状態。つまり張り付いていましたから。ところで、どうしてお宅に来たんですか」

「実はM先生の事務所とうちは、道路を挟んで目と鼻の先でして、平井さんのモーツアルト君は、自転車に乗っけられてこられたんですよ。(笑)」

「まあ、自転車の旅でしたか!」(お互い笑い)

 またしばらくして、友人から
「新聞で見ましたよ。いずみホールでコンサートがあるんですね。平井さんの絵に似ているなあと思っていました!」

生みの親「へえ、出てるのお。ちっとも知らなかったわ!」

 しばらくしてほんとに楽しいコンサートを聴きに行きました。タイトルは『みなでカンタービレ』(のだめカンタービレからイナバウワーまで)。会場ロビーには我が『少年モーツアルト』が出迎えていて、生みの親は、照れくさいものでしたが、客席のみなさんの膝の上にはプログラムがずらりと並んでいて、その表紙絵が、小さくなった我がモーツアルト君でして、これにはニンマリ。昔母の三面鏡を覗いた時の記憶が蘇りました。金太郎飴の大型版のようでした。ほぼ満席コンサート!は盛りだくさん。 特に関学2回生で、国際コンクールに優勝した学生の口笛コンチェルトは、きっとうちのカレも、やんやの拍手を送っていたことでしょう。

 「少年モーツアルト』は、かくして、みなさんに可愛がられ、サロンに帰ってきました。Mさん、アイデアとハートのあるお人柄で若い音楽家をどんどん紹介されていますね。これからもますますご活躍を。私も小さな音楽サロンをみなさんとともに育てようと思います。みなさん少年モーツアルトに会いにお越し下さいませ。

 註) 『少年モーツアルト』は『もし現代にやって来たら、きっと携帯を使って友達とメールして遊んでいたに違いない」と思い描きました。彼の廻りには携帯電話(もう旧式になってしまいました。変わり方が早すぎますねえ)がたくさん浮遊しております。


 ※ノワ(ノアとよく間違われるのですが、野原のノの次にクチビルを細めて突き出してウからすばやくクチビルを開けるとノワと勢いよく発音できますので、よろしくお願い致します。)意味はフランス語でクルミの意味。アコルデは調和されたという形容詞。ノワは女性名詞。フランス語のスペルは複数形にしていますので、調和されたクルミ達。“響き合う胡桃達の館”と勝手に読ませています。以後よろしくお願いいたします。

胡桃庵 記

HOMEサロンTOPコンサートサロン通信ご利用案内アクセスお問合せリンク
COPYRIGHT NOIX ACCORDEES. ALLRIGHTS RESERVED