ピアニストで指揮者そして作曲家であった20世紀後半のカリスマ的存在のレナード・バーンスタインが、1990年、末期のがんを乗り越えて、平和と次世代へのメッセージを提唱して始まった国際音楽教育フェスティヴァル15年の軌跡を、札幌のフリージャーナリストが書いたドキュメントです。
世界各地で行われるオーディションで選ばれた音楽学生が世界トップクラスの演奏家達から一ヶ月間、レッスンを受け、なおかつ聴衆の前で一緒にオーケストラ曲や室内楽等を演奏するという音楽祭です。
バーンスタインは、帰国後間もなく亡くなってしまうのですが、世紀のカリスマを失って、どうして続けられたのか、個人や団体、札幌市長、大手企業トップの決断、一瞬の出会いで動いて行く臨場感があります。
当初、検討されていた候補地が中国から、札幌に急展開して、 UFOのごとく舞い降りた音楽祭。これも奇跡的なことですが、単にバーンスタイン信奉者だけでなく、多方面からの角度で書かれているのも特徴です。
またこの“奇跡”を持続させている原動力として欠かせないのは、ウィーン・フィルハーモニーの首席奏者でありウィーン音楽大学の教授達の献身的とも見える行動力です。
ウィーン・フィルというと伝統に縛られたイメージが何となくありますが、その運営は団員達の民主的な運営にまかされており、その方式が札幌にも、とけ込んでいるようです。
関西では、なじみがもう一つと思われるかもしれませんが、このPMFアカデミーを体験して関西のオーケストラや海外で活躍している人も多く、学生達の生の声も取材されています。ちなみに音舞会会員の山本禎二さんのお嬢さんも打楽器奏者として参加され、海外で活躍されているお一人です。
7月の札幌は、曇りの夜空でも青く見え、小鳥がさえずる「芸術の森」(札幌郊外)コンサートは、家族一緒にピクニック気分で聴くことができます。夏休みの本の一つに、いかがでしょうか?
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