相続税の計算方法は





 相続税の計算の概要
  相続税を計算する場合は、以下の要領となります。

  第1 相続人全員が法定相続分に応じて相続したと仮定して相続税の総額を計算する。

  第2 その後、各相続人の実際の財産の取得割合に応じて相続税の総額をあん分して
各人が納付すべき税額を計算する。

  なお相続人とは、民法で定められた法定相続人です。法定相続分とは、法定相続人が相続
財産に対して有する法律上の権利の割合です。例えば、法定相続人が妻と子供3人の場合に
は、法定相続分は、妻が2分の1、子供は各6分の1宛となります(民法900条)。

  相続税の計算の順序
具体的には、次の順序で計算して算出します。
 1 相続財産(課税価格)の合計額を算出する・・・・(借金などの負債はマイナスする)
 2 基礎控除額
 3 課税遺産総額(上記1から2を控除)
     計算式 → 課税遺産総額=相続財産(課税価格)の合計額 − 基礎控除額
 4 上記3の課税遺産総額を各人の法定相続分によってあん分する
 5 相続税の総額を算出する(上記4に税率を乗じて算出した税額の合計)
 6 各人の実際の取得割合で5の相続税をあん分する
 7 各人の納付税額(6−税額控除など)が定まる

上記1の「課税価格の合計額」とは 
 課税価格の合計額とは、各人が相続や遺贈によって取得した財産の価額の合計額(被相続人
の財産の価額)のことで、次のように計算します。

 課税価格の合計額 = 相続税がかかる財産の価額−(葬式費用+被相続人から受け継いだ
 債務) + 相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産の額

課税価格の合計額の計算に際して
1 相続税がかかる財産は、原則として相続開始のとき(被相続人が亡くなったとき)の時価
で評価します。
2 葬式費用とは、葬儀やお通夜など葬式にかかった費用をいいますが、香典返しや墓地、墓
石の購入、法要などのための費用は含まれません。
3 被相続人から受け継いだ債務のうち控除できるものは、債務として確実なものに限られ、借
入金.未払金などのほか、被相続人の租税債務なども含まれます。
4 相続や遺贈によって財産を取得した人が、その相続開始前3年以内にその被相続人から贈
与によって財産を取得したことがある場合、その贈与で取得した財産の価額を加算します。

上記2の「基礎控除額」とは
 基礎控除額は、次の計算式によって算出します。


 基礎控除額 = 5,000万+1,000万円×法定相続人の数  
  (但し、2014(H26)年12月31日までに生じた相続に限る)

 例えば、法定相続人が妻と子供3人の場合、基礎控除額は9,000万円となります。
  (基礎控除額:9,000万円 = 5,000万+1,000万円×法定相続人の数4名)

 ・・もし、この家族のケースで、課税対象となる財産が9,000万円以下であるなら、妻にも子供にも
  相続税はかかりません。

 なお法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数は次のようになります。
    * 実子がいる場合:実子の数+養子1人まで
    * 実子がいない場合:養子2人まで

上記4の「法定相続分によるあん分」とは
  課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いた金額(課税遺産総額)に、法定相続分を乗じて各
  法定相続人の相続額を計算します。
  例えば、課税価格の相続財産が金1億5000万円あり、法定相続人が妻と子供3人の場合には、
  次のようになります。


  「例1」
   課税遺産総額:6,000万円=相続財産1億5000万円−基礎控除9,000万円
   法定相続分:妻2分の1、子供各6分の1宛
   相 続 額 :妻・・・・6,000万円×2分の1= 3,000万円
        :子供は6,000万円×6分の1=1,000万円宛

上記5の「相続税の総額」とは
  各法定相続人の相続額に税率を乗じて税額を計算し、それらを合計して相続税額の総額を計算
します。


【相続税の速算表】
法定相続人の相続額   税率    控除額
 800万円以下 ・・・・・・・ 10% ・・・・・・・・・・ 0円
1,600万円以下 ・・・・・・ 15% ・・・・・・・ 40万円
3,000万円以下 ・・・・・・・ 20% ・・・・・・・ 120万円
5,000万円以下 ・・・・・・・ 25% ・・・・・・・ 270万円
1億円以下 ・・・・・・・・・・ 30% ・・・・・・・・520万円
2億円以下 ・・・・・・・・・・・ 40% ・・・・・・ 1,520万円
4億円以下 ・・・・・・・・・・ 50% ・・・・・・ 3,520万円
20億円以下 ・・・・・・・・・・ 60% ・・・・・・ 7,520万円
20億円超 ・・・・・・・・・・・・・ 70% ・・・2億7,520万円

例えば前述の「例1」では次のようになります(以下、「例2」という)。
 妻の相続税:3,000万円 × 20% − 120万円 = 金480万円
 子供の相続税:1,000万円 × 15% − 40万円 = 金110万円
 相続税の総額: 480万円 +(110万円×3) = 金810万円


上記6の「実際の取得割合によるあん分」とは
 相続税の総額に各人が実際に取得した相続財産の価額の割合を乗じて、各人が負担する税額
(算出税額)を計算します。
 例えば前の「例2」の場合で、実際には妻と長男が相続財産の2分の1ずつを取得し、他の子供
 は相続しないケースの税額は、次のようになります。

「例3」という
 前の事例 「例2」 → 《 相続税の総額:480万円(妻)+(110万円×子供3人)=金810万円 》
 妻 :810万円×2分の1 = 405万円
 長男:810万田×2分の1 = 405万円
 他の子供:相続しない→税なし


上記7の「各人の納付税額」とは
 以上の課程を経て税額を算出し、最後に次のような税額加算や税額控除を行って、各人が納付す
 べき税額(納付税額)を算出します。

 1 相続税額の加算
  被相続人の配偶者や一親等の血族でない人が相続や遺贈により財産を取得した場合は、原則と
  してその人の相続税額に20%を加算します。

 2 税額控除
  ア. 贈与税額控除  被相続人から相続開始前3年以内(相続開始の年を除く)に財産の贈与
   を受けている場合には、次の算式により求めた金額が控除されます。


   贈与税額控除= 申告した贈与税額×相続税の課税価格に加算された贈与財産価額 ÷ 申告した贈与財産価額の総額

  イ. 配偶者控除  被相続人の配偶者の相続税額から、次の算式により求めた配偶者の税額
    軽減額が控除されます。
    なお配偶者控除は、原則として申告期限内に分割されていない財産や仮装または隠ペいさ
    れていた財産は含まれないことになっています。


 【配偶者に対する相続税額の軽減】(相続税法第19条の2)
   相続税の総額 × (次のA又はBのうち、少ない方の金額 ÷ 課税価格の合計額)
   A: 配偶者の法定相続分の課税価格(1億6,000万円以下の場合は、1億6,000万円)
   B 配偶者の実際の課税価格

 例えば、前記「例3」では、配偶者に対する相続税額の軽減措置の規定が適用されるので、次の
 ようになります。


  妻の納付税額:  なし
  長男の納付税額: 405万円

 ウ.未成年者控除  法定相続人が相続開始時に満20歳未満の場合には、次の算式により求めた
   金額が控除されます。

  【未成年者控除】(相続税法第19条の3)
    6万円 × (20歳 − 相続開始時の年齢)

 エ. 障害者控除  法定相続人が障害者の場合には、次の算式により求めた金額が控除されます。
  【障害者控除】
    6万円(注) ×(70歳 − 相続開始時の年齢)
    (注)特別障害者は12万円

 オ. 相次相続控除  相続開始前10年以内に被相続人が相続により財産を取得していた場合は、
   その被相続人から相続により財産を取得した人の相続税額から、相次相続控除として次の金額
   が控除されます。


  【相次相続控除】  省略 → 詳しくは税理士さんにお尋ねください


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