西荻窪の街角から
  おととしの秋、たまたま西荻に越してきた。西荻に住むのは2度目だ。20年前に家を飛び出して初めてアパートを借りたのが、今のセイフーの前にあった第2喜楽荘というボロアパートだった(今はマンション)。夏、共同玄関に足を踏み入れると、いつも頭の上をハエがぶんぶんと飛び回っていたっけ。1階の男女共同便所のはす向かいが私の部屋だった。部屋の前を通るたびにアンモニアの臭いが鼻をついた。隣はスパーの倉庫だったので、日中はドスンドスンと騒々しかったのを覚えている。おまけに階上では、時折葬式があったりした。お年寄りが多く住んでいたのだ。私にとって暗い時代だったので、そういったシュチエーションは大いに歓迎した。その頃よく行っていた店がほんやら洞(今の満月洞)。コーヒー1杯195円だった。濃くておいしいコーヒーだった。いまでも満月洞にはよく行く。変わっていないんだな、これが。まるでいなかに戻って来たような錯覚に陥る(私にはいなかがないので、イメージの上でだが)。そもそも去年西荻に越してきたのも、今の職場(ザ・ストーンズ・バザール)が西荻にあったからだ。8年前に縁があった今のボスに再会し拾われた。そして今、ひたすら石を売っている。なんだか見えない糸が絡まりあいながらいろんな事がつながっているんだなって思う。西荻に来てから酒が手放せなくなった。失恋やら、生活の大変動やらで精神も肉体もリフレッシュしたがっていた。おかげで行きつけの飲み屋も何件かできた。秘密主義の私にとってこれは大事件だった。ようやく馴染んできたかな。この街にも、人にも。今はフレッシュな毎日を楽しんでいる。時々、ウオッカを飲み過ぎて記憶をなくすのには困りものだが。今日もピラコは夜を渡り歩くで。(ピラコ 2000 3/1)
ピラちゃん(オフィスにて)
 
ザ・ストーンズ・バザールは世界中の約300種類の原石や加工品が揃う、鉱物・宝石の専門店。アクセサリー類はオリジナルデザインで、ほとんどが手づくりだ。「宝石天国」「水晶術」「パワーの神秘」の著者、北川幸男氏がオーナー。色とりどりの石を見ているだけでも十分楽しめるお店。
ザ・ストーンズ・バザール店内