「幾何学T」受講者へ(2020年度版)
『平面曲線』がメインテーマ
- 曲線の数学的な表示法としては、大きく分けて、
「写像の像として定義される集合(曲線のパラメータ表示)」と「方程式で定義される集合(曲線の陰関数表示)」の二通りがありますが、この授業で扱う曲線とは「写像の像として定義される集合(曲線のパラメータ表示)」のことです。
- 開区間から平面への写像の像として定義される集合を"平面曲線(plane curve)"と言いますが、
このままでは考察する対象が広すぎるので写像にもっと条件をつけます。
- 「各成分は何回でも微分できる」という条件をつけた写像を考えるのが通常ですが、それだけだとまだ考察する対象が広すぎて
有用な性質を取り出すことはかなり難しいものがあります。そこで、"正則曲線(regular curve)"という定義が登場します。
「各成分関数は何回でも微分でき、接ベクトル(tangent vector)がゼロベクトルでない曲線のこと]
で、
この授業では正則曲線を主たる対象とします。
正則曲線は、微積分と線形代数のみでも研究することができる興味深い対象です。
- 長さが1である接ベクトルはとりわけ重要で、
"単位接ベクトル(unit tangent vector)"という特別な名前が与えられています。
- 正則曲線に対して、"接触(contact)"という概念を導入します。
直線や円との接触が特別な状態にある点を抽出するためです。
それらの点は、それぞれ
"変曲点(inflexion)"、"頂点(vertex)"と呼ばれ、正則曲線における特徴的な点となります。
接触、変曲点、頂点についてはExercisesがたくさん用意されているので、変曲点や頂点の計算に慣れてもらいます。
- 次に登場するのは"Reparametrization"という概念です。
"弧長(arclength)"という特別なパラメータを考えると、正則曲線のすべての接ベクトルの長さを1にできる」ということを学びます。
- その次に"Curvature"という概念を学びます。
ここで登場する"曲率(curvature)"は幾何学においてとても重要なキーワードですが、実用上は、曲率を使った公式である
2.25の"平面曲線に対するセレ・フレネの公式(Serret-Frenet formulae for plane curves)"がより大事と言えましょう。
「正則曲線のあらゆる性質はセレ・フレネの公式から導かれる」と言っても過言ではないぐらいに重要な公式で、
このセレ・フレネの公式のために弧長パラメータの導入が必要になっていました。
- 正則曲線と直線や円との接触は、それぞれ、"高さ関数(height function)", "距離二乗関数(distance-squared function)"と呼ばれる関数で
調べることができます。高さ関数や距離二乗関数を用いることにより、正則曲線から派生する様々な曲線も縦横無尽に研究することが可能になり、興味深い性質をいろいろと得ることができます。
- 第2章の残りの単元は"Functions on plane curves"と"Space curves"ですが、"Space curves"は扱わないことにします。
32ページから始まる"Functions on plane curves"では、Exercisesが中心となります。ここまで登場してきた概念を使って平面曲線を深く調べるExercises がいろいろ用意されています。
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