#1129/1129 ことばの海 ★タイトル (NLF06372) 94/ 3/ 6 23:38 ( 25) 翔の《はばたく》という訓 空山 ★内容 お久しぶりです。このボード、やや活性化してきましたね。さて、 翔を《はばたく》とよむ例に時折ふれます。 最初に見たのは昭和56年ごろ。歌を自作自演していた私の友人がガリ版の歌詞集に 「翔いていたね」と書いて、口頭では「はばたいていたね」と歌っていました。 個人的なものかと思っていましたら、ごく最近、私の近辺で、 「飛翔という字はトブにハバタクです」と発言した人がいまして、回りの人もそれで ちゃんと解っているようでした。 伝統的には、「かける・とぶ」ですよね。「かける」は下一じゃなくてラ5。 つまり連用形が「かけて」じゃなくて「かけりて」「かけって」になるやつ。 その他の訓では、角川『大字源』によると、 中古 あがる・あぐ・あふぐ・かける・とぶ・ふるまひ・ふるまふ 中世 かける・とぶ・はねのす・ふるまふ・をひつじ 近世 あつまる・あふぐ・あっける・かはる・かへる・とびめぐる・はね・はをのす    ・ふるまふ・まふ・ゆく 「はをのす」(羽を伸す)ってのが、少し近いですが、やはり違う。 『日本国語大辞典』の「はばたく」項にもこの字の例はないし、角川文庫『遊字典』 にもない、最近でた杉本つとむ『あて字用例辞典』(雄山閣)にもない。 もしこの訓が最近になって、ある程度定着しているとしたら、 思うに何かはやらせたものが有るのでは。 漫画の題名? テレビドラマの題名? 映画の題名? 小説の題名? もしや歌の題名? 私が知らないはずは……、だとしたら年をとったものだ。 皆さんなにか御存じでしょうか。お教えください 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「翔」を「はばたく」という例について朝日新聞のデータベースで検索してみた のですが、89年ぐらいにもまでしか遡れませんでした。こちらの方はもっと古い 時代の例が有る筈ですが(書名を検索すれば出るものと思われる)、新聞の校閲 にひっかかるので出るのが遅れるのでしょう。最初の頃の例は劇の名前とか団体 の名前などに限られています。なお、「翔け」で検索すると「はばたけ」「か け」両方にヒットするので用例数が多く見ておりません。1996.7.4