現在日本機械学会(JSME)主催で行われている技術資格の「計算力学技術者」をご紹介します。 この資格は2003年に一般社団法人日本機械学会によって創設されました。近年のCAE利用者増加の中、適切に解析結果を導ける技術者を育成するのが目的です。

 CAE利用者が増加したのは、CAEソフトのグラフィカルインターフェースの進歩によるところが大きいと思います。小職がCAEをはじめたころの1995年当時は、CAEソフトはかなり使いづらかった印象があります。代表格がパンチデータでの入力です。またコマンドプログラムでの入力等もありました。
何分、信頼性が不確かな人手による作業が多かったので、入力ミスで計算ができない場合もありました。計算はCRAYのような汎用計算機を使っていましたから、計算料金が水泡に帰す場合も多かったのです。

 現在のグラフィカルインターフェースは完成度が高いと感じています。
当時解析担当者が抱いていた「難しい。」「使い勝手が悪い。」「高額ソフトとは思えない。」という感覚を現在のソフトウェアは感じさせません。
その為、CAEを利用する側から見ればハードルは大きく下がった感があります。 しかし、「CAEソフトは高価な電卓である。」ということを忘れてはいけません。 モデル化が間違っていても、計算させれば何らかの結果は出てきます。仮に間違いに気付かずにその結果を利用したとすれば、最終的に大きな問題となることはいうまでもありません。CAE利用者はソフトのオペレーターであってはならないということです。

 つまり、CAE利用者は解析結果の妥当性を判断する目を養うことが必要です。自信をもって「これは正解である」とするには、技術的根拠がほしいのです。その技術的根拠の知識を養成する一端となっているのが計算力学技術者の資格でしょう。
有限要素法や有限体積法のしくみや利用にあたっての注意事項、そして解析結果の活用法などCAE周りの技術的内容を身につけるのがこの資格です(「固体」「熱流体」「振動」の3分野があります。詳細はこちら)。
尚、技術的根拠を養うためには、この他に「学術知識(工学)」や「現物証明作業等の実務経験」も、もちろん必要でしょう。

 まずは、「自分はきちんと解析作業が出来ている」という根拠付けをするために、これらの資格を取ってみるのも良いのではないでしょうか。

(2013.4.9)


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