U・高価な硬貨

 

高校の頃である。割と仲の良かった友人が「コンタクトレンズを買いたい」と言い出した。

話を聞くとどうも親に言っても買ってもらえそうにないので、自分で何とかするしか無いと言う。

「え!?でもコンタクトレンズって安くないだろ?」

「そうだなぁ、検査込みで両目で5万はみた方がいいな。」

まだまだ、コンタクトの高い時代の話です。今でも結構高いけど。

後日友人はホクホク顔で登校してきました。

「おっ!金の目処がたったのか?」

「まあな、これだけあれば足りるだろ。」

そういって彼が取り出したのは昭和天皇在位60周年の時に発行された10万円金貨!!

こいつ、マジか!?

「おいおい、これ、どうしたんだ!?今時売ってもないぜ!?」

「ああ、部屋掃除したら出てきた。」

んな訳あるかい!!と叫びたかったが、彼の笑顔を見ていると何もいえなくなった。

掃除して10万円金貨が出てくる部屋ってどんな部屋やねん!!

100円玉と違うんだぞ!?

早速眼鏡屋に行こうとするが、どうも休みだったらしい。

そのまま近所のスーパーでパンでも買って帰ろうという事になった。

で、そいつ、スーパーの支払いでその金貨出しやがった。

レジ打ちのパートのおばちゃんは「?」という顔をしていたが、これが10万円だと知ると、慌てて奥のスタッフルームへ入っていった。

「みてみて、これ。じゅうまんえんだって!!」

おばちゃん、声聞こえてるぜ・・・・・・。

しばらくして責任者らしき人が出てきて当店では扱えない、とのたまった。

そもそもそんなつり銭の用意はない、と。

そりゃそうだ。普通10万円単位でスーパーで買い物をするやつはいない。

そもそもレジにそんなものを入れておくスペースはない。

つーか、この記念コインを買い物に使うやつはあんまりいない。

 

結局後日銀行で万札10枚に交換してもらったらしい。

ちょっともったいない気もしたが、彼はコンタクトレンズを手に入れて喜んでいたのでそれ以上の追及を止めた。

戻る