藪椿  やぶつばき            別名 ツバキ   
        
漢字について 
 形声 木+春 中国では「香椿(ちゃんちん)」をさす。ツバキは国字読み。春の喜びを伝えるのにもっともふさわしい木だから。 また『海石榴(かいせきりゆう)』ともいう。日本風に読むとウミザクロである。現在の中国名は、『山茶花』。サザンカに当てている字である。
 語源は、昔、歌垣(かがい)の場で、男女の誓約が交わされると、ツハキ(津・吐き)の神が現われ、周辺に茂る「神樹」ツバキに依りついたことから。ツバキの木は神意の現れるものと信じられ、神聖な木として崇(あが)められている。

材について
ツバキ科ツバキ属の落葉広葉樹   高さ20m直径0.5m気乾比重0.81
 心辺材の区別なく紅褐色の散孔材。木質は固く緻密、かつ均質で木目はあまり目立たない。摩耗に強いので工芸品・細工もの(印材)などに使われる。木炭にしても素晴らしく、昔は殿様の手焙(あぶ)りに使われ、近年は備長炭として高級な炭に使用されている。

その他  
 日本酒の醸造には木灰が必要で、椿の木灰が最高とされている。また、アルミニウムを多く含む事から古くは染色用にも用いられた。実から絞った油は、高級食用油、また整髪料としてもよく使われた。油粕は川上から流して、川魚・田螺・川えび等を殺すのに使われた。

製作中の独り言
 硬くて緻密な材であるが、印材に使われている材としてみると、思っていたより材が脆かった。両脇の欠けている材なので、少し小さめに彫ったが、家人にメタボな椿といわれてしまった。
 
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刻字画像



立木画像



染色画像